第三章 49 Eradication The Stampede
天界エリシオン。カーズが去った空間をアリアはじっと見つめていた。
「……心配か? アリアよ」
ゼニウスが尋ねる。
「……ええ、あの子は本当に真っ直ぐで純粋過ぎる。それに、何でも一人で背負い込んでしまうのです。本人はゆっくりと気楽に過ごしたいでしょうに……。その責任感や正義感から、いつも何かしらと問題に巻き込まれてしまう。それに怖れ知らずで無鉄砲、言い出したら聞きませんしね……」
「随分とよく見てるんだな。確かにあの真っ直ぐなところは俺達からしても眩しいくらいだ。変わった人間だよな……。…愛しているのか? カーズのことを……?」
「ファーヌス……。そうですね…、神格を分けた大切な弟として、でしょうけど。それに…、神である私にとって人の愛というものが一体何なのか、ということまではわかりませんしね……」
そのとき、アリアの体が眩しく輝き始める。
「どうやら喚び出してくれたようですね。では行って参ります、お姉様、お父様」
光に溶けるようにアリアの姿が消える。
「わからない、か……。だがその理解できない感情こそが愛なのだ、アリアよ。それを自覚したとき、お主は一体どうするつもりなのかのう……」
アリアが消えた虚空を見つめながらゼニウスは呟いた。
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地上、クラーチ王国。迫り来る魔物の大軍。アヤにエリック、ユズリハはクレアとレイラの率いる王国、近衛両騎士団約2000の軍勢と共に南門で待ち受けていた。他国やリチェスターからの冒険者の応援も大勢来ている。王国の冒険者達は残念ながら役に立たない。大軍はまだ数㎞程先だが、すぐに此方へとやって来るだろう。
「カーズにアリアさん、間に合わなかったのか……」
エリックが呟く。
「……うん、でもきっと来てくれるよ。そういう人だからね」
「アヤちゃんの言う通りよ、バーカ。それに私達だけでもやれるってところを見せてやらないとね。でも、それにしてもね……」
「ああ、多いな……」
噂や伝承で聞いていた
「しかも
アヤが口にしたように、通常の
こちらにはエリックにユズリハという超戦力がいるが、鍛えられた騎士団と他国からの応援の熟練冒険者達、そして役に立ちそうにない王都の冒険者達を合わせても総数は約2000弱。余りにも多勢に無勢だ。王都まではまだ距離があるが、数の暴力の前にはひとたまりもないだろう。
「仕方ねえ、速攻で突っ込んで潰せるだけ潰すぜ」
バルムンクを抜くエリック。
「そうね、私達の受け持ちが増えるのは当然だし。それにカーズが何かしたのか知れないけど急にレベルも上がったし」
カーズが神の試練で斃した、数え切れない程の魔物の経験値も共有されたため、2人は兎も角、新しくPTを組んだアヤのレベルも急激に上昇していた。
「アヤちゃんは後方から援護をお願い」
「うん、でも二人共無理しないようにね……」
「ありがとう。エリック、行くわよ!」
「おう、腕に憶えのある奴らはついて来い!!! 敵を近づけさせるな!!! 行くぜ!!!」
「「「おおおおおお!!!」」」
エリックを先頭に、ユズリハ、数十人の高ランク冒険者が続く。そして援護役のアヤは最後尾から味方に補助魔法をかけながら走った。
騎士団は基本的に防衛に回る。討ち漏らした敵を門前で確実に仕留めるためだ。おいそれと隊列を崩すわけにはいかない。だが、圧倒的な数を前に押し込まれるのを待つだけというのはジレンマを感じる。
「自国の防衛を他国の彼らに頼らなくてはならないとは……っ!」
隅で震えている自国の冒険者達を睨みつけるレイラ。
「……残念ながら、彼らもあの腐ったAランク共の被害者なのです。我々もアリア殿達に稽古をつけて来て頂きました。できることをやりましょう、レイラ様!」
クレアに言われて、仕方がないなという表情をするレイラ。
「では、近衛騎士団に守りはお任せ致します。我らも前に出る! 総員準備せよ!」
「「「ハッ!!!!」」」
「混戦になる、馬は置いていけ。彼らに続け! 行くぞ!」
クレアの号令と共に前線へと向かう、鍛え抜かれた王国騎士団。ギグスにヘラルドも一緒だ。
ここにこれまでに前例のない
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シュンッ!
