第27話 生きた証


 旅人は歌う。

 最北の国が滅びたと。

 ドラゴンが現れ、火炎を吐き、燃え盛る家々の合間を縫って逃げ落ちたと。

 そのドラゴンは隣国の騎士によって打ち滅ぼされたらしい。

 この国にはドラゴンの脅威は訪れないと分かると、人々は安堵し、無事を祝い合った。

 そんな中、旅人は倒れ、息絶えてしまった。この国に辿り着くのもやっとだったのだろう。

 人々は旅人が寂しくないように花畑へと埋葬した。

 墓石には旅人が最期に歌った詞を記して。

 それは御伽噺となり、この国の子供たちに語り継がれる事となる。

 話は段々と誇張されていき、ドラゴン狩りへと発展していった。

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