用語集3 医療用語

※用語集はおまけコーナーです。読まなくても物語の理解には差し支えありません。

※特に断りがない場合、この用語集の内容は作中の設定ではなく現実に準拠しています。

※用語集に含まれる情報は2023年3月時点のものであり、現行の制度とは一致していない場合があります。



・病院と診療所の違い


 病院は英語でホスピタルと呼ばれ、20床以上の入院用ベッドを有する医療機関を指します。診療所(もしくは医院)は英語でクリニックと呼ばれ、入院用ベッドが19床以下もしくは入院施設を持たない医療機関を指します。すなわち病院と診療所の違いは入院用ベッドの数の違いのみと言えます。


・医師


 医師免許を保有している人物の総称です。臨床医、研究医、産業医、防衛医官、医系技官といった様々な職種があります。


・臨床医


 医療現場における直接的な患者の治療(臨床)を専門とする医師を指します。公立病院や民間病院、各地の診療所など大学病院以外に勤務している臨床医には100%臨床のみを行っている人物が多いですが、大学病院に勤務している(大学教員である)臨床医は臨床以外に研究や教育を行っている場合が多いです。

 ただし公立病院や民間病院、各地の診療所の中には医学生の学外病院実習となるアドバンスト・クリニカルクラークシップに協力している施設が多数存在し、そのような施設では臨床医が実習で訪れた医学生に対して医療現場において様々な指導を行います。医学生に対する「教育」は本来大学における講義(一般的にイメージされるところの「授業」)に限定されるものではないことを踏まえれば、学外病院実習に協力している施設の臨床医は臨床のみならず教育にも大きく貢献していると言えます。

 また、大学病院以外で働いている臨床医であっても症例報告や学会での発表という形で医学研究に貢献することは可能であり、上記の事実を総合すると大学病院に勤務していない臨床医であっても職場や勤務形態を選べば教育や研究に積極的に携わることは十分に可能であると考えられます。


・研究医


 医学の研究を専門とする医師を指します。主に大学病院あるいは民間の研究機関に勤務しており、前者の場合は研究や教育を行いつつ臨床にも取り組んでいる人物が多いです。

 大学教員を務める医師の使命は「臨床・研究・教育」の三本柱で、その中でも臨床を専門とする教員は臨床医、研究を専門とする教員は研究医に分類されますが、現在の日本では医師免許を保有しながら教育を専門とする教員はごくわずかです。


・産業医


 労働者の健康管理や労働災害の防止、労働環境の管理などを職務とする医師を指します。

 一定以上の規模の企業には産業医を雇用することが労働安全衛生法により義務付けられており、産業医の安定的な育成を目的として福岡県北九州市に産業医科大学が設置されています。

 防衛医官と異なり産業医には産業医大を卒業していなくてもなれますが、産業医大では特別なカリキュラムにより卒後スムーズに産業医として働くことが可能で、卒後に指定された機関で産業医として勤務すれば私立医大としてはかなり安い学費(6年間で約1100万円)で医師になれるというメリットもあります。


・防衛医官


 自衛隊に勤務する医師であり、軍医と同義です。医師かつ軍人なので戦争が勃発した際には戦地に向かい、災害の際には救助部隊の一員として派遣されることになります。

 防衛医官になるためには必ず防衛医科大学の医学部医学科を卒業する必要があり、防衛医科大学は学費が完全無料の上に在学中から給料が支給されますが、受験には年齢制限(18歳以上21歳未満)があり、学科試験に加えて体力測定や健康診断による選抜が行われます。入学後も通常の医学部医学科のカリキュラムに加えて軍事教練が課され、卒後最低9年間は自衛隊に勤務する必要があります。(自衛隊への任官を辞退したり卒後9年以内に退職したりした場合は卒業までの経費約5000万円を返金する必要が生じます)


・医系技官


 保健・医療に関する行政業務を担当する厚生労働省の技官(技術系行政官)を指します。医師免許もしくは歯科医師免許を保有している必要があり、防衛医官と同様に国家公務員として扱われます。


・コメディカル(パラメディカル)


 一般には医師を除く医療関係者の総称ですが、より実際的には医師の存在を前提として働く医療関係者を指します。

 例えば医師は開業医であれば単独で患者の診察から治療までを行い、院内処方を行えば投薬も医師のみで済ませることができます。一方で看護師や薬剤師、臨床検査技師といった職種は原則として医師の存在なしに医療行為を完結させられず、こういった医療関係者をまとめてコメディカルあるいはパラメディカルと呼称します。

 歯科医師や獣医師は医師の存在を前提とせず働く医療関係者であるためコメディカルとは呼ばれず、例えば歯科医療においては歯科衛生士や歯科技工士がコメディカル(コデンタル)ということになります。

 チーム医療が重視される近年の日本では医師以外の医療関係者に副次的を意味する「コ」「パラ」といった接頭語を付けることは好まれず、慣習的にコメディカルを指して「医療スタッフ」と呼ぶことがありますが、医療スタッフには医師も含まれるため適切な言い換えにはなっていません。


・医師法


 医師の職務や義務について定めた法律です。診断書や処方箋の交付義務、無診療治療の禁止、カルテの記載・保存義務といった医師の仕事に関する様々なルールが定められています。


・医療法


 医療機関や医療の提供について定めた法律です。病院と診療所の定義、診療科名の標榜ひょうぼう、医療計画の設定など医療に関する様々なルールが定められています。


・死体解剖保存法


 日本では死体を解剖すると本来は死体損壊・遺棄罪(刑法第190条)により罪に問われますが、医学・医療の現場では時に死体の解剖や保存が必要となるため、死体解剖保存法により特定の目的であれば死体の解剖や保存をしても罪に問われないことになっています。

 解剖学教室の管轄にある系統解剖(解剖実習における医学生による死体の解剖)、病理学教室や病理診断科の管轄にある病理解剖(医療機関で死亡した患者の死因を特定するための死体の解剖)、監察医が行う行政解剖(犯罪に関係のない異状死体の死因解明のための解剖)といった医学・医療の現場における解剖は死体解剖保存法により公に認められています。

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