第12話 はゆるとはるなちゃん②
私が初めて漂意に成功したのは中学一年の夏、通っていた個別指導塾での出来事だったというのは既にお話しした通りです。
その当時、同じ塾に通っていた同級生の中で、私のいちばんのお友達だったのが、ほかでもない財前はるなという女の子です。
よく言えば
「その声、はゆりんごじゃん。誘拐されたんじゃないの? どゆこと?」
迷子になったように困惑するはるなちゃんに、私は経緯を説明しました。説明するたびに自分の状況を客観的に把握して大変心が痛むので、できることなら話したくないのだけれど、仕方のないことです。
どうせ驚かれて心配されるだけ――私はほとんど自暴自棄になっていました。
けれど、
「えっ、ちょっと待って! 昨日?」
話し終えるのも待たずして、はるなちゃんは拍子抜けしたような声を上げたのです。
「昨日って、私、はゆりんごのこと見かけたよ?」
それを聞いて、今度は私のほうが拍子抜けしてしまいました。
『それは本当ですか?』
「うん。ほら、あのハイテクなおみくじが置いてある神社……」
はるなちゃん
「一旦整理しよう。じゃあ、私が見たはゆりんごは、実は既に、はゆりんごじゃなかった……ってこと?」
『ええ……。とはいえ、はるなちゃんは奪われて間もない私の身体を見ていることになります』
不思議なものです。朝は
『はるなちゃん。ひとまず私は、廿楽織神社に向かわなければならない気がします』
「お! じゃあ私に乗ってく? って、もう乗ってるか!」
はるなちゃんは無邪気に笑って、その場で小さく跳ねました。ツインテールが一拍遅れて揺れ、頬を撫でていきました。
渡くんと紅愛ちゃんにも事情を話すと、
「これが本当の、自分探しの旅ってわけか……。僕は安楽椅子探偵に徹するけど、なにかわかったら伝えるよ」
「映ちゃん、頑張ってね! 私たちも協力できることはなんでもするから!」
二人はそれぞれ励ましの言葉をかけてくれました。いいお友達を持てて嬉しい限りです。私の目の届かないところで渡くんを紅愛ちゃんと二人きりにしてしまうのだけが少し不安だけれど。
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