「よし、到着。って、もう始まってるな……。ギリギリ間に合ったってところか?」
今俺がいるのは王都南門の遥か上空。ゼニウスの様子から、既に
「ていうか、多くないか……?」
ユズリハの話だと、低ランクが多くても3万ってことだったよな? どう見ても倍以上、それにまだ後続に同じくらいいる。10万くらいか? そこに
先頭の一団で派手に暴れているのは……バルムンクを振り回すエリックに、高威力の魔法を撃ちまくるユズリハか。見たことない冒険者達は、他国からの応援ってとこか? リチェスターの連中もいるし、派遣されて来たんだろうな。離れた後方からは、魔導銃でアヤが援護しているのか。
だが、うーむ、やっぱりあの試練での異常な数の魔物を斃した経験値は共有化されていたのか。アヤのレベルが500を超えてるし、エリユズに至っては1000以上だ。パワーレベリングにも限度があるだろ……。
魔物も……、AランクとかSもいる。空にもワイバーンやら魔鳥、翼のついた動物や蝙蝠の様な魔物まで。これはやりにくいな。先ずは王都に結界を張るか、空中から侵入されたら嫌だしな。
フッ!
南門前に転移で移動。レイラと目が合った。
「よっ、ただいまレイラ姉。元気だった?」
「カ、カーズ! 無事に戻ったのですね、良かった……」
泣きそうになるレイラ。けど今は感動の再会をしている場合じゃない。
「ああ、今から王都に結界を張る。だからここを守らなくても魔物は入って来れない。援護に行ってやってくれ。俺もすぐ向かうからさ」
「そうか、承知した。皆の者! カーズが王都に結界を張ってくれる、近衛騎士団も前に出るぞ!!!」
レイラの号令と共に前に出る近衛騎士団。さて先ずは一仕事しますか。
「神格・神気解放……」
ゴオオオッ!!!
「大規模神気結界!!!」
王国全土を包むように巨大な結界が展開される。これで大丈夫だろ、空からの魔物も弾かれるはずだ。
「で、アンタらはいつまで震えてんだ?」
王都の冒険者達に声をかける。だが…、明らかにこれは目の前でAランクを半殺しにした俺にビビってるんだろうな……。返事がない。ただの屍ごっこかよ。情けねえな。
「お前らの境遇には同情はするけどな、今までの自分を乗り越えるかどうかは結局自分自身だ。肩書だけの冒険者ならさっさと辞めるんだな。俺はもう行く、死にたくないなら結界に入ってろ」
「お待ち下さい!」
振向き、とっとと前線に飛ぼうとしていた俺に声が聞こえた。駆け寄って来たのは、エルフ? 薄い浅黄色のショートカット、装備は簡素なレイピアに軽鎧。誰だ……?
「えーと、誰?」
鑑定するのも面倒だしなあ。
「イヤミーナです、カーズ様」
「んん? あの縦ロールの人? へー、髪切ったんだ、いいじゃん。そっちのが似合ってるよ」
「あ、は、はい、そうでしょうか? あの……、わたくしはあの試験で心を入れ替えました。それでも…怖かったのです…が、先程のあなたの言葉で…、罪滅ぼしの為にも、このままではいけないと……、そう思ったのです!」
何だかモジモジし始めた。でも吹っ切れたのかな?
「そうか、ならさっさと前線に行くといいよ。ユズリハ達が闘ってるし。Aランクのアンタが行けば戦力はかなり上がるだろうしな」
「え、ええ、そうなのですが……。カーズ様、私に新たな名を与えて頂けませんか? もう……、この名前は捨てたいのです! どうかお願い致します!」
深々と頭を下げてくる。……何で様付けなんだ? それに自分で改名したらいいんじゃないのか?
「え? うーん、でもそれは親が付けてくれたんじゃないのか? 勝手に俺が変えてもいいもんなのか?」
「構いません。エルフの里を勘当同然で飛び出したのです。どうかお願いします、カーズ様!」
片膝を着き、真剣な眼差しを向けて来る。どうやら心に期するものがあるような気がするな。
「そうか……、よくわからんけど、何か覚悟があるんだな。だったら俺の好きな作品のハイエルフの名前を付けてやるよ、……じゃあ今からお前の名は『ディード』だ!」
ドゴオオオッ!!!
「うわっ、何だ!?」
魔力が渦を巻いた。名付けた瞬間、彼女の力が大きく跳ね上がったのか?
「ありがとうございます。心から憧れた方や大きな力を持った方から名を頂くのはこの世界では大変な栄誉なのです。ではカーズ様、わたくしも行って参ります!」
一礼すると、凄い速度で行ってしまった。あんなに速かったっけ? ネームドってそんな意味があるのか? また意味不明な知識が増えた……。まあいい俺も行くか、先ずは前線から一気に殲滅してやるぜ。
フッ!
