九龍懐古
カロン
東洋魔窟
雨と【東風】
東洋魔窟1
雨の中、大通りを
薄暗い小道を進んで行けば、電灯が消えかけている見慣れた看板が目に入ったので足早に近付き引き戸をひく。
「あれ、今淹れたの?お茶」
カウンターテーブルには用意して間もなさそうな湯気のたった
「そろそろ来ると思って。準備良くない?」
男は答えながら満足気に口角を上げ、傘無かったの?使いなよと言って白いタオルを渡してきた。
タオルには【宵城】の文字、それと可愛い女の子のイラストが印刷されている。
「これ
「そう、新しい柄のやつ。
「んー…ピンクは
ピンクだとちょっと風俗っぽ過ぎ…と言いながら、タオルで雑に身体の雨粒を拭う
一方の
「
「荷物届けた」
「中身何だったの?」
「さぁ…銃とかじゃない?カタカタ音してたから」
「あらやだ物騒」
口元に手をあてて大袈裟なリアクションをとる
ここ【九龍】は無法地帯。
歴史の中のちょっとした手違いでどの国からの法律も及ばなくなった場所。
増え続ける住民に
内部はいくつかの地域に分かれ、それなりに治安の良い地区もあれば毎日死体が転がる地区もある。【東風】があるのはいわゆるスラムに近い区画。
安全とは言い
何にも縛られず自由気ままに暮らせる、それが九龍の何よりの魅力だった。
返したタオルを畳む
「
「どんなの?」
「東風って書いて眼鏡のイラストつける」
「ダサ…まぁ
【宵城】のタオルを眺める
一応は薬屋なのだから風邪薬だの栄養剤だのの
まぁ、最初にくるイメージが‘違法薬師’より‘眼鏡’のほうがマシなことは自明の理だ。
けれどそれだと眼鏡屋と勘違いされてしまうのでは…?いや、店に足を運んだ客相手に配るのだから何屋かはわかっているはず。となれば、アイコンは眼鏡でも別にかまわないのか…?
そんなことをとりとめもなく考えつつ手元に視線を落としていた
「てか
「猫?」
「
「
顔馴染みの
言うまでもなく
「いいよ、行く。いつもお菓子貰うし」
返事と共に首を縦に振る
本人は残っちまったから食えよなんて言うが多分もともと
おそらく
「え…?
違ったみたいだ。
自分はお菓子を貰えてなかったことに気付いて若干しょんぼりしている
ドアの
その隣に引っ掛けてあった傘を勝手に拝借し、雨に煙る九龍の街の中、
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