✪ ストーリーライン ✪

▪ プロローグ。

 部屋の奥、ハング窓の下辺りで仰向けに投げだされた躰。そこへ近づき、頬や手首に触れてみるが。脈動は感じられなかった。

 救急へ電話をするが、死んでいる、という言葉が口を衝きそうになると、彼は堪らず膝をつき泣き崩れる。

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▪ ここから時間を戻して三年前、舞台はチェコ、プラハ。

 薬物の過剰摂取でルネが病院に運ばれたという連絡を受け、ルカは病院に駆けつける。待合には既に恋人のテディをはじめ、バンドの全員がいた。

 ルネは処置が間に合わず死亡。

 バンド『ジー・デヴィールZee Deveel』はプロデビューしたばかり。まだまったく売れてはいなかったが、さらに先行き不安な雰囲気に。

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▪ 気落ちするバンドをなんとかしようと、マネージャーのロニーは心機一転イギリスに渡ってプロモーションをやってみようと提案する。

 だがロンドンでは条件が厳しく、演奏さえさせてもらえない。しょうがなくマンチェスターに移動し、なんとか演奏できる場所をみつけるが、なかなか立ち止まってまでは聴いてもらえない。

 だがたったひとり、バンドの演奏に耳を傾け、音楽のルーツなどをぴたりと当てたニールという胡散臭い記者がいた。

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▪ ニールは翌日、元妻だという有名ファッション誌の編集長、エマを連れて再び現れる。なにかきっかけさえあればきっとバンドは売れる、と推してくれるニールとエマ。

 ルックスの良さを売りにすればいいというエマの意見に、初めは乗り気ではなかったルカとテディ。が、リーダーであるユーリが賛成し、ファッションスナップを撮って誌面に載せようというアイデアに、バンドは乗ってみることに。

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▪ ルカとテディはプロの美容師やスタイリストの手により磨きをかけられ、ハイブランドの服を着せられて垢抜けた姿を撮影。その写真が誌面に載り、SNSにアップされると瞬く間に拡散、若い女性たちのあいだで話題に。

 それをきっかけに、バンドはようやくスターダムへの切符を手にする。

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▪ 有名になると同時に、薄気味悪いストーカーめいたファンも生まれていた。

 テディ宛に、彫ったばかりの背中のタトゥーについて書かれているファンレターが届く。イメージダウンを避けるため、ロニーからは人に見せないよう云われていて、ごく一部の関係者以外に知られているはずがなく、どこからか覗かれているのではと警戒する。

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▪ 眠る間もないほどのハードスケジュールに忙殺され、ユーリとテディはドラッグに頼るようになる。

 ユーリが自分に好意を抱いていることに気づいたテディ。ルカやバンドのことを思って必死に堪らえていたユーリを、テディは誘惑する。

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▪ 初のコンサートツアー。ニールはドキュメンタリー映画製作のためツアーに同行、バンドに密着し、バックステージなどの貴重な映像を撮りためる。

 が、そのなかにはとても公にはできないスキャンダラスなシーンも含まれていた。

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▪ タブロイド紙やゴシップ雑誌、ウェブニュースの記事などでメンバーの性的指向がアウティング、スキャンダラスに扱われる。

 それをきっかけに、オフィシャルファンクラブサイトの掲示板に、頻繁にヘイト的な書き込みがされるようになる。

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▪ ドキュメンタリー映画の試写。関係者のみで観ていたその内容はマネージャーのロニーを困惑させる、とんでもない出来栄えだった。

 酔ったテディが、ルカにさえ伝えていなかった秘密をユーリに打ち明けているシーンでは、そのあまりにショッキングな内容に皆が驚き、ルカも絶句する。

 隠し続けていたことを知られてしまったテディはショックを受け、怒ったユーリはニールを殴り飛ばす。

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▪ 次のアルバムのための曲作りに集中するため、一行はスペイン、イビサ島に滞在。

 観光気分で街歩きをするスタッフやメンバーたち。ルカとテディとユーリは、曲作りを一段落させてから出かけることに。

 だがテディが途中ではぐれ、路地を彷徨っているとき四人の男たちに襲われるという事件が起こる。

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▪ お蔵入り状態だったドキュメンタリーの映像が、何者かによって動画サイトにアップされる*。棚上げの原因になっていた過激な部分までもがノーカットで公開され、世界中でトップニュースとして扱われるほどの大騒ぎに。

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▪ プラハに戻ると大勢の記者とカメラが待ち受けていた。

 テディに向かって酷く不躾な質問を浴びせる記者。ユーリは激高し、テディを庇って記者に暴行、怪我を負わせてしまう。

 事務所にはストーカーファンからのメッセージビデオが届いていた。

 が、そのおかげでストーカーの正体がわかり、事務所内から盗撮カメラと盗聴器を発見する。

 テディの精神状態などを考え、警察への通報は見送ることに。

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▪ 三枚めのアルバムがリリースされる。好調な売れ行きに乾杯し、お祭りムードな面々。だがテディはさっさと帰ろうとし、様子がおかしいとユーリが気づく。

