第16話 三人の同窓会。

「ありがとうございました〜」


 僕を残して、最後のお客さんが支払いを済ませて店を出た。時刻は午後十時。


「今日は少し早いけど、店閉めるか」


 店は本来は午後十一時まで開いているらしい。


「酒のつまみ作るから、テツはもうちょっと待ってな」


 力也君と由希子ちゃんと店員さんは、テキパキと閉店の後片付けをしている。僕はカウンター席から畳の四人席へと移動した。


 待っていると、机の上に焼き鳥や刺身など、つまみにしては豪華な料理が次から次に置かれていく。力也君は店員さんにもおみやげを持たせていた。


「お待たせ。じゃあ、始めようか」


 力也君と由希子ちゃんが僕と対面して座った。


「なんだか、同窓会みたいね」


「そうだね」


「テツとは高校三年の正月に会って以来だから……十年ぶりか」


 僕たちは生ビールで乾杯をした。


「テツ、今日は俺の奢りだ。遠慮なく飲んで食べてくれ」


「うん。ありがとう」


「凛子ちゃんも居たら、もっと楽しくなったと思うけど、蒼太君が明日学校だから仕方ないよね」


「酒屋も明日は開いてるし、無理だな」


「二人は、子供はいるの?」


「いないよ。そろそろ欲しいね。って力也君と話はしてるけどね」


「テツは……子供は?」


 力也君が少し躊躇ちゅうちょしながら僕に聞く。


「いないよ。それに、妻……元妻ね。元妻が彼女の頃から一度もそういうことをしなかったしね」


「は? 一度も?」


 力也君と由希子ちゃんは驚いている。


「うん。キスもしたことないよ。手を繋いだのも数回かな? 彼女の頃は結婚するまで、清らかな関係でいましょう。って言われて、結婚してからは別々の部屋で寝てたから、そういう雰囲気になるとかは一切なかったよ」


「マジかよ……」


「それは流石に変よ。彼女の頃の言い分は分かるけど、結婚してからも別々に寝て、一度もそういう雰囲気にしないって、それは……」


 由希子ちゃんは話の途中で黙ってしまった。その先を言うと僕がさらに傷つくと思っているのだろう。


「元妻は、初めから僕のことを好きじゃなかったと思う。今だから分かるよ。僕も今は元妻に愛はないしね。今でもツラさはあるけど、それは好きな人に裏切られた行為に対してで、元妻には何の感情も湧かない。もし仮に、やり直したいと言われても、キッパリと断るしね。そんな事は今後起こらないと思うけどね」


 ほぼ一日中お酒を飲んでいる僕は、かなり酔っ払っている。普段は自分の思っている事をこんなにも饒舌に話はしない。相手が力也君夫婦だからと言うこともあるからだろう。


「そうか……よし。テツ、今日はとことん飲もう」


「そうね。そうしましょ。じゃあ、改めて、カンパーイ」


 僕たちは生ビールの入ったジョッキを持ち上げ、再度乾杯をした。

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