無能だからと実家を追いだされ底辺をさまよってる冒険者だったけど、ユニークスキル【魔眼】が覚醒したので無双してみる~え? 歓迎してやるから家に帰って来い? お断わりします~

紫水肇

第1話 戦えない者、追放される

「お前ならきっと良い戦闘スキルを手に入れられるさ。何しろ私の息子なのだからな」


「はいお父様。それでは行ってまいります」


 僕の名前はラース。由緒あるヴィクトル辺境伯家の長男だ。15歳になった僕はこれから王都の教会にてスキル鑑定の儀を受ける。


 部屋の周りには王族の方々や他領の貴族たちが僕のことをじっと見つめている。少し緊張するが、僕は将来ヴィクトル家の領地を受け継ぐことになっているのだ。


 そんな僕のスキルがなんなのか気になるのは貴族として最もなことだと思う。


 僕は部屋の中心へと歩いていく。そこには大きな鏡があって、僕の全身を写しだした。


 聖職者が鑑定をすると、この鏡に僕のステータスが写しだされるというシステムだ。


 ちなみに、鑑定の儀を一度受けると、それからはステータス画面が解放されて、好きな時にいつでも画面を覗けるようになる。


「それではいきます。眩しいですから目をつぶっていてくださいね」


 聖職者の方が僕の頭に手を振りかざす。光が僕の全身を包み込んだ。


 周りの人たちのどよめきが聞こえる。僕のスキルが鏡に表示されたからだろう。


 僕はおそるおそる目を開く。


 ―――――――――――――――――――――――

 ラース・ヴィクトル 15歳 男 人間

 Lv1

 攻撃100

 物理防御97

 魔法防御125



 保有スキル【魔眼Lv1】

 保有魔法【探知眼】

 ―――――――――――――――――――――――


 鏡には僕のステータス画面が表示されている。


「【魔眼】など、聞いたこともないスキルだが、いったいどうなんだ?」


 父のユーグが聖職者の男に話しかける。


「おそらく、目で見たものを分析するスキルではないかと」


「な、なんだと!? 戦闘スキルではないと言うのか!?」


 ユーグのどなり声に、思わず身をすくめる。そこには、さっきまで僕に心優しかったはずの父親の姿はなかった。


 思わず困惑していると――。


「ラース、ステータス画面に表示されてるスキルと魔法をタップして詳細を見るんだ。早く!」


 慌てて言われた通りにする。


 ―――――――――――――――――――――――

【魔眼Lv1】……あらゆる可能性を秘めた魔の目。

 ―――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――

【探知眼】……対象の魔力量を把握することができる。

 ―――――――――――――――――――――――


「やはり、手に入れた魔法的に戦闘スキルではなさそうだな……」


 ユーグはがっくりとうなだれる。


「お、お父様、申し訳ありません」


 僕は思わず謝った。ヴィクトル家の領地は辺境にあるだけあって魔物の数がとても多い。


 そのため、そんじょそこらの貴族ではとてもじゃないが統治できない。


 たくさん兵士を雇えば良いじゃないかと思われるかもしれないが、大量の魔力を持ってる貴族と違って、一般の人々はあまり戦力にならないことが多いのだ。


 しかし、ヴィクトル家には攻撃魔法系のスキルを取得する人物がたまたまなのか多く、おかげで領地をそれなりに発展させることができていた。


 だから、攻撃魔法系スキルではなさそうな【魔眼】を手に入れてしまった僕に失望したんだろう。


「おい! 次だ! ディオ」


「はい、お父様」


 近くにいた金髪の少年が返事をした。彼は双子で弟のディオだ。


 今度は彼が鏡の前に立つ。聖職者が手をかざすと、先程よりも大きな光のエフェクトとともにステータスが映しだされた。


 ―――――――――――――――――――――――

 ディオ・ヴィクトル 15歳 男 人間

 Lv1

 攻撃125

 物理防御130

 魔法防御110




 保有スキル【雷魔法Lv3】

 保有魔法【静電気】【放電】【雷球】

 ―――――――――――――――――――――――


 僕の時とは対照的に、周りにいる領内の有力者たちが歓声をあげた。


「おお! 雷魔法な上に現時点でLv3ではないか!」


 ユーグの声音もどこか嬉しそうだ。彼はもう僕のことには目もくれず、一目散にディオの元へと駆け寄ってしまった。


 その後は他領の貴族たちが次々と自分の子供たちに鑑定の儀を受けさせていく。


 どういうわけか、全員が攻撃スキルを得ていて誇らしげな顔をしている。


「ふむ。今年は中々優秀であるな。余はとても満足しておるぞ。一人を除いてな」


 国王様の言葉に、周りにいる人々が苦笑しだす。


 なんでだ? 僕はなにか悪いことをしたのか?


 心の中から嫉妬や悔しさが込み上げてくる。そんな中、弟のディオと話していたユーグがこちらに戻ってきた。


「ラース、お前はもうこの家の人間ではない。でて行け」


「そんな、あんまりです! 父上は僕の誕生日に、爵位を僕に譲ってくださると約束してくださったじゃないですか!」


「それはお前が攻撃スキルを手に入れるだろうと踏んでのことだ。戦えない者はこの領地には必要ない」


「せ、せめて仕事の紹介などは……」


「言っただろう? お前はもうヴィクトル家の人間ではないと。もう一族の者ではないのだからこの俺にはお前がどうなろうと知ったことではないな」


「ひ、酷い……」


「ははは、もう諦めろよな!」


 後ろから声がしたかと思うと、ズカズカと足音をたてながらディオが会話に割り込んでくる。


「兄さんには才能がなかったんだよ! そんな無能に使う時間と金はねぇっての。領地はこの俺が貰ってやるから、安心してでて行けよな!」


「ディオの言う通りだ。将来的な爵位の継承はディオに行わせる。それではな」


 それだけ言い放つと、ユーグはディオとともに教会を去っていく。僕はそれをただ眺めることしかできなかった。

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