第4話 『銀色の創作講座』第1回 「主人公と世界の作り方」【 銀色の魔法はやさしい世界でできている ネタばれあり】

 さて4回目の講座は実戦的なものにする。

 つまり吾輩の自作品の解説だ。


 つまりここからは『銀色の魔法はやさしい世界でできている』のネタバレを含むことになるので、もしも読みたくないならここでブラウザバックしてくれ!


「そうでない人はこのままお読みくださいませ!」


 しかし本作を読んでからこの解説講座を読んだ方がいいかも、なので出来れば『銀色』の第1章くらいは読んだ方がいいかもしれないが⋯⋯そこはお任せする。


「それではスタートです!」




 まず初めに言いたい事はこの『銀色の魔法はやさしい世界でできている』という作品が、吾輩にとって初の作品だったという事だ。


 しかもそれまでSSだとか一切書いたことが無い吾輩がだ。


「無謀だね⋯⋯せめて短編くらい書こうよ」


 何というか吾輩そのころ、自分に書けるのかまったくわからず「これが最初で最後だから⋯⋯」という思いだったのだ。


「バカなの?」


 ある程度小説なんぞ書こうとする人は皆バカなんじゃないかと思う。

 それは実感したな。


 しかしそれをやって人々を楽しませる全ての作者たちは素晴らしいと思うし、

 吾輩もそれを出来て楽しかった。

 だからこれを読む皆様も、ぜひこの素晴らしい体験をしてもらいたいと思う。


 それでは始めよう『銀色の創作講座』第1回目のテーマは、

『主人公と世界の作り方』だ。




 これはあくまでも、この『銀色』という作品を書いた時のことですべての作品がこうだとは言わない、むしろ多様であるべきだと吾輩思う。


 当時のネット小説は『追放』というジャンルでにぎわっていた。

 いわゆる『もう遅い』ブームというやつだった。


 その頃の吾輩はカクヨムの存在は知らず、小説家になろうで多くの作品を読みふけるいわゆる『読専』というやつだった。

 そんな吾輩のようないままで1文字たりとも小説を書いたことない人間が、なぜいきなり執筆に乗り出したのか⋯⋯。


 これは吾輩のリアフレが、なろうで書いていたと知ったからだ。


「伯爵の友達が?」


 うん⋯⋯正直驚いた。

 そして本当になろうで作品を書くことは敷居が低いのだと実感したのだ。


 これが理由の1つ目、そしてもう1つが⋯⋯なろうへの不満だった。


「不満?」


 なんていうのかな? 『追放』というジャンルが『優しくない』と気づいてしまったんだ。


「優しくない?」


 醜い人間関係やご都合主義の展開ばかりが目立ち始めた。

 それが我慢できなくなっていったのだ。


 そして吾輩思った。

 読みたい話が無いなら自分で書こうと⋯⋯。


「⋯⋯思い切りましたね」


 まああの頃はどうかしていたな。


 それで自分の大好きな主人公。

 説得力あるストーリーやサブキャラなどをテーマにプロットを練った。


「プロットの作り方なんてよく知ってましたね?」


 いや、全然知らなかった。


 だからひたすら妄想の中で理想の主人公の旅立ちを脳内シミュレーションし続けたのだ。


 どんな主人公がどんな出会いをするのか、それを脳内で言葉にしてひたすら読み上げた。

 セリフも即興で考えて話させていたな。


 それでそのままこれを文字にすればいいだけだと思って実行したのが本作『銀色の魔法はやさしい世界でできている』なのである。


「無茶苦茶ですね⋯⋯」


 うんそう思う。


 でもそれまでの人生で読書経験は多かったから、文章は初めてなのに書けたんだ。

 よく「読書で文章力は身につかない」という人もいるが、それは嘘だと思ったな。


 人は本を読むだけで書けるようになるのだ。

 まあ効率が悪い学習方法なのかもしれんが。


 それで実際に書いてみた。


 吾輩二度手間が嫌だったので初めっから大好きな主人公を創ることにした。

 世間のニーズとかそういうのはどうでもいい。

 自分が好きで納得できればそれでよかった。


 だってこの作品は、自分の為に書く物語なのだから。




 それで主人公アリシアのモデルになったのは『機動戦艦ナデシコ』のキャラで『ホシノルリ』という少女だ。

 このルリは今現在まで通しても他に居ない、まさに唯一の存在⋯⋯吾輩の永遠の憧れである。

 正直初恋なのだろう。


 それを書くことにしたなぜか?


