5:初めての狩り

「ここから歩いて15分程の草原に薬草が生えているのよ」

「薬草ですか・・・」

「えぇ、だけど薬草のある草原にはイノシシが出るの、薬草はイノシシの好物でもあるのね」

「なるほど」

「定期的にイノシシを駆除しないと薬草が食い荒らされるからイノシシ退治は結構大事なことなのよ」

「えぇと・・・自分、格闘技の経験とか全くないし野生動物の狩りとかやったことないんですが・・・」

「ああ、それも含めて適正を見るんだ、ただ冴内君のチョップの攻撃力ならイノシシに対して十分な効果があるのは間違いない」

「そうなんですか?」

「ああ、後は恐怖心だけだ、最初に自分がやってみるからそれを手本にやってみてくれ」

「分かりました・・・」

「安心して、もしもケガをしても私がすぐに治してあげるわ」

「冴内君、良野(よしの)さんは回復魔法が使えるんですよ」

「回復魔法ですか!?」

「えぇついでにあらかじめ痛覚軽減魔法もかけてあげる」

「そんなのもあるんですか!?」

「良野さんも力堂さんもスゴ腕ですから冴内君も安心して下さい」

「分かりました、頑張ります」


 他にもあれこれ話しているうちに目的地についた。

「おっいるいる、まぁ本来ならいると困るんだがな」

「お・・・大きいですね・・・」

「なぁに一匹倒せれば恐れも徐々に小さくなるさ、さて、本来なら盾と剣で戦うのがオレのスタイルなんだがイノシシ程度なら素手でも倒せる、冴内君でも十分通用すると言ったことを証明するよ」

「分かりました、お願いします」

「よし!オレの動きを良く見ててくれ」

「はい!」

「行くぞ!」そうして力堂さんは盾と剣をその場に置いて素手でイノシシに向かっていった。


力堂さんは全く力んだ様子もなく・・・

目にも止まらぬ速さの動きでもなく・・・

いとも簡単にイノシシをたった一発の手刀で倒した。


「こんな具合だが・・・分かったか?」

「はい・・・えぇと・・・こう・・・ですか?」と、動きだけをマネしてみた。まっすぐ突進してくるイノシシをイメージし、ぶつかる直前に身体を右に円を描くようにスライドしてイノシシの首元に手刀を叩き込む。

「そうだ、その動きだ、それが体裁きの基本だよ」力堂さんがイノシシ役を演じてくれて、何度かその動きを練習する。その際、足の位置や腰のひねり具合などを修正してもらった。


「あそこにもう一匹いるわよ、今のよりも小さいわね子供かしら」

「ホントだ、あれなら小さいし最初の相手にはいいですね、どうですか冴内君、やってみますか?」


「はい!やります!」


 かくしてゲートにおける人生最初の狩りが始まった。

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