お話し合いと春一番
光輝燦然10
───同時刻、香港、とあるビルの一室。
「こちらの書類、確認してもらえます?」
殺気立った雰囲気のなか、
プリントアウトしたメールのやり取りに、カメラの映像、写真、証言や会話の音声などなど内容は盛りだくさん。
受付嬢は慌ててどこかへ連絡し、不在だったはずの社長はガタイのいい男達を連れて現れ2人を取り囲んだ。
そのまま建物上階の
「色々調べさせてもらいまして…社長さん、けっこう顔が広いみたいですね」
ニッコリと微笑む
「お前ら…どこの奴だ?目的は?」
「どこでもないけど。これはちょっとやり過ぎなんじゃないかなぁって思ってね」
言いながら
と、態度が気に食わなかったのか状況が悪いと思ったのか、隣にいた男の1人が
キンッとかすかな金属音がして、その銃身が半分に割れた。
「あんまり物騒な事はしたくないんだよね」
一体何が起こったのかと事態が飲み込めない男達。懲りずにもう1人また銃を構える。
キンッ。再び真っ二つになる銃身。
「おい…俺達ぁ話し合いに来てんだよ、お前らの為にな。頭足りてねぇのか?」
そう吐き捨てると
拳銃は、
はたから見れば
「
カシュンッ。
まばたきする
乗り込んできたのはたった2人────だが戦力は圧倒的に上回っている。いや、だからこそ2人だけでも乗り込んできたのか。
たじろぐ
「
あからさまに社長の目が泳ぎはじめた。九龍の風俗店に女性を売っているという情報はあったものの、どの店かまでは押えきれておらず裏取りは完璧ではなかったが…どうやら、カマかけは成功したようだ。
「
ボカシはしたが、つまり
もちろん全てを暴露して
「お前ら…こんな脅しをかけて、これが表に出れば
「先に仕掛けてきたのはお宅でしょ?それに俺たちは事実上、
社長の呟きに、煙草の煙を流しつつ落ち着き払った様子で答える
逆に、もし
考えたのち社長は話を渋々承諾し、その場でマフィアへと連絡して金輪際
持参した品々はアタッシュケースごと全て社長へプレゼントした。もちろん原本のデータは手元にあるからなんの問題もない。
身軽になった2人は、振り返りもせず
「んだよ、けっこうアッサリじゃねーか。骨ねぇなあの社長も」
「まぁ…現時点で損にならない方を取ったんじゃない?別に俺達も
ひと仕事終え、
そして
けれどそれは正直預かり知らぬ所なのだ。
‘正義’なんてのは九龍の住人は持ち合わせていない。そんなものを心に宿している人間ならば、魔窟には籠もらず香港警察あたりで大活躍しているだろう。
「とにかくありがと
「あぁ?そりゃ
「今回はぶっ放してないじゃない」
「俺が
「あははっ」
軽口を叩き合いながら一服し終わると、
話し合いは
「で、お前あの妹とはどうなんだよ」
通話を切って携帯を畳む
「俺?俺は何もないよ」
「あっそ。一途だな。…ん?‘俺は’?」
「
「はぁ!?」
その返答に
───この冗談半分で口にされた言葉は、のちに、夢の様な形で現実になっていく。
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