第13話

【試合当日・訓練場】


 放課後の訓練場に多くの生徒が集まる。

 お互いの選手がリングでにらみ合う。


 特にファインとボッズは3か月間の間何度も言い合いになっており、お互いに前に出て睨みを利かせる。

 ボッズのターゲットは俺からファインに移っていた。


「ファイン!貴様のチームは3人だけか?残り2人は雑魚じゃないか。くっくっく、ずいぶんと余裕だな」

「そっちは余裕が無くて2人も雇ったようだな。そんなに自信がないか?」

「貴様!殺すぞ!」

「俺と闘って倒してから言うんだな!」


 2人の言い合いがエスカレートするほど会場が盛り上がる。


「これ!やめんか!試合を始められんではないか!」


 学園長のマーリンが叫ぶと会場が静まった。

 俺は前に出た。

 そう、俺が先鋒なのだ。


 そして向こうからはクマのような大男が出てきた。


「おい!グリズだぞ!」

「バカな!大将じゃないのか?」

「大将はボッズだとして副将が妥当だろう。だが、あえて強い選手を前に出したんだ」



「お前に恨みはない。だが、本気で行かせてもらう」

「お互いに全力で戦おう」


 グリズは身の丈ほどの大剣を構えた。


 グリズは体力が異様に高い戦士タイプだ。

 戦士としては俺より強い。


「では、グリズ対フィールの試合開始じゃ!」


「うおおおおおお!」


 グリズが剣を構えて飛び掛かって来た。

 俺は剣を抜かず両手に魔力を込めた。


 俺に斬りかかる瞬間に魔法が発動する。


「スパイラルエッジ!」


 無数の風の刃がグリズの体を引き裂きながらグリズを宙に浮かせた。

 グリズの弱点は魔力の低さだ。

 魔法耐性が無いため、魔法で大ダメージを受ける。


「おお!大魔法を使ったか!流石風魔法の上級!」

「だが、あんなに飛ばして大丈夫か?大魔法は魔力を消費しすぎる」

「余裕が無いんだ。相手はあのグリズだ。大魔法で一気に仕留めるのしかないんだろう」

「後先考えてられない、か。だが、もう大魔法は使えないだろう」



「まだだ!まだ倒れはせん!」

「分かっている!スパイラルエッジ!」


 更にスパイラルエッジでグリズを切り刻む。


「大魔法の連撃!」

「あいつ!どれだけ魔力をあげたんだ!」

「ボッズに迫る魔力を持っている事は確定したな!」


「大魔法を2発も使ったのか!」

「無茶苦茶だ!だが、フィールの魔力は残り少ない。見れば分かる」


 スパイラルエッジが止むと、グリズが膝をついた。


「ぐおおおおおおおお!まだまだあああ!」


「起き上がった!グリズは化け物か!」

「フィールが仕留められなかったフィールの負け、終わりじゃないか?」

「剣で戦ってもフィールに勝ち目はない!」


 グリズが俺に迫る。


「ウインド!ウインド!」


 ザン!ザン!


 風の刃がグリズにヒットした。


「まだ、まだ!ま、だ……」


 ドスン!


 グリズが倒れた。


「勝者フィール!」


「「わあああああああああああああ!」」


「フィールの奴、やりやがったぜ!」

「フィール君!かっこいい!」

「結婚して!」



「フィール、次も行けるかの?」

「はあ、はあ、はい!行けます!」


「フィールに、あいつに余裕は無い」

「ああ、切り札の魔力を使ったんだ」

「もう、ほぼ剣だけで戦う事になるだろう。もう詰んでいる」


 ファインが叫んだ。


「フィール!よくやった!もう下がってくれ!お前は十分に戦った」

「何を言っている?まだ4人もいるだろ?」

「もう魔力が残っていない!無理しなくていい!」


「ここからが本番だ!後4人!全員倒す!」


 俺の言葉で会場が雰囲気が変わった。


「あいつ、後4人全員を1人で倒す気か?」

「無茶だ!もういい!フィールは十分戦った!」

「グリズを倒しただけで十分だ!」


 十分?まだまだだ。

 ボッズは強い生徒を2人メンバーに入れている。

 その内のまだ1人しか倒していない。

 更にボッズもいる。


「試合を続けるかやめるかは本人が決める事じゃ!続ける!ファイオ、前に出るんじゃ!」


 ファイオがリングに入った。


「ファイオ対フィール、試合開始じゃ!」


「ふふふ、僕の炎魔法で」


 俺はファイオの懐に飛び込んで剣で斬りつけた。


「ぎゃああああああああああ!」


 ファイオが地面に倒れてのたうち回る。


「勝者フィール!」


 俺は次の戦いも剣で斬り倒した。




「勝者フィール!」


「3人抜きだぜ!」

「だが次はソニックが出てきた!」

「ソニックの速力は学園トップクラスだ。確かスキルの効果で速力300を超えている!あいつの剣を魔法無しで避けるのは難しい!無茶だぜ!」


「フィール、次もやるかの?」

「やります!後2人で終わりだ!」


「フィール、よく頑張ったな。俺が楽にしてやろう。一瞬でな」


 俺は呼吸を整えた。


「ふ、話す余裕すらないか」


「ソニック対フィール、試合開始じゃ!」


 俺は剣を抜いてソニックに飛び込んだ。

 全力でソニックの剣と打ち合う。

 後先を考えず連撃をお見舞いする。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ソニックの持つ剣が弾かれた瞬間、腹に横一線を叩きこんだ。


「ぐぼおおおおおおおおおおおお!」


 更に動きが止まったソニックに連撃をお見舞いする。


 ソニックが倒れた。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


「まさか!4連勝だと!」

「フィール!つええええええ!」

「あいつの切り札は魔法じゃなかった。速力だったんだ!」

「だが、明らかに無理をしている!魔力は殆どない。息切れしている。フィールに、もう余裕は無い」



 フィール・バイブレーション

 体力レベル  196(+16)

 魔力レベル  175(+20)

 速力レベル  393(+230)

 生産レベル   10

 知力レベル  151

 魅力レベル  593(+70)

 スキル

『☆秀才』『☆風魔法の才能』『☆イケメン』『☆妖精契約・チンカウバイン』『剣術:中級』『炎魔法:下級』『水・氷魔法:下級』『風魔法:上級』『土魔法:下級』『聖魔法:下級』『闇魔法:下級』『生産魔法:下級』

 内政力

 爵位:男爵家の息子

 兵力レベル:無し

 収入レベル:無し

 領地レベル:無し


 


 

 俺は訓練を速力優先に切り替えた。

 残り一週間、必死で訓練をした事で最後の追い込みをかけたのだ。

 どうやら気持ちがこもっている方が訓練の成果は良くなるようだ。


 更にチンカウバインの恋愛ポイントをすべて速力につぎ込んだ。

 グリズは魔法で倒せる、だがソニックには魔法を避けられる可能性があった。

 速力を強化してソニックの強みを消したのだ。


 パチパチパチパチ!


 ボッズがリングに上がった。


「フィール、盛り上げ役、ご苦労だったな。後は私がすべてを倒して勝利するだけだ」


 ボッズは俺を見て笑った。


 この闘いのボスは、こいつだ。







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