追放された魔法使いは孤高特化型魔法使い(ぼっち)として秘密のダンジョンと大食いに挑む
チョーカー
第1話 「普通の魔法使いは不要なのだ」
「ユウト・フィッシャー お前を追放する」
場所は冒険者ギルド。 依頼完了の報告を終えたユウト。
いつもなら、その場で解散となるのだが……
そこで告げられたのは、
「何を急に? それは本気で言っているのか?」
ユウトには心当たりがない。ただただ、困惑するだけだ。
それを
「我々はA級の冒険者になった。次は頂点であるS級冒険者を目指す。そのために必要なのは戦力強化――――
もう、普通の魔法使いは不要なのだ」
「なっ!」とその言葉にユウトは絶句した。
確かに彼等の
前衛 『
サブ前衛兼アタッカー 『
中衛 『
治癒師 『
そして後衛として――――
『魔法使い』 ユウト・フィッシャー
「た、確かに俺は、普通の魔法使いだけど、何年も仲間として――――」
「それは停滞だ。今の俺たちに必要なのは新しい風なのだ」
言い返せなかった。 それから気づいた。
ミカエルだけではない。 ケイデンも、レインも、エリザも、冷酷な顔をしている。
憐憫や同情よりも、軽蔑。見下すような視線を送る。
「そもそも、私は気に入らなかったのよ。女に守られて恥ずかしくなかったの?」
『高弓兵』のレインは、吐き捨てるように言う。
「なっ! それは仕方がないだろ、役割が決まってい――――」
レインは、ユウトの言葉を最後まで聞かない。彼の言葉を遮り、同じ女性メンバーであるエリザに同意を求める。
「エリザ、あんたも同じだろ。ジロジロと後ろから見て気持ち悪いって言っていたよな?」
「――――」とユウトは絶句した。
(後衛の魔法使いだからこそ、視野を広く。仲間を見て必要なタイミングで、必要な魔法を使って支援する。 それが、そんな風に思われていたなんて……)
「わかっただろ? これ以上、ここにいたらお前は余計に惨めになるだけだ。出す物を出して、もう帰れ」
「出す物……?」とユウトは心当たりがなかった。
「お前の武器と防具だ。お前が装備してるのは、仲間の共有財産……そう言う約束だろ?」
「くっ……」とユウトは、顔を顰める。
やがて覚悟を決め、長年使い、思い入れのある装備をミカエルに手渡す。
「あぁ、その古びた杖はいらない。今時、木の杖なんて新しい仲間には恥ずかしく渡せないからな」
相棒と言える魔法の杖は、そんな理由で返された。 酷く惨めな感じになる。
「次の仲間は
「まだ若い女子なのに凄いよね。早くダンジョンに行きたいわ」
「……」と今まで一言も言葉を発していなかった『
無口な彼も、笑みを浮かべている。
もう、誰もユウトのことを見ていない。 彼等にとって、ユウトは忘れたい昔の仲間になったのだ。
それに気づいた彼は、無言で冒険者ギルドを出ていくしかなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「これからどうするか……」とユウトはため息をついた。
幸いに今回の依頼報酬までは取られなかった。A級冒険者の報酬は多い。
(節制をすれば、1か月……いや、2~3か月は冒険に出なくても食べていける。貯蓄も考えれば……)
しかし、長年の習慣とは恐ろしい。ふらふらと自然に足が向かう先は、冒険者ギルドの近くにある食堂だった。
騒がしい店内。 いつも通りの料理の注文をするも、
「何でもいい酒を1つ」と普段、飲めない酒を追加した。
それからしばらくして――――
顔を赤く染めたユウトは机で寝るように頭を伏せた。
「畜生……なんで俺が……」が恨み言が自然と口に出る。
そんな時だった。
「話は聞きました」と向いの席に誰かが座った。
誰だろう? と顔を上げたユウトは少し驚いた。
「メイヴ、君か……」
「あなたが追放されたと聞いた時は耳を疑いました。その様子では本当だったのですね」
彼女の名前は、メイヴ――――メイヴ・ブラックウッド。
ユウトが友人と言える数少ない
そう……メイヴはエルフだ。それも剣士――――魔法適正が高く、弓矢が巧みなエルフ族にしては珍しい剣士。
一見すれば、触れれば折れてしまいそうな細い腕に見える。しかし、長寿であるエルフ族が学び、身に付けた技術を侮ってはならない。
彼女は、力自慢の冒険者でも軽々と投げ飛ばしてしまうほどに洗礼された体術を有している。事実、彼女を口説こうとして、投げ飛ばされた男を何人もユウトは見てきた。
なんせ、彼女はS級冒険者だ。
「店主、酒を。彼と同じものをいただたい……なんです、ユウト? コップの半分も飲んでないのに酔い潰れているのですか?」
そんな彼女が少し怒っている。席につき、出されたアルコールを一気に飲み干してみせると―――――
「あなたの頭目は愚か者ですか? 戦力強化? 後衛魔法使いが2人いれば良いではないですか!」
「まぁまぁ(なんで俺が宥める側になってるんだ?)」
そう思いながら、自分の事ように怒ってくれるメイヴに救われる気持ちもあった。
「仕方がないさ。女性陣にも嫌われていたみたいだし……」
「それは……」と彼女は言葉を濁した。彼女には心当たりがあった。
(さ、流石に言えませんね。私が彼女たちと、何度か対立していたことがあるなんて……)
ユウトが知らない所で、彼女はミカエルたちにユウトの待遇の悪さに対して、苦言を呈していた。
メイヴは外部の人間だ。本来なら
この町で彼女の言葉を無下にできる冒険者はいない。
そして、何より――――彼女は美しかった。
(それはきっと……彼の背後にいる私への嫉妬もあったのでしょう)
だから、彼女も責任を感じていた。
そんな時だった。
「注文のポークステーキ……できたよ」とテーブルに料理が運ばれてきた。
しかし、その料理は――――
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