枯樹生華
少女とソフトクリーム
枯樹生華1
「あなた、いつもここに居るわね」
その声に
快晴の九龍灣、ベンチでアイスを頬張る
前に
今日も今日とて、新作でも出ていないか…と偵察に来た所。出ておらずとも結局買ってしまうが。
「えっと…はじめまして?」
「お話するのは初めてね。でもいつもあなたのこと見てたわ、毎日アイス食べてるもん」
不思議そうな顔で挨拶する
「そんなに美味しいの?そのアイス」
「俺は好き。食べたことないの?」
「ないわ」
「食べる?」
「え、いいの?」
「うん。バニラに苺ソースでよければ」
「うわぁ!ありがとう!」
嬉々としてアイスを受け取る少女。
少女はストンとそこに座り、満面の笑みを
「優しいのね!あなたお名前は?」
「
「私は
年の頃は7、8歳だろうか。身なりがよく、少しませた印象。
1人でウロついているのか?確かに、九龍灣は別段危険エリアではないし昼間であればそこまで心配も無いものの…。
「
「
「毎日?」
「最近はそう。それでね、あなたをお話相手にすることにしたの」
いい人そうで良かった!と
どうやら彼女は
ここ何週間か通っているオフィスは九龍灣が見えるビルにあり、そこから波止場を眺めているうちに、しょっちゅうやってくる移動式のアイス屋と大量買いする
仕事場にいても手持ち無沙汰な
よくこんなどこの誰かもわからない男に目をつけたなと
これが
「本もたくさん読んだし、お絵描きも飽きちゃった。あなた、
キラキラした瞳で
話し相手にロックオンされた上、急に面白い話をしろとせがまれても困り
期待に満ちた
「俺、あんまり上手く話出来ないよ。最近あったこととか友達のことくらいしか言うことないし」
「いいわよ!知らないことは全部楽しいもん!」
屈託の無い笑顔を見せる
楽しんでもらえるか自信は無いが、
思いのほか色々あるもので、興味津々の
「話が下手なんて嘘ね!とっても面白い!」
「そう?なら良かったけど」
面白いのは周りのみんなのおかげだ。というか、今の時点では
「でも…私そろそろ帰らなきゃ…」
時計をチラチラ気にしつつ、
もうすぐ日没、この周辺は比較的安全なエリアとはいえ暗くなってからは流石に手放しで安心出来る訳ではない。
それでも帰りたくなさそうな
「また明日も話そうよ。
「えっ?本当?」
「今日と同じくらいの時間でいい?」
「うん!!嬉しい、ありがとう
本人は否定するかも知れないが、結局は
手を振って帰っていく
こんなに年下の友人は初めてだ。今まで周りが自分より年上ばかりだったので自由に振る舞っていたが、
見守る立場になるのはほぼ前例のない体験。お兄ちゃんとしての言動が出来るだろうか?
する必要はないのかもわからないが、やはり何とはなしに、
しかし
そんなことを思い、九龍の街を抜け【東風】に帰り着いた。
「おー
扉を開けると
今夜は──というかかなりの高頻度だが──夕食を
テーブルを囲み今日の出来事を語る
「新しい友達出来た。
「へぇ、どんなヤツなの?ちゃんと俺の魅力話してくれた?」
「可愛い女の子。
「えぇ…やめてぇ…?」
でも女の子なら紹介してとめげない
「未来のイイ女は大事にしていかないとね」
「ふぅん」
キザにキメた
「で、明日も行くんだ?」
「そう。
「違法薬師の俺に聞く?あ、でもちょうどイイもん買ったわそういえば」
「…合法?」
「合法だよ!普通のお菓子!」
言いかたが怪しかったので疑ってしまったが、
「めずらしいね、
「溶かして薬と混ぜて飴タイプのドラッグ作ろうと思って」
「…合法?」
「違法薬師の俺に聞く?」
確かに聞くまでもなかった。だがとにかく、これはまだ調合前なので至って普通の飴に間違いはない。
それあげる代わりにさ、と
「その子可愛いんでしょ?お姉さんとかいるか訊いてきてくんない?」
どこまでも煩悩に忠実な要求。
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