第3話 取り乱すエルフ
「
アマン山の森の入口付近、ベランドナが両手を正面に
枝と枝、幹と幹が絡み合い行く手を
けれどハイエルフの
けてゆく。
「ドリュアル……確か女性の姿をした森の精霊で、良い男や少年を
「ジェリド様、流石に山の男。
「し、
ベランドナとジェリドが話をしている処に若い男性の騎士が割って入る。確かに馬すら歩けそうな程に大きな道が
「俺の話を聞いていないな? お前の様な優男が一番危ないって話だ」
「それもございますが騎馬は森を焼く戦を呼ぶモノ。その
「た、大変失礼致しました……」
ジェリドとベランドナに
「いえ…そして皆様に
ベランドナは
剣などの武器は
中にはカーボンで作らせた特注品を回せて貰った者もいるが極少数である。
これも森の精霊に刺激を与えない様にとの配慮もあるのだが、これは別の目的の重要度が高い。
「さあ急いでアマン山側は抜けて頂きます。夜になると
ベランドナは先を急ぐ様に
金属製の装備を出来る限り排除した理由の一つである。ジェリドの指導で山歩きでの
突如、一本の矢が行軍の先頭を行く騎士の頭を
慌てて盾を持ち出し影に隠れる羽目になった。
(なっ!?)
(ど、どういう事だ、まだエディン領だぞ!? 対応が速過ぎるではないか!)
一気に統率が乱れるが、然し決して不要な声は上げない。本当にジェリドの命令が行き届いている。
それに革製の盾の割には、矢をキチンと弾いている処をみると、どうやら中身は金属製だが皮で包んでいた様だ。
(そ、そんな…私が精霊の力で
正直、今一番驚いているのは、普段物事に動じないベランドナであった。
敵はラファンのディオル山の砦を中心で、仮に
だが完全にアテが外れてしまった形である。
なれどジェリドの兵達は決して
敵にしてもこれは一杯食わされた形であろう。革製の盾を構えてくる連中なんぞ上から矢の
「ベランドナっ!」
「も、森の美女達よ。存分に弾けるが良いっ!」
ジェリドのたった一言が、彼女を平静に引き戻した。
「皆さん、
「な、何だ、これはっ!?」
「よ、よせっ! や、やめろぉぉ!」
ジェリドの軍は一斉に身を
彼等はあっという間に絡め捕られると、
「ふぅ…」
「見事だなベランドナ。抑えていたドリュアル達を一気に解放し、敵を襲わせるとは」
「いえ、ジェリド様のお声掛けに目が覚めました」
ベランドナは正直に白状する。それ程に焦っていた。敵の
「確かに速過ぎるな。君が創ってくれたこの道が出来るまで、敵兵達は確実にラファン側の山の中に身を
「そう…何ですよ。此方を見つけて、まだ数kmはありそうな山を駆け降りて矢の届く位置まで。まだ1時間も経っていない筈」
「人間の成せる事ではないな……」
探知・接近・襲撃。
「然しこれで向こうも
「承知しました」
「さて、後はラファン側に入ってからのお楽しみだな」
この状況下を鼻で笑うジェリドを見て、ベランドナは心底頼りになる存在だと思い知った。
◇
「カルベロッソ様っ! 山の頂上付近に詰めていた弓兵10程が強襲に失敗! 敵の手に落ちました!」
「な、何だと……」
味方の報告にラファン砦の長『カーヴァリアレ・カルベロッソ』は
「何と
(五感を強化し過ぎたか。感じ取るのは良いが、
「良いですか、残った兵は決して持ち場を離れず死守する様に改めて伝令しなさい」
「はっ!」
カーヴァリアレは平静を取り戻し冷やかな目で命ずる。兵は
そんな
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