第6話 魔王


「魔王退治は辞めた」


 勇者は敵地を前に踵を返した。


「此処まで来て何を言ってるの!?」


「魔王を倒せば終わりなのに!」


 戸惑う仲間たちは必死に勇者を止める。だが、勇者は引かない。

 勇者は悟った。世界最悪のモンスターは魔王ではない。人間たちの方だ。

 自然を破壊し、生き物を殺し、何が残るのだろう。

 それならば、人間を滅ぼした方が世界の為になる筈だ。


「止めるなら、お前たちから殺す」


 剣を振るう勇者に、仲間たちは為す術なく散っていった。

 この世界に魔王など最初から居なかった。人間が作り出した偶像だった。

 勇者はこの世界最初の魔王に成り下がったのだ。

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