第4話 やばいスキル
「えっ、四辻やばくね?」
「フルフェイスで全身真っ黒の男に言われたくない!」
四辻のスキルを聞いた俺のリアクションである。何せこの子のスキルの名前は【火遊び大好き】だからだ。杖を握ると火球を飛ばすことが出来るらしい。
「よ、四辻は放火とかするの?」
「しないわよ! 私は焚火とかが好きなだけだから!」
それだけで【火遊び大好き】なんてスキルは手に入らないと思うぞ!! 絶対やばい奴だろ!!
「で、成金マンのスキルは?」
「俺のスキル? 俺のはいいよ……」
「ずるい! 言いなさいよ!!」
四辻が杖を構える。目が笑っていない。
「俺のスキルは【成金パンチ】だ……」
「えっ、あれってスキルの名前だったの!?」
「そうだ……。ちゃんと口に出して言わないと発動しない……」
「あはははっ! アン○ンマンみたいじゃん!」
確かに……。
「成金パンチはどんな効果があるスキルなの?」
杖を下ろした四辻が瞳を輝かせている。そんな顔をされたら言うしかないだろ。
「……手に持ったモノの値段を攻撃力に変換出来るスキルだ」
「えっ! 高いモノで殴ったら、大ダメージを与えられるってこと!?」
「そーいうことだ。ちなみに今手に嵌めている腕時計は150万ぐらいする」
四辻の顔が固まった。
「成金マン……。本当に金持ちじゃん」
「まぁな」
「ひー! 否定しない! その余裕が憎い!!」
「やめろ! 火を出すな!」
本人は冗談のつもりだろうが、杖の先からちょっと火が出ている。コートに燃え移ると俺が死ぬ。
四辻を鎮めながら歩いていると、駅が見えてきた。タクシー待ちの行列が出来ていることから、電車は動いていないようだ。
「電車ダメみたいね……。成金マン、車はないの?」
「ずっと引き篭もってたから、ない」
「えぇぇ! 車って金持ちアイテムの一つじゃん!」
「俺は部屋の中に並べられるアイテムが好きなの!」
しかしどうしたものか。レンタカーでも借りるか? それともタクシー待ちの列に金を握らせて順番を譲ってもらう? いや……それは流石に成金ムーブ過ぎるなぁ──。
ドゴオンン!! と何かがぶつかる音が響いた。思考が中断され顔を上げると、歪な形の車が宙を舞っている。
「わあぁ! こっちに来る!!」
四辻は素早く退避した。妙にゆっくりと映像が流れる。これ、直撃したら死ぬな。
そう思うと急に身体が動き始めた。しっかりとロレッタス・サブマリーナを握り、腕を引く。そして──。
【成金パンチ!】
ドバンッ!! と車を殴り返した。面白いように車が飛んでいく。そしてその先には……。
「ブモォォォオオ!!」
体長が三メートルはありそうな牛の頭をした人型のモンスターがいた。ミノタウロスだ。
全く次から次へと、どうなっているんだよ!
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