 やっぱりルリみたいなキャラが居ないから自分で書くしか方法がない、という切実な思いだったのだ。


 しかしこの『ホシノルリ』書こうとしたらめちゃくちゃ大変だという事がわかった。

 サブキャラとして配置するならともかく、主人公にはまるで向いていないキャラだったのだ。


「たしかにルリはサブヒロインでしたしね」


 ルリが主人公に成れたのは成長した後の劇場版だったからだと吾輩気がついた。


 ルリが書きたい!

 でもルリのままじゃ書けない!

 という事に気づくのに、それほど時間はかからなかったな。


「なぜそこで諦めなかったんですか?」


 単純に創作という行為が面白かったんだろうな。

 今まで読むだけだった物語を、自分で好き勝手に出来るということに夢中だったんだろう。


 その結果アリシアはルリとは少し違うキャラになってしまったが⋯⋯。

 それでもアリシアは吾輩の大好きな主人公で理想を詰め込んだ最高傑作になったよ。


 凄い力を持っているのにそれの使い道がない主人公。

 世の中にまるで興味の無い主人公。

 人間に興味の無い主人公。


 でも親友が出来た。


 そこからアリシアの人生は変わっていくんだ。

 自分以外何も無いと思っていた世界が美しいと知っていくのだ。


 自分の為には何にもしない主人公が、

 大切な人のために何かしたいと思えるようになる物語。


 それが吾輩が書きたかった会いたかった主人公のアリシアになった。


 とまあここまでだったら、ただの俺TUEE主人公で自分で書く必要はない。

 ここからどれだけ自分が納得できる作品にするのかが課題だった。


 まずご都合主義をやめよう。

 そう思った。


 いや作品とはほぼ作者の思い通りで、ある意味ご都合主義で成り立っている。

 そこは否定しないがせめて作品の中でだけでも理由くらいはしっかりと書こうと思った。


 そこから吾輩の苦しみが始まった⋯⋯。


 どうやったらこの吾輩のアリシアが活躍できる?

 これがテーマになった。


 アリシアのモデルになったルリは宇宙船のオペレーターだったが、ファンタジーに置き換える際に書きやすく『万能の力の魔女』になった。

 この万能性は後になって何が出来て何が出来ないといった不自由さを無くすためだったりする。


 主人公のアリシアは凄く強い魔女だ。

 じゃあバトル物なのか?


