男 冒険者パーティー③

次の日の朝、一行が街を出発すると、早々にリーダーのヴァンサンが目的地についての話をする。

 

「今回の目的地アルペンルートの街は、ここから歩いて約一週間の所だ。武器や防具の生産が盛んな事から、アルペンルート武器工場なんて呼ばれている。ただし、西側にはイヒドスラムと呼ばれるスラム街がある。そっちは治安が悪いから気をつけた方が良いぞ。俺達と一緒の間はレザーランクが合計で九人になる。これならかなり安心だが、レザーランクが三人だけになると、スラムは少し危険だからな。」


春人はヴァンサンの忠告に感謝する。依頼が終わった後の心配だったので、それが少し嬉しかった。

 

「教えてくれてありがとう。西側には近寄らないようにするよ。」


春人の感謝の後で、うららが、昨日から気になっていた事を真のトゥルー友情コムラーズのメンバーに話した。 

 

「レンさんとレンジさんで名前を間違えたりしないの?」


 それにはうららの近くにいたリアが答えた。


「だからレンの方は、サブリーダーのサブちゃんって呼んでるんだよ。」


「うふふ。なんか可愛いね。」

 

その言葉にレンが照れるとみんながクスクスと笑っている。場が和んだ所で春人が依頼をした理由について話しだした。


「今回、俺達が依頼を出した理由が、レザーランク冒険者の実力が知りたいからなんだ。俺達は異国の小さな里の出身で、俺やうららの家族しかいないよう場所で育った。冒険者としても独自に強くなったんだ。世界の常識や、他の冒険者がどう戦うかとか、スキルも魔法も、自分達のやり方しか分からないんだよね。一番常識を知っているコユキは、冒険者としては、まだペーパーランクなんだ。水属性の魔術師だけど、魔法が苦手っていう。」


「なるほど。心得た。それなら旅の道中は冒険者の常識なんかの話をしながら、モンスターが出たら集団での戦闘も見せよう。コユキの魔法の指導についてだけど、属性については同じ水属性の俺が、魔術の基本は魔術師のリアが教えるよ。」


「助かるよ。倒したモンスターの素材は、全部戦闘に参加したメンバーだけで分けてくれ。ただ解体作業だけは、うららにも教えてあげて欲しいかな。」


「気になっていたから、それはありがたい。では俺達真のトゥルー友情コムラーズは、それぞれ戦闘に関する冒険者としての自己紹介をしようか? それで聞きたい事があったらすれば良いだろ?」

 

「それなら、その前に俺達の能力も少し紹介するよ。俺は春人。戦闘面では期待出来ない最弱の剣士だ。魔法は風属性のウェントス 弾丸ブレットが得意かな。ただし、料理が得意でそれが俺の役割だから、それだけは期待してくれて良いぞ。次うらら、よろしく。」


「うん。愛媛うらら。職業は戦士で、武器は見ての通り槍ね。魔法は……火と風かな。このパーティーの戦闘担当は私だけよ。」


「コユキだよ。運搬技のランクは秘密だけど、私はアイテムボックスの担当なんだよ。春人が言ったように私は魔法が苦手なんだよ。」


「……しかし……レザーランクで戦闘がうららだけだと言うなら、個人としては俺達よりも格上なんだろうな。それと言い忘れていたが、俺もアイテムボックスを持っているが、討伐モンスターが食べられるモンスターなら料理に使ってくれ。どうせ肉は腐る。」

 

その言葉で、春人のアイテムボックスが異様であるという事が分かった。春人のアイテムボックスは、熱い物を保存したら熱いまま、肉を入れても新鮮なままだ。アイテムボックスに入れると時間が停止するらしい。


「サンキュー。それなら討伐後や食事の時に考えよう。」 


「分かった。では、まずは俺からだ。ヴァンサン。職業が騎士で魔法属性は水。槍と盾が使えて、主に敵の攻撃を受ける役割だ。魔法は春人と同じく初級の弾丸ブレットまでだ。次、サブちゃん。」

 

「レンだけど、みんなも間違えるようならサブちゃんで良いよ。職業が戦士で攻撃には鎌を使う。中距離の物理戦闘を得意とする。魔法は土属性の弾丸ブレットまでだ。」 


「リア。さっきヴァンサンが言った通り私は魔術師よ。使える魔法は火属性で、弾丸ブレットアビスピーラまで。防御魔法は使えないわね。私が魔法を使っている間は、熱力キャロルで熱いから気を付けてね。」


「ストップ! 熱力キャロルで熱いとは何なの?」


「知らないの? 火の民ザラマンデルは火属性の魔法を使うと魔法強化状態の熱力キャロルになるの。熱力キャロルには三段階あるけど、私の火力だと+1が限界ね。」 

 

「因みに、その状態は火の民ザラマンデルの火属性だけなのか?」 


「基本属性が強化されるのは、火の民ザラマンデルだけよ。ただし、歴史上では火の民ザラマンデル風の民シルヴェストルの種族特性を同時に持った者が電気エレクテルという魔法強化状態を、風の民シルヴェストル水の民ナイアデスの子供が冷気フリグスという魔法強化状態を持っていたという文献もあるわ。その場合は2種類の融合属性が強化されるんでしょうね。」  

 

  

「なるほど。説明ありがとう。勉強になったよ。」


春人が納得した所で自己紹介が続いた。 

 

「俺はシン。職業は戦士だ。天賦の才が、偵察なので遠くの方を見通せる力と地図の作成が得意だ。斥候と冒険者は職業も合わせると効果が1.5倍になる。だがランクやレベルが低かったり、よっぽどの事がない場合は、斥候の職業にしている人はあまり見ないな。なので、俺は戦士として、この爪を使った拳技で近接戦闘をする。」


「私はマリナ。職業は冒険者よ。冒険者の場合は斥候とは違い、罠や剥ぎ取りもあるから職業を冒険者にする場合が多い。ただし冒険技を持つ人は大抵が自分で転職出来るから、状況に合わせて職業を変える事も出来るわ。私が扱う武器は剣よ。」

 

「俺はレンジロウ。ニックネームはレンだ。見ての通りこのパーティーでは、俺だけがおっさんだ。職業は商人で得意な事は鍛冶になる。前は鍛冶だけをやっていたので、冒険者としては遅咲きなんだ。弱いが戦闘方法はハンマー。鉱石を製錬する技術もある。」


「えーー!? ちょっと待って。それだったら、レンジロウさんがジロウさんで良いんじゃ……。」 


「……サブちゃんがサブられ損よね。言う度に顔が赤くなるし。」 

 

春人とうららの言葉に真のトゥルー友情コムラーズのメンバーが顔を見合わせて驚いている。

 

「「「たしかにっ!」」」


こうして、春人の異世界チート(でもない)で真のトゥルー友情コムラーズのサブちゃん問題が解決した。

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