44:村デビュー

 お互いに食休みを十分とった後、なんとなく互いにそろそろ行くかという雰囲気になり乗馬した。今回は1回でうまく飛び乗れたた。


「昨日別れた時間まで森の中をあちこち案内してくれるかい?」と話しかけてみたら、果たして理解してくれたのか分からないがヒヒーン!と嘶いて駆けだした。


 見事な滝や、恐らくこの辺りの森で一番樹齢のありそうな大きな木、一面極彩色に彩られた花々、気持ちよく入浴出来そうな温泉など、ユニコーンは色んな景色を見せてくれた。当然それらの素晴らしい景色は携帯カメラで録画している。


 ひょうたん型の大きな梨のような果物がいっぱい実っているところでは、もぎ取りやすい位置に立ってくれたのでリュックに詰めるだけとった。一つかじってみると爽やかな甘さとみずみずしさが口いっぱいに広がり、あまりにも美味しいのでついつい行儀悪くむしゃぶりついてしまった。ユニコーンもむしゃむしゃウマそうに食べた。


 そうしてあちこち案内してくれた後で「おっと、そろそろ戻らないと」と言うと、クルっと反転して勢いよく駆けだした。木をすり抜け岩を飛び河を飛び笹薮を飛び森の中を凄まじいスピードで駆け抜ける。


 笹薮を大ジャンプしたときにユニコーンがサッと頭を低くして木の枝を間一髪くぐり抜けたが、自分は突然目の前に現れた木の枝を交わすことが出来ず木の枝と激突して身体がくの字に折れ曲がり「げぇっ!」という声とともに笹薮クッションに落下。ユニコーンはものすごく申し訳なさそうにペコペコ頭を下げていた。


 そんな調子ではあったが午後3時前に良野・木下コンビの元に到着。昨日と違って今日は二人の目の前までユニコーンと一緒に着いた。二人ともかなりビックリ仰天していた。携帯の待ち受け画像にしたいくらい見事な驚きっぷりだった。


 荷物がなければ3人乗れそうだが皆リュックを背負ってるし、さすがに自分だけ乗馬して帰るのは気が引けるので3人と1頭が全員「駆け足」で帰ることになった。さぞや異様な光景だったことだろう


「冴内君!冴内君!この子ゲート村までついてくる来るつもりなの!?」と良野さんが言うので、

「はい、これからはずっとついてきてくれると思います。今日、家族全員に別れを告げてきました」と応えるとユニコーンもヒヒーーーン!と一緒に応えた。良野・木下コンビは「えぇぇぇーーーーッ???」と一緒に声を上げた。二人とも見事なシンクロで師弟コンビはうまくいっているようだ。


 ゲート村に3人と1頭が到着すると、周囲にいたシーカー達が一度は無表情でこちらを見たかと思いきやすぐに振り返って二度見して仰天した表情を見せた。皆見事な驚きの表情をするので是非とも携帯の待ち受け画像にしたかった。


 今日はレベルアップしなかったのでプレハブ小屋にはいかず3人で換金所に向かった。最初に木下さんが換金している間、自分はリュックの口をあけてひょうたん型の梨のような果物を取り出し、これ良野さんと木下さんにお裾分けですといって見せていたら頼むから1個でいいから換金させてくれと換金所の人が頼み込んできた。


 大きいので6個くらいしか持ってこなかったけど、さすがにそこまで頼まれたら1個は渡した方がいいかと思って渡した。


 ちなみに機械にかけたら次の通りの結果だった。


-------------------

果物(?)・・・新種のため鑑定不能

-------------------


 換金所から出ると案の定大勢のシーカー達がユニコーンを取り囲んでユニコーンを眺めたり携帯のカメラで撮影していた。もちろん全員がユニコーンを刺激しないようにある程度の距離を取っていた。


 そういえばコレ・・・・どうすればいいんだろう・・・事ここに至って、ようやく事の重大性に気が付いた冴内だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る