風の色

第1話プロローグ－口上

これから掲載される物語は、今から約３０００年前程に実際に起きた、古代中国は殷周（インシュウ）革命前後の物語（ハナシ）である。

昨今、この時代が漫画として登場するや否や、世間で話題となったのがきっかけで、メディア《媒体》に注目され、アニメ《動画》・ミュージカル《歌劇》にも展開をみせておるから、ご存じな方も多いだろう。

当然、内容も何となく分かっておる故に、今更語る必要もない。

そんな輩も多いはずだ。

しかしながら、あの内容には幾つか抜け落ちている物語（カショ）が存在する。

そこでこのわし、呂尚（ロショウ）が、覚えている限りのエピソードを語っていこうと思い、こうして顔を出すことと相成った。

この行為で、ほんの少しでも真実に近づけられたら、この上ない喜びで一杯である。

それにしても……

何故、お主達はこのわしを疑いの眼で見ておるのだろうか？

何々、太公望の下の名前は、“呂尚（ロショウ）”ではなく、“呂望（リョボウ）”なのではないかだと？

まぁ、確かに表舞台に多く出ていたのは、“呂望（リョボウ）”という者だが、わしはその彼の影武者のような役割を担っておったのだぞ！

少しは注目されてもいいと、わしは思うておるのだが……

兎に角、わしが言いたいのは、世の中に伝わっておる“逸話”と呼ばれる類いが間違っておる……という事ではない。

そこに気の長い歴史（ジカン）の中で抜け落ちた物語があると、認識してほしいのだ。

そして、1つ1つ紡ぎ・繋いで、物語を修復いければ良いとも思うておる。

皆が少しでも楽しんでくれれば……

それが、未来におるわしの願いである。