不滅闘技場~悪魔と呼ばれた男処刑され、不滅闘技場で転生しても脱出不可能。悪魔の男強くなりすぎジョブチェンジしまくりで脱出、不滅無双記!?~

MIZAWA

第1話 不滅闘技場へようこそ

 図書館の職員、毎日本の整理や紛失がないかをチェックする。

 昔から読書が好きだったルガス。

 アリアナ街の図書館の職員になるのが夢だった。


 ルガスの髪の毛は皆と違って青色だった。

 子供の頃も今も差別はされるが、妻のメレナはよく微笑んで褒めてくれる。

 今日も家に帰れば、メレナの料理が待っている。


「おい、昨日で30人目が死んだらしい、体をバラバラにしたものだってさ」


「冒険者達は血眼になって探しているそうだ」


 そういう噂が広がっていた。

 街の外に出ればゴブリンやスライムやオーガが住まうモンスターの世界。

 街の中ではいつも冒険者が身を張って守ってくれる。


 だが、時折、こうして人間が人間を趣味で殺してしまう場合がる。

 そんな事を考えながらルガスは家に帰宅した。

 家の中からはハーブの香りがしてくる。

 メレナの香りとなっている。


「ルガス、今日は牛乳が手に入ったからシチューにしますわね」


「助かるよ、それとあまり外には出ないほうがいい」


「あの謎の殺人鬼でしょ、魔王っていう噂があったり、何かの生贄だったり、謎が謎を生んでミステリーよ」


「まったく、君はそういう好奇心が危険にさらされるという事を学んだ方がいいよ」


「そうかしら」


 その時だった扉がけたたましく開かれた。


 それが幸せのひと時の終了だった。

 現在ルガスとメレナは磔にされ、今まさに炎を点けられようとしている。


「おい、俺達は何もしてないぞ」


「うるさい、邪教とめ、青い髪の毛が見つかったそうだ。死体から、お前が犯人だ青い悪魔」


「だとしても妻は関係ないぞ」


 メレナは取り乱して涙を流していた。

 栗毛色のロングヘアーがぐしゃぐしゃになって、ぼろぼろだった。


「うるさいうるさい」


 街の市長が叫ぶ。


「お前らは死刑だ。さいならだ。終わりだ」


「ふざけるな」


「火を点けろ冒険者」


 その時、ルガスの瞳にうつったのは大勢の街の住民の下品な表情だった。

 彼等は所作1つ1つとっても喜んでいる顔なのだ。

 もうこれで、自分達は殺されないですむという顔だ。

 

「だが、残念だ。俺は犯人ではない」


 体が燃え上がる。

 痛みなど怒りなど既に通り越している。

 妻は泣き叫び、喉がやけて黒焦げになっていく。

 なぜか妻の方が早く燃えた。

 まるで燃え盛る妻の死体を見せたいが為に。


 怒りがぼうぼうと燃える。

 まるで心の底から燃え上がる。

 

「俺は何度死のうと、何度も蘇って見せる。何度死のうと、何度も強くなってやる。俺は最強になって、お前らの、お前らの首を粉々にしてやる」


「ほれみろ、殺人鬼の言葉だ。うははははは」

「「「「「ははははははは」」」」」


 大勢の人々は笑っていた。

 人が2人この世界から死ぬ。

 20歳になったばかりで、ようやくメレナと結婚し、彼女のお腹の中には子供がいた。


 怒りが、怒りが。


「あ」


 空に光が見えた。

 輝かしい光だ。

 きっと天国にいける。

 そう思ったんだ。


「残念でしたゲスね、ここは地獄よりも辛い、不滅闘技場でござりんす」


「え」


 そこは大きな広場だった。

 四方は壁に囲まれており、出口はない、1本の木があり、なぜかパンが実っている。


「まぁ、あなたには食物も排泄も必要ないでげす。人間は食べるという行為が大切らしく、こうして俺様がパンの木を作ってやったんでゲスよ」


「お前は誰だ」


 パチンと音がなく。


「もっと光でご覧あれでゲス」


 そこにはピエロの仮面をかぶった何かが浮いていた。

 それは赤ん坊。ピエロの仮面をかぶった赤ん坊が浮いていた。


「再び、ようこそ、不滅の闘技場でござんす」


「は?」


「ここでは、何度も死ぬ事が許されます。そしてモンスターを倒し続けるのです。ある一定値を超えると、外に出る事が出来ますでゲス。最後のボスを倒すと何かが起こり、何かがどうなるのかです。あなたの魂が朽ちればあなたは消滅するでげす」


