第18話 カミングアウト

あれから仕事が少なくなった。雑誌モデルのページもかなり減少した。

テレビ出演の依頼も来なくなった。

アタシはお休みの日が多くなってきていた…。


マンションからも逃げたくなって、しばらくホテルに滞在していた。


そんな時、事務所の吉田さんから連絡が来た。

「思い切って、テレビでカミングアウトしてみたらどうかな?」

「え?」

「このままだと樹里が潰れてしまう。今までの苦労が無駄になる。どうだろうか?」

「アタシ…アタシやります!やらせて下さい!」

「よし!分かった。じゃあ、スケジュール考えて番組依頼も頼んでみるから。詳しく決まったらまた連絡するよ」

「はい。よろしくお願いします!」


アタシはもう隠さないと決めた。

そして、出演番組が決まった。


✤✤✤

『弾む!イワシ御殿!』


「今日のゲストに今疑惑の人になってしまった、宮本樹里ちゃんが来てくれました」

「お久しぶりです。よろしくお願いします」

「今日はまたなんと言うか、色っぽいなぁ」

「ありがとうございます。イワシさんに会えるのを楽しみにして来ました」

「それで…その…実際はどうなの?ホントのところは…」


(きた!よーし全部しゃべっちゃえ!)


「アタシ、本当は男なんです」

会場中が驚きとざわめきがあり、「えー!」と言う声が聞こえた。


「ホンマかいな」

「本当です。でも胸は自前なんですよ。今Eカップです」

「待って!どうやって自前にしたの?」

「アタシ、すごく痩せていてガリガリだったので、一度90キロまで太ったんです」


会場がまたまたザワつく…。


「ふんふん、それで?」

「それでそこから胸だけ残してダイエットしました。もちろん女性ホルモン注射とかも打っていますよ」

「へぇー、分からんもんやなぁ」

「ダイエットに成功したんですけど、やっぱり元は男なので、太ももから脂肪吸引して、その脂肪を胸に入れたんです」

「これまた驚きやなー。触ってもええか?」

「イワシさん、それセクハラになりますよ」

別の男のゲストが言った。

「じゃあ私代表で触ってもいいですか?」

鈴木 寧々ちゃんが、目をキラキラさせて言った。

「どうぞ、どうぞ」

アタシは寧々ちゃんに近付き、バストを触ってもらった。

「すごーぃ!ふわふわ!プルンプルン!触ってて気持ちいいです!」

「へぇー!すごいなぁ。努力の賜物や。そんで…その…下の方はどうなってるの?」

「男性のシンボルですよね?まだ着いてます」

「へぇー!全然見えへんなー」

「今仕事激減したので、番組見てる方、プロデューサーさん、仕事下さい。よろしくお願いします!」

「なんや、売り込みかい」

イワシさんはガクッとコケた。辺りは大爆笑!


アタシのカミングアウトは成功した。


✤✤✤


それからは旅番組や、バラエティ、コマーシャル、グルメ番組など、幅広く依頼が来た。

特に多かったのは季節柄ということもあって、温泉の入浴シーンの撮影が増えた。

アタシは喜んで引き受けた。

アタシの身体が、普段のお手入れの成果が全国放送で流れた。


悔しがったのは、藤城カンナだった。アタシをおとしいれようとしていたのに、逆に売れ行きが伸びてしまった。

その後も顔の整形してるかも?とかブログで書いていたけれど、アタシの顔は一切いじっていない。全部メイクのお陰。


そして、暴露本と写真集も出そうと話が出た。

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