第十九話:会議


「それではここに連合を結成致します。今次キアマート帝国の侵攻に対して我々は一致団結をしてその脅威を振り払う事でしょう」



 ぱちぱちぱち



 少々まばらな拍手ではあったが本会議は議長であるベトラクス王国第一王子であるヒュネスの進行でその幕を下ろした。

 レベリオ王国を中心とした今回の連合は対キアマート帝国を想定して成立したが、それはアザリスタの水面下の働きで彼女の思惑通りになっていた。



「皆様の賢明なご判断に感謝いたしますわ。さて、早速ですが現在懸念されているアルニヤ王国についてですわ」



 連合が締結されてすぐに今後の方針が決められる。

 議会の中で既に連合軍が成立され、その総司令としてレベリオ王国の第一王女アザリスタが指名されていた。

 アザリスタはそれを快諾して、まずは侵略をされたアルニヤ王国の奪還を宣言する。

 これには既にベトラクス王国の軍隊もレベリオ王国の魔法騎士団を含め首都エンデバーを取り囲み膠着状態になっている。

 既にひと月近く籠城をしているも、キアマート帝国からの増援は来ていない。



 それほどまでにカーム王国侵攻での痛手が顕著であるわけだ。



「現在首都エンデバーでは入城したキアマート帝国の軍が籠城をしておりますわ。我が妹、ロメスタがベトラクス王国の皆様とその城を囲んでおります。流石に魔物が主体となる軍隊、通常の方法では開城は難しく、まずは城を奪還することが重要となってきますわ」


 アザリスタはそう言ってこの席に集まっている人々を見る。

 そしてゆっくりと見渡してから話を続ける。


「アルニヤ王国の貴族や一部兵、住民は我々側に逃げ出し、ロメスタが保護をしていますわ。今城に残るは王族を含む者たち。戦わずしてキアマート帝国に服従するなど王族の風上にもおけませんわ。私は彼らアルニヤの王族も同罪とし、アルニヤ城へ攻め入る事を提唱致しますわ!!」


 ぐっとこぶしを握りそう明言するアザリスタに各国の王たちは苦笑いをする。

 それもそのはず、魔法学園での一件は周知の事、女の恨みを買うと言う事の恐ろしさをまざまざと見せられた彼らは頬に一筋の脂汗を流しながら静かに頷くしか無かった。



「よろしいようですわね? ではアルニヤ城への進撃を致します。これにより防衛線をアルニヤ王国及びカーム王国に張りキアマート帝国の侵略を阻止いたしますわ!!」


 

 ぱちぱちぱち



 賛同せざるを得ないそのまばらな拍手であったが、これにて連合軍の初仕事が決まるのであった。



 ◇ ◇ ◇



『よくもまあ、あれだけ白々しい演説紛いな事が言えるもんだ』


「それも演出ですわ。各国の王族には既に我が妹たちが嫁ぐことが決まりましたわ。そしてその関係が強化されれば自国への安全性は上がりますわ。ここに水面下で協定を結び、カーム王国とアルニヤ王国を防衛線とすれば残りの国は協力を惜しむ事は無くなりますわ。カーム王国も奪還したアルニヤ王国も防衛線になろうとも後方支援があればそれに甘んじるほかありませんわ。そして我が国には海を高速で渡る術がある。これは南方国家に対して強力なアドバンテージとなりますわ!!」



 アザリスタはそう言って大きな胸をぶるんと震わす。

 ちなみに彼女は今あのビキニ姿である。

 いや、魔法騎士団は陸地でもあのビキニ姿に全員が成っており、連合軍では戦の女神たちと崇められ始めていた。

 それはリシェットやティアーラ、ルルシアたち幹部の婚期が遅れてしまう原因になると言うのはまた別の話になるが。


 そして今アザリスタの目の前には首都エンデバーの中央にそびえたつアルニヤ城があった。

 既に周りはロメスタが引き連れて来たベトラクス軍と合流した連合軍により包囲されている。

  

 

「使い魔たちにより城の内部の状況は分かっていますわ…… 生き残ったのは王族のみ、残りはキアマート帝国の兵と魔物たちばかり。そのキアマート帝国の兵ですら食糧不足で魔物たちに襲われ始めているとの状況、もう既にこの城には魔物しかいないと考えた方がいいですわね……」



 アザリスタの率いる魔法使いたちに城内の様子を調べさせた。

 当然使い魔たちには空を飛べるモノ、下水から侵入できる小動物もいる。

 そしてひと月も籠城した城の中の地獄絵図を目の当たりにして魔法使いたちは吐き気を催す者も出ていた。



「これは既に聖戦と同じ、魔物討伐ですわ。雷天馬、あなたのその知識を当てにしてますわよ!」


『ああ、魔物相手じゃ遠慮はいらねぇえもんな』




 アザリスタはそう言って手を揚げ総攻撃の命令を下すのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る