 これはいきなりバトルが書けるとは思ってなかったので、バトルメインにする気は一切なかった。

 あくまでアリシアという魔女の成長物語にするだけにしようと思った。


 そこで考えた吾輩の設定は、

『主人公のアリシアの存在をこの世界の油田や核兵器にしよう』

 だったのである。


「またぶっ飛びましたね⋯⋯」


 主人公のアリシアの出現に右往左往する世界を書く物語⋯⋯それをテーマにすることにした。


 アリシアの内面を書きつつも世界から見たアリシアの姿も書きたいから三人称で書く事を決めたのもこの頃だった。


 そして気がついた。

 この物語、国が一つだけだと成り立たないと⋯⋯。


「世界が膨らんでいきますね」


 最初はアリシアの住む王国だけの予定だったんだがな⋯⋯。


 それでライバル国に帝国をとりあえず設定したのだが⋯⋯このままだとアリシアのせいで戦争が起きそうで、このままじゃマズいと考えた。


「バトル物は書きたくなかったんですよね?」


 うん、ギスギスした話なんて初めてで書けるとは思わないからな⋯⋯。


 そこでパワーバランスを保つために国を3つにした。

 文字だけでもわかりやすくするために王国・帝国・共和国となった。


 しかし共和国なら複数の国の集まりだと気づき、こちらも文字だけでわかりやすくするために東西南北4つの国の集まりになったんだ。


「えらく増えましたね⋯⋯」


 ホントそう⋯⋯。

 何でこうなるのかもう完全に制御不能だった。

 書く前からこの調子だったのである。


 主人公アリシアが活躍できる世界を創るためだったのに、その世界が膨らみすぎていった。


 どうしてこうなった?


 でもただ設定を考えるだけなら簡単で楽だったから、納得いくまで突き詰めることにしたのだ。

 まさかそれを本当に書き始めるなんて、この時は思っても見なかったな⋯⋯。


 そして国が3つ⋯⋯正確には6つかもしれんが、これをただ配置するだけでは意味がないので各国代表のヒロインを出すことにした。


「おー、ヒロインですか?」


 あくまでアリシアは主人公でヒロインとは思っていなかった。


 メインヒロインはアリシアの住む国のお姫様だと決めていたからだ。

 このアリシアとお姫様のコンビでいろいろな問題を解決していくお話にする予定だった。


 しかし各国のヒロインも出すことになって急遽新たにキャラ作りすることになったのだ。


「どんどん話が膨らんでいきますね⋯⋯」


 先人たちの知恵に習い主人公の仲間は『戦士・僧侶・魔法使い』にすると決めた。


「ドラクエですね。 それにしても魔法使いはアリシアなんじゃ?」


 これはちょっと悩んだな。

 いっそアリシアの国の姫を無くして帝国の姫にしようかとか⋯⋯。


 しかしここで大きな設定を思いついた。

 それが『魔法と魔術』である。


 魔法は魔女⋯⋯主人公だけのもの。

 この世界の人々はそれの劣化版の魔術を使っている。


 そしてライバル国の帝国の姫はアリシアの比較キャラとして人類最強の魔術師という設定になった。


 自国の姫は素直に姫騎士にすると決めていたので共和国は僧侶キャラになる。


 ここでふと思った。

 共和国4つの国代表の姫が一人っておかしくないか⋯⋯と?


「そうですね、じゃあ僧侶は4人に?」


 それはさすがに止めた。

 そこで設定を考えることにしたのだ。


 この共和国を結びつける絆は何だと?

 答えは簡単だった『宗教』だ。


 つまり共和国は4つの小国が宗教によって結ぶついて、その大神殿からこの僧侶ヒロインを派遣する⋯⋯となった。


 この結果この僧侶ちゃんは姫ではなくなったが⋯⋯まあいいかと思った。


「なんでです?」


 視点の高さの問題だ。


 主人公のアリシアは魔女としてある意味治外法権な存在だ。

 それを囲むヒロインたち全員が姫だと、だれも庶民目線になれないと考えたからだ。


 魔女・姫・ライバル姫・庶民の娘。

 この4つの目線でこの物語は立体的になると考えたのだ。




 最後にまとめると。


 主人公はルリをモデルにファンタジーにしたので魔女の少女になった。

 そしてその主人公をとりまく世界のお話にしようと考えた。

 するとパワーバランスの関係で国が6つに増えた⋯⋯。


 こういう事である。


「見事に無計画ですね」


 ホントそう⋯⋯。

 よくここで引き返さなかったのか⋯⋯。

 なんでこれで書こうと思ったのか謎すぎる。


 しかし初めに言ったが本当に楽しかったのだ。

 理想の主人公を考えて、それが活躍できる世界を創造するこのお遊びが。




 とりあえず今回はここまでで。

 次回はヒロインの作り方かな?


「それではまた!」


 ごきげんよう。

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