「あなたではないルガスだ」


「これはご失敬です。ルガス殿ですなでゲス」


「その気味の悪い話方をやめてくれ」


「それは出来ないでゲス。こうやって世界に想像されたでゲス。あなただって普通に話してますが、普通に話すのをやめてくれと言われたら止められるかでゲスか?」


「それはごもっともだ」


「分かってくださりありがとうでゲス。では、最初の勝負、開幕でゲス。その円に入ってください」


「ああ、武器は?」


「あなたの頭でゲス」


「は?」


 一瞬でどこかにテレポートされた事は分かった。

 そこは草草が生えている大地だった。


【おーっと今回の挑戦者は人間だああああ、身1つでどうやって殺されてくれるのかああ、魂はどこまでもつのかあああああ、さてさて、解説をするのはカボチャのハロウィンですぜい】


「なんかうるさいな」


【最初はゴブリン100体だ】


「え」


 目の前にゴブリンがテレポートされる。

 その数は驚異的の100体。

 自分は図書館の職員だ。

 子供の頃から戦いには不慣れで、冒険者になる事すら諦めてきた。

 自分の肉体は筋肉質ではなく、ぽっちゃりでもなく、ごく普通の体系だ。

 その状態でどう戦えというのか。


 一斉にゴブリンが襲い掛かってきた。


「ひ、ひいいいい」

 

 ただ逃げる事しか出来ない。

 それも走るスピードが遅くてすぐに追いつかれる。背中を斧で殴られると、背中が燃え上がるように熱かった。


 その時、脳裏に磔にされて燃やされた記憶が蘇る。

 妻のメレナの悲鳴も蘇る。

 

「あんなのダメだ」


 立ち上がり、武器などない。

 拳を握りしめる。

 殴りかかった。

 斧が落とされ、腕は切断され、転がっていった。

 

 脳味噌に針でも指したかのような激痛が走る。

 次の瞬間爆発的に痛みが広がり。


「うがあああああ」


 歯を食いしばる。それだけだ。

 それだけなんだ。


【スキル:忍耐レベル1】を習得しました。


 頭の中でそれは声となって広がった。

 冒険者になると色々な経験からスキルを習得していく。

 つまりこれは。


 気づいた時にはルガスの頭は宙に飛んでいた。

 くるくると回転しながら、巨大な板にうつるハロウィンが笑って。


【おーーーーーーーーーーっと、ゴブリン1体も倒せず死亡、さぁ、不滅闘技場なのでよみがえりまっせえええええ】


「はぁはぁはぁ」


【レベル12】になりました。


「なんで、死んだらレベル上がるんだよ」


 一般人のレベルは20とされ、冒険者で弱い者は30、中ぐらいは50、強いもので70、勇者で100でカンストだと記憶している。


【次は楽しませてくれるか、不滅闘技場のリスナーが怒っているぞおおお、もっと戦えってなああああ】


「うるさいハロウィンだ。さて」


 ゴブリン達がこちらに気付いて走ってくる。


「耐えるしかねえええ、痛みなんて関係ねええ、はぁはぁ」


「ぎゃああああああ」


===第3ラウンド===


「がああああああ」


===第4ラウンド===


「ぎきゃあああああああ」


===第10ラウンド===


「ぐああああああ」


===第20ラウンド===


【リスナーが離れていってますねー、これは困りました、不滅闘技場あがったりです。それにしてもそろそろ魂が朽ちて死ぬはずなんですがしつこいですねえええ】


「ハロウィン黙ってろ、今眼に物見せてやるぜ」

 