 テディはヘロインの離脱症状を起こし始めていた。ルネのことが頭を過り、もうやらせるわけにはいかないと諭すユーリ。

 ユーリはルカとロニーの協力を得て、テディの悪癖を断たせることに。

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▪ 無事にきつい離脱症状から抜けだしたテディ。

 ルカは頼りになるユーリの男ぶりを見て、テディのためと考え身を引くことを決意する。

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▪ ユーリに対し、どことなく不満そうだったり苛ついたりしているテディ。

 ついにユーリを怒らせ、目許が腫れあがるほどの暴力沙汰に。頭が冷えて話をした結果、テディが今もルカを想っているとわかり、ユーリはテディとの関係を終わらせると決める。

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▪ 腫れがひかないテディをひとり残し、買い物にでたユーリはストーカー男が車で去るのを見かける。バイクで追いかけるが、ストーカー男は道をよく知っているようで、途中でいったん見失う。

 テディに電話をかけてストーカーのことを伝え、ルカに来てもらえと云うユーリ。

 そのとき再びストーカーが姿を現し、ユーリは電話を切りヘルメットもかぶらないまま追う。が、入り組んだ道で罠にかかり、バイクは転倒。

 ユーリはテディの名前を呼びながら、血に染まったその瞼を閉じた。

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▪ プロローグのシーンに戻る。

 電話でストーカーのことを聞き、出先から駆けつけたルカ。しかし鍵は開いたまま、呼びかけてもテディの返事はない。

 部屋の奥に倒れているのをみつける。握った手首には脈動が感じられなかった。

 死んでいると察し、救急に電話をかけながら泣き崩れるルカ。

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 THE DEVIL [Remastered]

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917952203

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  ⚠  以下、ネタバレ注意!  ⚠

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▪ 三年前と同じ病院。

 包帯だらけのユーリを含むバンドメンバー全員とロニーも駆けつけ、遺体を見て茫然とする。が、ユーリはその綺麗な死に顔を見ると遺体をひっくり返し、着せられているものを引っ剥がす。

 背中にはタトゥーがなく、テディと思われた遺体は実は彼ではないとわかる。

 そこへ、目許に痣をつくったテディ本人が現れる。

 テディは遺体を確認し、さっき存在を知ったばかりの自分の双子の弟だと云った。

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▪ 警察で事情を訊かれる。初めのうちはテディが疑われていたようだったが、ストーカー男が逮捕され、ルカとユーリ、ロニーとともにテディは解放される。

 警察署からの帰り際、紳士然とした男とすれ違う。つい見蕩れてしまったロニーが振り返ると、テディが驚いた顔で足を止めていた。

 いったいどうしたのかとロニーは今しがたすれ違った男の特徴を思い起こし、髪や瞳の色がテディと同じなことに気がつく。

 男は遺体を確認にやってきた、テディの父親だった。

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▪ 事務所に戻り、テディはいったいなにが起こったのかを皆に話した。

 ユーリから電話があったあと、テディを訪ねて現れた人物は自分とそっくりな顔をしていた。

 存在すら知らなかったテディの双子の弟こそが、掲示板にアンチな書き込みを繰り返していた犯人だった。ルディと名乗ったその弟は、厳しい家庭で育った自分と違い、母と一緒に自由に幸せに暮らしていた(と思いこんでいた)テディを妬み、憎んでいた。ナイフを取りだしたルディと揉み合いになり、テディはルディを突き飛ばして部屋から逃げだした。

 そのあとテディと入れ違いにストーカー男がやってきて、テディと間違えられ、ルディは命を落としたのだった。

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▪ テディは云い難そうにルカによりを戻したいと打ち明ける。ルカはそれを退けはしなかったが、ユーリとの関係も続ければいい、オープンリレーションシップでいこうと想像もしなかった提案をする。

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▪ テディの目の痣も消えてきた頃。事務所にテディ宛の手紙が来ていた。

 まともに話したこともない祖父からのその手紙は、母と父のことや、弟のことがしたためられていた。

 長い手紙を読み、疎まれていたわけではないと知り、なにかが吹っ切れたように変わり始めるテディ。

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▪ ルカはテディとの暮らしのために広いフラットを用意した。リフォームし、家具やテキスタイルもプロに任せて揃え、差し色はテディの好きなティールブルー。

 幼い頃から移住、転居を繰り返し、親も喪い帰るところのなかったテディに、ルカはありったけの愛の証として、ホームをつくったのだ。

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▪ イギリス最大の音楽賞にノミネートされたジー・デヴィール。インターナショナルグループ賞を獲得し、ルカからマイクを渡されるテディ。

 大勢いる観客がみんな、自分がゲイであることや子供の頃のことやヘロイン中毒だったことなど、なにもかも知っているのだと、テディは向けられる無数の視線に竦んでしまう。

 だが、そっと背中に触れる手を感じ、テディはぽつりぽつりと胸の内を話し始めた。子供の頃に起こったこと、自分の身代わりのように逝った弟のこと、ルカやバンドメイトへの想い、ロニーやニール、スタッフたちへの感謝――

 スピーチを終えてほっとしたところ、観客席から割れんばかりの拍手が起こる。

 その日いちばんのスタンディングオヴェイションに囲まれながら、ルカとテディはキスを交わし抱きしめあった。





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❐ THE DEVIL [Remastered] ≫ https://kakuyomu.jp/works/1177354054917952203

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※ この事件の顛末については〈THE DEVIL [Extra edition]〉収録の《TR-10~TR-12 - Sittin' on a Fence》へ。

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