私の経歴
はる
第1話 幼稚園時代
私の母はまっとうな人間だった。だった、というのは過去形ではなくて、実感としての言い方だ。優しく聡明で正直で善良な人間であり、なのに私に劣等感を抱かせない自然さを有している。人を拒絶しがちな私は、そんな母の元ですくすくと育った。私自身は小さな頃から人よりも自然に興味が行くような子どもで、手にダンゴムシを大量に這わせては、近所の友達の母親を驚かせたり、母に促されてアオムシを車道からすくい上げたりしていた。あまり喋らない子どもだったが、言葉を使い出すのは比較的早かったらしい。「女の子らしく」おままごとをしたりして人と会話をするより、男子とかけっこをしたりいたずらをしたり、絵本を読んだりするほうが楽しかった。コミュニケーションよりも行使のほうが性に合っていたらしい。優劣に強い興味があって、人を馬鹿にした発言を幼稚園の時にして、先生からしこたま叱られた記憶がある。そのくせ自分もトロいほうで、同じクラスのちゃきちゃきした女の子によく標的にされていた。マイペースでおっとりした私が気に食わなかったらしい。何か不備があるとその犯人にされかけたりした。先生よ、なぜ助けない。その代わり、うんうんと人の話をよく聞く(というか受動的な)性格が好まれたのか、男子からの人気は絶大だった。母によると、どの子も「はるちゃんが好き」と言っていたらしい。そんな感じで、普通の女の子像からはかけ離れていたが、人気があるという謎な幼稚園時代を過ごす。
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