転移で一気に移動、見えてる距離だしこれのが速い。気配遮断を解く。まだ誰も気付いてはいないな。
「よーし、じゃあ早速暴れてもらうぜ! 味方を潰すなよー、来やがれ!
ドオオオーーーン!!!
魔物の大軍を押し潰すようにヨルムの巨体が出現し、俺はその頭の上に降り立つ。いやあー、これやってみたかったんだよな。
「グハアアアアー!!!! 早くも出番を与えてくれるとは、主よ礼を言うぞ!」
「おう、ここの魔物全部ぶっ飛ばしてくれ、って? 何か見た目が変わってないか?」
鈍重そうだった蛇の様な体躯が、城の如き巨大さは変わらないものの、動き易くスマートに、腕も翼も大きく鱗も分厚く、赤くなって、よりドラゴンに近い姿に変化している。
「主の召喚術のランクの力と、我に名を与えたことが影響しているのであろう。且つてない程の力が漲って来る。より戦闘に特化した姿に変化したのもその恩恵だ!」
なるほど、名付けにはそういう意味が……。さっきのディードもそういうことなのか。転〇ラかよー……。後でアリアに聞くとしよう。
などと話していては当然目立つ。ただでさえこいつはデカいんだしな。敵味方共に驚きを隠せないようだ。
「こんなメチャクチャするとは……、だが違いねえ、この魔力……。おい! カーズか!!?」
エリック、気付いたかー。
「遅――い!!! しかも何連れて来てんのよ―!?」
ユズリハか、怒らんでもいいだろ。
(間に合ったんだね、良かった)
アヤからは念話だ。味方全員、後ろから来る騎士団達にも伝えておくか。
(悪い、ちょっとゴタゴタしてて遅れた。ここからは俺達も参戦する。こいつは
「グワーハハハッ!!! 我が名は主の
声がくっそデケえ! 空気がビリビリと震える。
(カーズ殿、やはり来てくれたのか……)
(クレアか、騎士団は後ろに逃れた奴らを任せる、近衛騎士団もすぐに来る。王都に結界を張ったからな、守りは気にしなくていいぞ!)
はい、説明終わり。アヤには個別でもう一つ。
(アヤ、詳しいことは終わってから話すよ。先ずはこれを終わらせてからだ)
(うん、わかった。でもアリアさんは?)
(今から喚び出すのさ!)
(ええっ?!)
「さてと、じゃあいくぜ……。来い、アリア!
カッ!! ドオオオーン!!!
光の柱と共にアリアの実体が目の前に現れる。天界の時の様に神気に溢れ、凄まじい神々しさだ。
「待っていましたよ、この時を。さすがSSランクの召喚、私も相当強化されていますね!」
「はは、軽く1万はMP持っていかれたけどな。でもこれで義骸とかの制限解除だろ? 頼むぜ、姉さん!」
「ふふふ―、ええその通りです。さあひと暴れしましょうか!」
神界での動き易そうな衣装。赤と白を基調としたマントを纏った装備に腰にはソードと刀、背中には大剣、左手にはあのエグいバックラーか。これは誰も敵わないな。
「アリアは戦況が危なそうなところを援護してやってくれ」
「ハイハーイ!」
これで戦力的にはお釣りが来るくらい問題ないな。クソ親父は……気が向いたら喚んでやるか。
「よーし、ヨルム。挨拶代わりだ、
「承知したぞ主よ、さあ受けよ、有象無象共! 我が輝く息吹を!!」
ドゴアアアアア――――ッ!!!
大きく息を吸い込み、吹き出した白銀に輝く息吹。俺に放ったものよりも更に凶悪になっている。放射線状に敵陣を大きく切り裂く様に粉砕する極光が大地を抉る。うーむ、凄まじい、なんつう威力だ。これで全部蹴散らせそうだな。今ので2,3万は削ったはずだ。通常の
だがまだまだ数万の大軍が、この巨大なドラゴンに恐れもなさずに押し寄せて来る。
「おお……、なんという凄まじさだ……」
「あれは…、ドラゴンを使役するなど…、何者なんだ……?」
「アイツは俺達リチェスターのカーズだ! アイツがいれば勝ったも同然だぜ!」
他の冒険者達が騒ぎ出した。やっぱドラゴンに乗って登場は目立つなあ。だが狙ってやったんだし気にしないでおくか。もう色々と今更な気がするしな。
「おっと、忘れてた、エリック、ユズリハ! 受け取れ!」
異次元倉庫から取り出した創造武器を二人に投げる。試練の道の後半、休憩中にこっそり創っておいたんだよね。
バシッ! ガシッ!
