222 楽しみなクリスマス
理子とデートに行くはずだったその日、いつも巡回している
上等なチケットを押さえるために即座に申し込みコンビニ支払いの用紙を印刷した雅人は、翌日の昼休みに理子を図書館前のロビーへと呼び出した。
「お疲れー、柳沢君。今日は何かあったの?」
理子には大事な話があるとだけ言ってここまで呼び出していて、彼女はいつもの明るい笑顔でそう尋ねてきた。
「先輩、今度の12月24日なんですけど真田さんのクリスマスコンサートに行きませんか? 実はチケット確保したんです!」
雅人はそう言うとコンビニ支払いの用紙を理子に見せ、彼女ははっとした表情をしていた。
それもそのはずでシンガーソングライターである真田雅敏は例年年末のカウントダウンコンサートは開催しているがクリスマスコンサートに相当するイベントは行っておらず、今回は公式ファンクラブのウェブサイトでサプライズ的に開催を発表したのだった。
同じく真田ファンである理子はそのサイトはまめにチェックしていなかったらしく、クリスマスコンサートの存在も知らなかったらしい。
「やっ、柳沢君、これもう買っちゃったの?」
「いえ、先輩が来てくれると分かったら振り込むつもりです。お金は俺が持ちますから」
「そんなの悪いよ! 私の分は絶対出すからそこまで遠慮しないで」
「そうですか……先輩、ということはクリスマスに一緒に来てくれるんですか!?」
話題の順番が前後しているが雅人は目を輝かせて理子に尋ねた。
「もちろん、私も柳沢君とならぜひ行きたい。その日は絶対予定空けとくから集合場所と時間が決まったらまた教えてくれる?」
「ありがとうございます! 先輩、クリスマスはよろしくお願いします!!」
大声で感謝を伝えると理子は微笑みつつこちらこそありがとうと言ってくれて、チケット代は後日手渡すのでコンビニ振り込みの際は立て替えて欲しいと頼んできた。
元々チケット代は全て持つつもりだった雅人にはその程度のことは造作もなく、クリスマスコンサートの告知ページのURLは理子にもメッセージアプリで送ると伝えた。
それからは理子とデートに行く度にクリスマスコンサートの話題で盛り上がり、当日は会場となるホールのある兵庫県神戸市で早めのディナーを楽しんでからコンサートに行こうと約束した。
一度は離れかけていた理子との距離だが自分はやはり彼女に惚れているのだと再認識し、雅人はクリスマスの当日を楽しみに待っていた。
その思いは理子も同じなのだと、彼はずっと信じていた。
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