青き鷹を摑まえて

松本玲佳

永遠の月

自由を欲しがる私は、本当は月の魅力に縛られたい。

奔放に生きたがる私は、本当は月の光に征服されたい。

その『月』は誰でもいい、わけじゃない。

私を圧してください。

その思想で。

命令をください。

その思想の元に。

私はいくらでも、私を捨てて、尚且つ私があるように踊ってみせます。

不実な月よ。

どうか私を騙してください。

私の永遠などいくらでも差し上げます。

まだ誰も見た事のない私を

差し上げます。

「重みを感じるのが好きだって言ってたから。」

そう言って月は私を包み込む。

相変わらず、月は美しい光と姿と声と言葉とメロディーを持つ。

深く、私は愚かに落ちて醜く。

その姿を月は喜んでくれるから。私はどんどん月のオーダーを欲しがる。

理性より感情が勝る瞬間なんて、今の私には有りはしない。

全て、己を保つ為の冷静な行為。

でも狂ってみせよう。

月が欲しい。

もっと残酷な光を私に。

「大丈夫?」

そう優しく問いかけては、私を撫でる月よ。

私を見つめる月よ。

どうぞ、これ以上優しくしたりしないで。

月の心を欲してしまうから。

それでは、お互い破滅してしまうでしょう?

いいえ。

私はそれを望んでいるんだ。

壊れてしまいたい。

壊してしまいたい。

月は、とても美しいから。

きっと壊れても美しさを失わない。

私は、どんな月を見ても必ず『美しい』と思うだろう。

月が、私の耳に届けるメロディーはとても心を締めつける。

これ以上ない切なさという力で、私を縛る。

これが相手を縛るという事なのか。

私は逃げない。

月が壊れても。

共に、壊れましょう。

私一人で有っても意味がないから。

月が無になる時は、私も一緒に無になるから。

でも、私が先に無になったら、

月はどうかそのまま私を想って泣いていて。

美しい涙を、愚かな私に落として。


最期、死体に接吻を下さい。

永遠に目覚めないように。

永遠に愛を感じられるように。

その時やっと私の夢は叶う。

永遠の感触。

永遠の黄昏。

永遠の砂時計。

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