 こちらに気付いたゴブリン達が走ってくる。

 その数100体。

 死ぬとランダムでこの草地帯に転生される。

 周りは壁があり逃げ道は存在しない。


 ゴブリンの斧が振り落とされる。


 右腕でそれをガードして見せた。


「やった。やったぞおおおお」


【スキル:忍耐レベル100】→【スキル:鉄壁レベル1】


 レベルは100までがカンストのはず。

 だが聞いたことがある。スキルは進化するのだと。

 鉄壁は体を頑丈にしてくれる。


「鉄壁のパンチでも喰らえよ」


 ゴブリンの顔面に穴が開き、吹き飛ぶ。


「はぁはぁ、パンチ一発でこれか、疲れるぞ、俺どれだけ体力ねーのよ」


【レベル30】になりました。


「よーしてめーらかかってこい、パンチってもんの恐ろしさ味合わせてやるぞ」


【イェエエエエエエエエエエエエエエエエ、リスナーが戻ってきました。これでこそ不滅闘技場です。さぁさぁ、次はどうするんですかああ、たかが素手の人間さんん、この亡霊を楽しませてくれませんかあああ】


「うらあああ、俺は、メレナをメレナをおおおおおおおおお守れなかったんだあああああ」


 ゴブリン達は死ぬことを恐れないように次から次へと突撃してくる。

 斧は頬をかすっても腕にあたっても腹にぶつかってもルガスには一切のダメージはない。


 鉄壁の拳で何度も何度もぶん殴る。

 馬乗りになってゴブリンの顔面を潰す。

 体が血まみれになろうと、獣の目のように鋭くなろうと。構わず、次の獲物を探して走り出す。


【レベル50】になりました。


「お前ら覚悟しろよおおおおお」


 ゴブリン達は楽しそうに喜びの声をあげて、斧を振り回す。

 

「はぁはぁ、あと10体、あと10体だ。こんな戦い後何回あるんだよ、うらああああああ」


 ゴブリンの腹を殴り吹き飛ばし、蹴りを放ち吹き飛ばす。

 まるで拳法の達人になったかのように、体の動かしかた、こなし方は、本に書いてあった通りまねている。

 

 ルガスには1つだけスキルがあった。


【スキル:想像力レベル100】というものだった。

 

 ルガスの想像力は妄想レベルにカンストしていた。


「なるほど、こうやって動かせば」


【スキル:拳法レベル1】を習得しました。


「お、なんか覚えた」


 体の動かし方が滑らかになり、残りのゴブリンを気持ちよく吹き飛ばし。


【レベル100】になりました。


【イエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ、おめでとおお、次の不滅闘技場が始まるまで、10分間休憩ターイム、よく頑張りましたー】


 体がふわっと消えると、先程の場所に戻った。

 そこには空中に浮かんでいるピエロの赤ん坊がいた。


「面白かったでゲス。さすがというかなんというかでゲスが、レベルが100になったようでゲスね、スキルの進化もしているようでげすし、これからも何回も死んでがんばってくださいでげす」


「なぁ、なんで俺は何回も死ねるんだ」


「それは知りませんでゲス。さてこのガチャを1回引くことが可能でげす」


 突如空中に丸い物体が出てきた。

 そこには穴があり、入れ物が入っていた。


「ハンドルを回してくださいでゲス」


「ああ、ありがとう」


 ハンドルを回す、1つのボールが出てくる。

 手の平に乗るとふわりと消滅する。


「おめでとうでゲス、それはジョブです。殺人鬼のジョブでげすね、一回クリアするごとに1回ガチャを回せますでゲス。対戦相手レベルが上がっていくとガチャの回数も増えていくでゲス。とりあえずジョブの意味理解してますでげす?」


「いや、よりにもよって殺人鬼なのか」


「まぁ、いいでげす、ジョブとはレベル10まで上げる事が出来るでゲス。1レベルごとにジョブのスキルがありますでゲス、ジョブは毎回変更が可能でイメージで変更できますでげす。ジョブには色々と可能性があるでげすが、それはルガス殿が見つけるでゲスよ、さぁ、次のバトルです」


「ああ、嫌だが何もないよりはましか」


 殺人鬼の濡れ衣を着せられ、ルガスは妻のメレナを失い、自分は訳の分からない所に来ている。

 それでも生きたいと思える。いつか妻に合える気がするからだ。

 そんなの根拠のない理論だが。

 それでもあきらめてはいけない気がする。


「だから俺は殺人鬼というジョブになろうではないか」


 イメージした。

 頭の中に殺人鬼のバッジが出てきた。

 そのバッジを触れると、感情そのものが殺人鬼になっていった。




 

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