第4話 約束

 高嶋紀文は、次の日も、オープン待機にきていた。

結局〝蛍光ペン〟は、〝黄〟〝緑〟の2色になってしまった。

高嶋は、物がどうこうではなく、自分の記憶が問題だった。

ホームに落とした〝青〟は自分が諦めたのだからしかたないが、どうも不可思議としか言いようのない出来事であった。

「また、脱走」そんな声がしたので振り向くと〝藍〟であった。

「あおいちゃん!また脱走⁈ダメじゃない保育室にいないと!あっ昨日、東京駅まで脱走してなかった?」と昨日の件を問いただした。

「してない」それだけポツリと話した。

藍は、残り2本になった蛍光ペンをまじまじとみている。

高嶋は、何故、藍がパーカーのフードをいつも被っているのか気になったので聞いてみた。

「お母さんに、切られた」そう言ってフードを手で押さえた。

「あっ、お母さんが髪切ってくれたんだ?おじさんに髪みせて?」と聞いてみた。

「ヤダ!笑うから!」とフードを押さえている。

「笑わないから見せて?」とからかった。

「笑わない?約束」そう言って小指を出した。

高嶋と藍は指切りげんまんをした。

その後、藍は、ゆっくりとフードを取った。

藍の髪は、真っ黒で綺麗に整えられた、〝おかっぱ頭〟であった。

高嶋は、可愛いとかんじ、微笑んでしまった!

「笑った!笑った!」と藍は泣き始めてしまった。

高嶋は、しまったと思い慰めるが、いっこうに泣き止まない。

高嶋は、「あおいちゃん?このペン好き?よく見てるけど?」と話をそらした。

藍は、きがまぎれて、泣き止みかかった。

「好き」そうとだけ言った。

高嶋は、「わかった、じゃあ5本揃ったペンをプレゼントするから、おじさんを許してくれないかな?」と物で釣ろうとした。

藍は、暫く考え、足をコツコツして

「許す」とだけポツリと言った。

そんな時、高嶋の携帯が鳴った。

「あっおはようございます、‥エッ点灯してない⁈

分かりましたすぐ行きます!」

「あおいちゃん、おじさん仕事だ!明日ペン持ってくるよ!保育室に戻るんだよ!」そう言って、藍を置いて、慌てて店内に向かった。

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