マカオと100万香港ドル・後
一六勝負2
遡ること、30分。
カジノフロア中心部、テーブルでバカラに興じる
「
「だって次は…次こそはくる気がして…」
マーチンとは‘負けたら2倍をベットする’、つまり勝つまでどんどん倍額を賭けていく手法。バカラでは必勝法とも言われている。
だが、100香港ドルから始めたとしても10回も連続で負ければ掛け金は5万香港ドルを越えてくる。
「ちょっと
「
「俺抜けるからさ。
藁にもすがる思いで
「えっ全部いくの!?」
その額3万香港ドル。手持ちがもうそれしかなかった
「ちょっとずつやっても回収出来ないし」
「まぁ…まぁそうね。うん、
「ブラッドオレンジのジュース飲んだから」
「理由ヤバイな」
椅子の背もたれに身体を預ける
トランプが配られ、1枚、2枚と表になり、そして────
‘
「うぁ!!!!勝った!!!!」
戻ってきたチップを5千香港ドルほど、今度は
そこへ
「当ててんのか
「あ、
「腹減ってきたからな…ぁんだよ、
「ウチの
つまらなさそうな顔をする
それからもまた、的中、的中、的中。あまりにも連続で当てるのでいつのまにか周りにはギャラリーが出来ていた。
勝ち金は膨れ上がり、
「えっまた全部いくの!?てか何で
「そろそろ終わりだし、
「待ってそれハズレるフラグじゃない!?」
トランプが配られる。全員が固唾を呑み注目する中、少しずつ
‘
「あれ、ハズレた」
「ほらぁ!!!!」
キョトンとする
バカラはワンゲームが数十秒と早い。即座にチップとカードが撤去され、瞬きのうちに開始する最終ゲーム。
掛け金がゼロなのだから特に卓にいる必要もないが、
‘
結果は引き分け。と、観衆がどよめいた。
2人は
「マジ!?」
目を見開く
「なんでタイが来るってわかったの!?」
「うっせぇな眼鏡…別に、たまたまだよ」
と
カジノではイカサマは無しということになっているが実際いくらかの
前ゲーム、
かといってこのまま客を負けさせて終わるのでは‘夢’がない。最終ゲームで人々を惹きつける
タイは配当金がデカい、くれば盛り上がるし誰かが当てればギャラリーにも希望を与えられる。ディーラー側は今一瞬損をしたとて、‘夢’を見たカモ達がその後に使う金額と比較すれば釣りは充分。
だからきっと、
だがやはり額によっては
「ほら
「え?いいの?」
「お前が賭けてたから勝てたようなもんだ」
「ねぇ
「
「お金出したもん…」
「じゃあ
「うわー!!
「おい、甘やかすなよ
話しながらバカラのテーブルを離れ、スロット大会の会場へ向かう。2つほどホールを抜けてたどり着いた先にはひしめき合うスロットマシン、輝く巨大スクリーンには
「何してんだ
会場を見渡す
「
「メッセージ来てる。アフタヌーンティー食べてるから
携帯をイジりつつ答える
「
「そうでもねぇな。
携帯から会場へと視線を戻した
残り時間はあと30秒、実質ここが最後の勝負。目を白黒させながらボタンを連打する
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…で、なんだこの不甲斐無い結果は」
「しゃーないやん!俺かて頑張っててん!」
電光掲示板を見詰めてため息をつく
「フリー2回きてこんなんなるかよ」
「出ぇへんかったんやもん!!」
そのまま特に巻き返すこともなくランキングはご覧の通り。
ほどなくして、通路の向こうから腕に様々な店の紙袋を提げた
「
明らかにキャパオーバーな大量のショッパーを目にして、
「
「えーなになに?見してよ中身」
こともなげに答える
「じゃあ結局誰も勝たなかったの?」
「俺ぁ勝ったよ。
「
「俺はわけてもらったもん。ね、
「はれはまほがはったはつははら」
「なんて?」
「もーいいから飯行こうぜ。
やいやい言いながら、一同はカジノを後にしレストランへ向かう。
実はこのとき新たなトラブルの火種が生まれていたのだが…まだ誰1人としてそれに気が付くことはなかった。
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