第6話 イケおじぃ!!
「ガッハッハッハッ!それは災難だったなルリカ!」
「ホントですよ!私、戦いはあまり好きじゃないんですよ?」
私は今、当面の生活費を稼ぐためにガルシアさんの元に来ています。
「だが、まさかあのヴァルに勝っちまうなんてな・・・何か作戦があったのか?」
「いえ、ただヴァルさんが色々喋ってるうちに魔法打ちました」
「ルリカ、案外エグいことするんだなお前。そりゃ不意打ちってやつだろ」
確かに、今思うとメチャクチャ不意打ちだったな・・・
「ところで今日はスイは来てねぇのか」
「はい、シュナさんが私の家で面倒見てくれてます」
私がそう答えると、ガルシアさんはそうかと一言置き話題を切り替える。
「今日の仕事はもう終わりだ。このあと少し時間あるか?」
突然の問いだったけど、私はすぐに答える。
「時間ですか?それならありますけど、何か用事ですか?」
「まぁな、話せば長くなる。だから奥の部屋で話そう」
・・・・・・
「話って言われても・・・私、見に覚えは無いんですけど」
するとガルシアさんは私の頭をポンポンしながら優しく声をかける。
「気にすんな、悪い話じゃねぇよ」
「今回お前に話すのは冒険者ランクアップの報告とそれに関する色々だ」
冒険者ランク?何の意味かよく分からない私に、ガルシアさんが解説を始める。
「昨日ルリカがヴァルと決闘し勝利しただろ?その実績を垣間見ての事だ」
そのガルシアさんの説明に、私は質問をする。
「ランクアップって、すると具体的には何があるんですか」
「具体的にはそうだな・・・1番分かりやすいので言うと遠征クエストに参加できるようになるのを始め、出来るクエストが増えるな」
「ランク1では、犬の散歩とか落とし物を探すとかそんなのが主だったが、今のルリカのランクであるランク5は、国内周辺のパトロールとか下級モンスターの討伐みてぇな戦闘混じりのクエストが受注出来るようになる」
戦闘かぁ・・・私あんまりやりたく無いんだけどなぁ・・・
「これらのクエストは体を張る分、報酬はランク1のときの3倍ぐらいになるな」
なるほど、であればやってみるのも一興かもしれない。
「話って、それだけなんですか?」
「メインはこれだけだが、それだけじゃねえ。ランク5に上がるには軽い講習を受ける必要があってな」
講習かぁ・・・大学時代嫌い嫌いで仕方がなかったんだよねぇ・・・
「それがメンドくせぇんだ」
「だから!今ここで俺がパパッとそれを済ませてやろうって話だ」
イ、イケおじぃ!!ハンサムすぎるぜイケおじぃ!!ヒューヒュー!
私はそんなことを言いたくなる気持ちをギュッと抑えて尋ねる。
「分かりました、それで講習って何を聞くんですか?」
「そうだな、さっそく始めるか!」
・・・・・・
「今日お前に教えるのは禁術についてだ」
「禁術?」
禁術・・・何となく分かりそうだけど、聞いておくに越したことはないだろう。
「そうだ、禁術は、禁止術式の略で大きく分けると即死級の魔法と非人道的な魔法の2つに分けられる」
即死級と非人道的、言われてみれば当たり前なラインナップだ。
「まあ百聞は一見に及ばねえ。実際に見てみれば分かるさ」
そう言うとガルシアさんは指を鳴らす。すると何処からともなく檻に閉じ込められたゴブリンが現れた。
「コイツはこの街の近くで悪事を働いていたゴブリンだ。基本的にこういったゴブリンは実験や魔法の実演に使われる」
かなり酷い気がするけど、地球でネズミを実験に使うのと似たようなモノなんだろう・・・
「まずは始めに即死級魔法、これは1種類しかない。それがディザスタだ」
「ディザスタ?」
「ああそうだ、見てろよ・・・ディザスタ!」
ガルシアさんがそう言って手に持った杖を振ると、黒い球体がゆっくりとゴブリンに向かって行った。そして、それがゴブリンに当たるとゴブリンは粉微塵になって球体の中に消えていった・・・
「これが即死魔法のディザスタだ、どうだ?」
「どうだって・・・スゴい怖いです」
あんなの死んでも喰らいたく無い・・・もっと皆んなに看取られて死にたい。まあ、前は事故死だったんだけど・・・
「そりゃ怖いわな、その感覚があれば撃つこともしないだろ。それじゃ次だ」
そう言うとガルシアさんは次のゴブリンを召喚した。
「次に見るのは非人道魔法の代名詞、ポイジア系統。つまり毒魔法だな」
「まず始めにポイジア、これは禁術ではないが系統として一応紹介しよう・・・ポイジア!」
ガルシアさんがそう唱えると、紫色の光ががゴブリンに向かい、そしてぶつかった。そのゴブリンは急にグッタリと項垂れ始めた。
「このポイジアには致死性はねぇ。相手に発熱と眩暈をもたらすものだ。故にこれは禁術では無い。次に・・・ポイズニア!」
ゴブリンはポイズニアを喰らうと急に嘔吐を始める。ガルシアさんはそれを尻目に解説を始めた。
「ポイズニアはポイジアに嘔吐と免疫力低下をもたらすものだ。多くの生き物は最終的に死に至る。そして、最後が・・・ポイザリア!」
ポイザリアを喰らったゴブリンは一瞬何も変化が無かった。しかし、すぐに身体が腐敗を始め、1分余りで跡形も無くなってしまった。
「ポイザリアはこれまでのものに体組織の腐敗と脳神経の停止をもたらす。以上がポイジア系統の魔法だ。どうだったよ」
「スゴい怖くて、忘れられないです・・・」
今日はスイを抱きながら寝よう・・・
「そうか、まあ以上が講習だ。で!たった今からルリカのランクは5に上がったぞ」
そうだった、それが目的だった。ゴブリンの死に方が衝撃的過ぎて忘れてしまっていた。
「ありがとうございます。でも良かったんですか?怒られたりしませんか?」
「大丈夫だよ!ギルドマスター兼騎士団長の俺が言うんだからな!」
確かに、ギルドマスター兼騎士団長のガルシアさんが言うなら・・・ん?騎士団長?
「えーーー!?ガルシアさんって、騎士団長さんだったんですか!?」
なんと高スペックな!私が幼女じゃなかったら抱いてるところだった・・・
私が驚きを隠せていない中、ガルシアさんは何事もないかのように話し始める。
「そうだ、言ってなかったか?」
「言ってませんでしたよ!?私、今まで無礼とかしてませんでした?」
するとガルシアさんは笑いながら私の頭をワシャワシャと撫でて答える。
「んなことを子供が気にすんなよ!子供は楽しい事だけ考えればいいんだよ」
「ちょっ、ガルシアさん!痛い」
するとガルシアさんは、悪い悪いと言って私から手を離す。
「でも、安心しました。では今日はこれで」
私がそう言って帰ろうとするのをガルシアさんが止める。
「ああ、ちょっと待てルリカ、明日は用事あるか?」
「明日ですか?いえ、特に何も。何かご用事でも?」
するとガルシアさんは少し微笑み言った。
「ああそうだ。ズバリそれはだな・・・」
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