ユズリハには新調して更に強度と伸縮性が上がったグングニルと欲しがっていた魔導銃の彼女の髪色・金色バージョン、エリックには強化したバルムンクと、もう一本だ。
「やったー、サンキュー! カーズ!」
嬉々として受け取るユズリハ。二人のメインウェポンは魔人戦などで耐久が落ちてたし、創った当時はまだスキルがAランクだった。だが新しく創ったのはSランク相当。それでもアリアのお手製にはさすがに負けるけどね。
ガシィ! バシッ!!
「こいつは、新しいバルムンクに…もう一本は何だ……? この輝く大剣……」
「そいつも神話の聖剣、フラガラッハだ! 衝撃追加はないが、投擲しても狙った敵に必ず当たる追尾効果が付いている。どんな鎧も斬り裂くし、そいつでつけた傷は治せない、超速再生なんざ無意味だ、絶対に人に向けるなよ!」
本物の形なんて知らないから大剣仕様。だが神話と性能は同じ、俺の勝手なイメージで創ってあるからな、フィクションさ。本当は片手剣かもしれないしね。クラウ・ソラスとか、ジョワユーズってのも考えたけど、こいつが一番イメージがし易かった。
英名はアンサラー。報復者とも言われる、敵の装甲を易々と斬り裂き、必ずヒットする追尾機能付きだ。何だか異名が魔剣ぽいけどね。
「よっしゃー、早速使わせてもらうぞ、聖剣フラガラッハ! いくぜ、
ザッヴァアアアアッ――ン!!!
エリックが大きく横薙ぎに振るった大剣から放たれた、風の魔力を纏った鎌鼬のような斬撃が魔物の大軍を斬り裂く!
「おお……! スッゲー斬れ味だ! 恩に着るぜカーズ!!!」
「じゃあ私も、この魔導銃ぶっ放してやるわ!」
ユズリハが魔力を込めると、魔力ブースターのリボルバーが高速回転する!
ドウッ!!! ドゴオオオオオ―――ン!!!
敵陣に大爆発が巻き起こる!
「エクスプロージョンまで撃ち出せるとか、最高ね!!!」
いきなり試し撃ちでSランク相当の魔法を撃つんじゃねえよ! まあ、満足してくれて良かった。約束は守らないとな。使い潰した武器は俺の魔力に変換して取り込んだ。
さて、アリアはー……、うん、敵陣を飛び跳ねながら剣技や魔法を連発してる。空の魔物にもレーザーの様に魔法で撃ち落としたり、魔物の頭に乗ったりとか、絶対遊んでるな…こいつ。
「よし、ついでだ! クレア、レイラ姉、受け取れ!」
バシッ! ガシッ! 創造武器を二人にも投げる。
「カーズ、これは……? しかも何という魔力だ……!!!」
「レイピア? だが燃えるように熱い……、カーズ殿?!」
「そいつは神話のレイピア、フランベルジュ。炎の魔力を纏った、俺の魔力で創ったSランク相当の武器だ。刀身が波打つような造りになってるだろ? 刺突しても斬り裂いても再生しにくい傷を与える。そして柄のナックルガードには
まあこれも俺のイメージ。フランベルジュは片手剣とも大剣とも言われてるしね。
「我が弟からの賜りもの、大切に使わせてもらおう!」
「私にまで……、ありがたく使わせて頂きます!」
さーて、味方の士気も上々だ。ぶっちゃけヨルムのブレスだけでも一掃できそうだが、これ程の大軍、明らかに異常だ。他の冒険者や騎士団も奮闘してはいるが、まだまだ数では負けている。疲れが出る前に片をつけないと危ないだろうな。
(アリア、楽しんでるところ悪いが、妙だと思わないか? こんな大軍が来るとか。多分かなりの数は削ったが、まだ後ろの方に、探知に変な反応が引っ掛かる。認識疎外か何かではっきりとは視えないんだ)
(ふむ、気付きましたかー。どうやら操っている者がいるようですねー。魔人のような気配に、ドラゴン……。むー、洗脳されているようですね。スキルに力をもっと集中させれば視えますよー)
集中し、千里眼と鷹の目に更に力を込めて後方まで飛ばす。こいつか……、認識疎外は破れたが、どうも今迄の魔人とは違う。ちゃんとした人型を保っているし、ドス黒い瘴気もない。だが鑑定するには距離が離れ過ぎている。
乗っている巨大な黒いドラゴンには……明らかに不自然な、巨大な首輪の様なものが着けられている。あれで操っているということだろうか? 可哀想なことしやがるな。こいつはぶった斬ってやるからな。
あそこまではまだ大軍が続いている。ならば面倒だ、極大魔法で一気に消し炭にしてやるぜ!
