男 食物連鎖③
「ぎゃ。」「ぶっ。」「ごべっ。」「でゅ。」「ほげ。」「ふぬ。」
「ふぅ。これで終わりね。」
うららは、30人以上の
「嘘だろ。俺達は死を覚悟したんだぞ。」
「そんな馬鹿なっ。装備からして、
「強いとかじゃ、もう比較にならないのよ。春人さんはともかく、うららさんの動きは、人間技じゃない。」
「信じられない。春人の兄貴。いったいどういう事なんですか? 俺達と同じ
「うーん。騙しててごめんな。俺達は自分達の実力以上に評価をされてしまい、初心者なのに
「……実は初心者で過大評価の
「うんうん。さっきのコユキちゃんの魔法も含めて、春人さんやうららさんも全員が強すぎます。ヴァンサン。俺達、物凄い人達とお知り合いになったんじゃないのか?」
春人は
「なんだかよく分からないけど、敬語はやめてくれよ。それに冒険者のランクを全て知っているわけではないから、ピンと来ないな。」
「……兄貴がそういうなら敬語はやめるけど。……通常、人間は
明らかに年上の人に兄貴と呼ばれる事にも抵抗があったが、話が進まないので春人はスルーする。
「なるほどねー。では、
ヴァンサンは春人から手渡された縄を、
春人は、
「答えろ。お前等はなぜこんな事をしている?」
「……生きる為に仕方なくです。」
「自分達さえよければ、他を皆殺しにしてでも生きるって事だな。」
「殺すつもりはなかったんです。ただ、そう言って戦意喪失にして楽に金を奪うつもりでした。俺達は盗賊でも
「は? それを素直に信じると思うか? 冒険者だと言うなら、なぜこんな盗賊まがいの事をしている?」
「今、アルペンルートには浸食地帯から危険な魔物が大量に押し寄せています。その原因は浸食地帯にあったワイバーンの住処から、ワイバーンが消えた事が原因です。それにワイバーンは危険な魔物ですが、浸食地帯の食物連鎖の頂点でもありました。この世界ではランクの高い魔物程、肉が美味いという特性があります。住処を通れなかった大物も含め、今までワイバーンのご馳走だった高ランクの魔物もアルペンルート側にやって来ています。」
「……う。それで?」
「高ランクのモンスターがうろついているので、アルペンルートの冒険者は仕事が出来ないのが現状です。特にイヒドスラムに住む貧民達にとっては、重大な損失です。同じく貧困に苦しんでいる者同士助け合って生きていましたから。稼ぎ頭の俺達の稼ぎが無くなれば、多くのイヒドスラムの貧民が生きて行けません。その中には孤児が多いんです。」
春人はがっかりした後で、うららにだけ小声で「ワイバーン討伐が原因みたいぞ。」と言う。
「……なるほど。それで装備が整っているから、ヴァンサンに
「もちろん。市場に出回れば高級品です。」
「分かった。それなら魔物退治は、こっちでなんとかするよ。な? うらら。」
「もちろんよ。私達に任せて。はははは。」
二人は、魔物達を討伐するつもりだったが、ワイバーンを倒した事を言いたくなかったので、魔物肉が食べられるのかと理由をつけた。
「もうこんな事は絶対にしないと誓うなら、お前達も解放する。」
「本当ですか? ありがとうございます。」
「これで食べていない者や子供達を優先して飯を食わせてくれ。」
「「ありがとうございます。」」
「ヴァンサン達は、ずっとここら辺の街で冒険者をやるのか?」
「そうだね。俺達はラグエルやアルペンルート周辺で冒険者をやっていくつもりだよ。」
「ヴァンサン。あいつらの問題を解決する必要が出来た。寄り道をしても良いかな? それと今回は俺達がメインで討伐をするけど、強い魔物が来たら継続的に狩ってあげてくれないか?」
「兄貴。寄り道は良いけど、継続的にというのはどういう意味だい? さっきの冒険者集団は、明らかに俺達よりも格上だよ?」
「それは俺に考えがある。飯でも食べながら話さないか?」
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