53:金髪美人
英国情報部戦略チームが「冴内招致作戦計画」を実行段階に移している一方、冴内はここのところずっと肉続きだったので魚を食べたくなり焼き魚定食を食べていた。
昼食後いつも通りのんきにお茶をすすっていたところ金髪碧眼の美しい女性シーカーがやってきた。「冴内様ですね?シーカーよろず相談掲示板で馬具をお求めだということを知ってきました、シーラ・ウェストンといいます」
「はッはいッ冴内 洋です!このたびは・・・えーと・・・馬具を求めてます、ハイ・・・」美人を前にしてうまいこと何か言おうとして「このたびは」と言ったまではいいが、後に続くいい感じの言葉が思いつかず、結局馬具を求めていると抜かす自分自身の情けなさにつくづく辟易しつつも、一応答えとしては間違ってない言葉を返した。
「我が国の誇る馬具職人ならば冴内さんの期待に応えられると自信をもってお伝えしたく参上いたしました」
この人は例のゲート会話ではなく、ちゃんと日本語で話をしているというのが分かった。すごく日本語が上手だ。すごく美人だ。結婚したい。
思わず本音が出た。(心の中で)
「シーラさんはどちらの国の方なんですか?」
「失礼しました、私はイギリスから来ました、冴内様が壁画を発見なされたため、その調査団の一員としてやってきました」
決して冴内が発見したわけではないのだが、言うても単なる偶然なのだが、美人にそういわれて否定するのはジェントルマンの振る舞いじゃないと、極めて都合よく解釈した冴内はそこはスルーして、なんでもいいから好印象をもってもらえるための言葉を返そうと懸命に考えた。
「イギリスは乗馬の歴史がスゴいですよね!馬具も世界チャンピオンだ!」
歴史がスゴイという言葉をチョイスすること自体も凄いが、言うに事欠いて馬具が世界チャンピオンなどとという意味不明な言葉を発する冴内自体もたいがい何かのチャンピオン級である。一応誉め言葉としてはなんとか許容できる範囲なので、シーラは「冴内様に我が国の伝統を誇る馬術の歴史をお褒め頂き光栄ですわ」とまさに一流スナイパーのワンショット・ワンキルのように狙った男性をイチコロにする笑顔で微笑んだ。
「いやぁそんな、自分は乗馬のことなんてまるで素人ですから」と、いまや茹で上がったゆでだこのような顔の冴内。
「いえ!そんなことはありません!冴内様の見事な乗馬技術!私も動画で何度も拝見いたしました!馬具をつけていないユニコーンを見事なまでに操るそのお姿!間違いなく冴内様こそ乗馬のチャンピオンです!ユニコーンがペガサスに生まれ変わったのも冴内さんの力に間違いありません!」
「動画の中で冴内様がユニコーン達の群れに向かって別れの挨拶をするシーンではその美しい光景に涙があふれました。今、思い返しても感動で涙があふれてきそうです」
賢明なる読者の皆様お察しの通り、シーラ・ウェストンは英国情報部戦略チームに所属するシーカーである。彼女自身の能力は鑑定士で、現在レベル5である。鑑定士のレベルは現段階でレベル10が最高位であり世界で600人程存在する。日本国内でも毎年500人程のシーカーが誕生し、それが80年も続いているので国内だけでも単純計算で4万人程のシーカーが存在する。その中で鑑定士のスキルを持ち、さらにレベル10でなおかつ現役の鑑定士ともなるとその数はごくわずかだ。日本国内においては毎年1~2名の鑑定士が誕生するが、レベル10の現役鑑定士は鈴森を含めて13名であり、これは世界的にみてもトップレベルで多い。
鑑定士は様々なアイテムやシーカーのギフトを鑑定することでレベルアップしていき、早い者では10年、遅くとも大体20年ほどで現在の最高値レベル10に達する。シーラは3年でレベル5という異例の早さとその美しい容姿から、すぐに英国情報部にスカウトされた。
さらに付け加えるとシーラは英国ストーンヘンジ・ゲート局長サー・アーサー・ウィリアム3世の親戚にあたる。当然一連のこの流れは英国情報部戦略チームによる「冴内招致作戦計画」のシナリオの一部である。
ゲートの内と外では一切の通信が出来ないため、これらの模様を盗聴することは出来ないが、シーラならばこちらの期待に応えてやってくれると、サー・アーサー・ウィリアム3世並びに英国情報部員達は信じていた。それはもう、ものの見事に期待以上の成果を打ち立てていた。
悲しいかなそこはそれ、冴内も一応一人の成人男子なのである。
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