54枚目『鉛色を突き抜けて ―旅の途中・ラベンダー―』

 心落ち着く香りを放つ、紫色のラベンダー畑。鉛色なまりいろの低い空の下では、すこし窮屈そうに見える。この花には今の季節は似合わない。次に来る季節の方が紫色の花に似合うのだ。


 次に来る季節は、夏。


 ジメジメしたながあめはこれから来る夏に吹き飛ばされる。抜けるような青空と入道雲が今は待ち遠しい。


 夏へのを膨らませていると、湿った風が吹き抜ける。その風には少し暑さが宿ってきた。鉛色のトンネルを抜けるまで、もう少しだ。

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