「イメージは悪いが、パズズ、お前の技を使ってやるよ! 俺なりのアレンジでな」
風と雷の融合、同属性だ。大した負荷にはならない。体内で魔力を練り上げる。
「神格・神気解放! いくぜ!」
両手の中に融合圧縮させた
「合わせろヨルム!
「任せよ主!
ゴゴゴゴオオオ――ドオオオ―――ン!!!
魔物の大軍を飲み込む巨大な雷を纏う竜巻に、ヨルムのブレスが加わり、敵陣をズタズタに切り裂いていく! 大地が抉れ、大気が震える! ここまでで総数約10万はいた大軍の9割は一気に壊滅させた。これで魔人の様な奴と黒竜のところまでの道は開けた。残りは約1万、あとはみんなに任せても大丈夫だろう。
「オラオラァ!! 次に斬られたいのはどいつだ――!!」
楽しんでるなー、エリック……。ユズリハは……
「アハハハハー!! デストローイ!!!」
グングニルを振り回しながら魔導銃を連射、バーサーカーみたいになってるわ……。
アヤは突破して来た敵を、冷静にレイピアと魔導銃で確実に仕留めながら味方にバフや回復をかけている。大丈夫そうだな。この冷静さは見習うべきだろ、あいつらは……。他の冒険者達も、さっきの一撃に驚いてはいるが……、まあ問題ないな。ディードも、うん、かなり能力が増してるし、頑張ってるじゃないか。ちょっと武器が心許なさそうだけどな。
騎士団も撃ち漏らしに数人がかりで着実にトドメを差している。でも団長2人が敵陣でフランベルジュを振り回しているとは……。これはいただけないが、初めて手にする高ランク武器でテンション上がっちゃったかあ。うーん、でも特に問題はないかな。
(アリア、空と後ろは任せる。俺はこのままヨルムと親玉のとこまで向かう。いざとなったら援護に来てくれー)
(ハイハーイ、無茶しないようにねー)
(ああ、大丈夫だ)
天界でのあいつは何だったんだろうか? ってくらい、いつもの軽い調子だな。やっぱゼニウスのオッサンが原因だろうなあ。
「よし、ヨルム、あそこまで飛べ!」
「任せよ!」
巨大になった翼を羽搏かせ、高速で飛ぶヨルム。そして俺達は黒竜に乗った魔人らしき奴と空中で顔を合わせた。俺の武器は刀が一本だけだ。アリアに貰うのを忘れていた。だが今は神器もある。たかが魔人程度に負けることはない。
「お前は誰だ? ここで何をしている。この異常な数の
黒竜の上に立ち、ニヤニヤとしていた魔人が口を開き、拍手する。
「いやあーブラボーブラボー! この数の魔物をものともしないとは。さすが特異点の一人、カーズ。いや、ナギストリアの残滓とでも言った方がよろしいかな?」
「どういう意味だ? お前はただの魔人だろうが。魔王に忠誠を尽くすんじゃないのかよ? こんなところで何してやがる?」
細い黄緑と白の縦縞模様のスーツのような衣服に同じようなデザインのシルクハット。長く濃い緑色の髪の毛で右目は見えない。見た目は軽薄そうな優男風、普通の人族のようだ。だが背後に無数の魔物の瘴気のオーラが滲み出ていてキモい。神気で更に鎧装を強化して張っておくか。
「吾輩が忠誠を誓うのはファーレ様、バルゼ様にアーシェス様よ。そして吾輩をそこらの魔人と同じに思ってもらっては困る。悪魔大将にして総司令官サタナキア、それが吾輩の名と与えられた称号である!」
なるほど、いかにもな魔人と異なるのはそういうことか。こいつらにそういう称号やら役職、爵位みたいなものを与えるということは、名前を付けるということに似ているみたいだな。
そしてルシファーにベルゼブブにアスタロト、その配下の大将か……。
偶然にしてはよくできているな……。だが、あんな意味不明なものを真似して何がしたいんだ?
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さてさて何のことだろう?
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