第6話 そのメイド『対決』
「何故……ヴィアトリカの両親を殺害したの?」
「ビンセント家は先祖代々、悪魔払いを
年代とともに悪魔払いが増え、同胞の数も減り、このままでは滅んでしまう。そう考えた私は、悪魔払いの撲滅に乗り出しました。
気が遠くなるほどの長い年月をかけ、悪魔払いを
その日は、ヴィアトリカお嬢様にとっては父親に当たる、ビンゼント家の前主、ゲイリー様主催のパーティーがこの屋敷にて開催されていました。親しい友人知人らを招いてのパーティーだったのですが、中には十年近く顔を合わせていなかった友人らの姿もあり、ゲイリー様はよほど気分を良くしたようで、いつもよりも多くお酒を召し上がっていたのです。そう、私が予め、ゲイリー様が召し上がったお酒に眠り薬を仕込んでいることも気付かずに……
私はすぐさま実行に移しました。家の者が寝静まるのを待って、灯りが落ちた寝室に忍び込み、ひとつのベッドで肩を寄せ合い、幸せそうな顔をして寝入っているビンセント夫妻に近づきそして……
ビンセント家が、最後の悪魔払いでした。なので夫妻を殺害し、ヴィアトリカお嬢様までも手にかけようとしたのです。結局それは、予想外の邪魔者が介入したせいで破綻してしまいましたが」
「それって……」
話を聞いて、はっと何かを感づいたミカコだったが、ジャンの様子がおかしいことに気付き、口を
「そこから先は、あなたには知る必要のないこと……私の正体を見破られた以上、あなたを生かしておくことは出来ません」
不敵な含み笑いを浮かべたジャンが、
「ご覚悟は、よろしいですか?」
徐に左手首を掴むミカコの右手首を掴み、冷酷に宣告。
「……っ!ああぁぁぁ!!」
ミカコの右手首を掴むジャンの手から、強力な闇の魔力が放たれ、ビリビリとした激痛が全身に走り、ミカコが悲鳴をあげる。
「闇の魔力が強力過ぎる故、
階段の踊り場に倒れ、身動きが取れなくなったミカコを見下すジャンが残酷にそう告げた。
「このまま放っておいても死ぬでしょうが……それでは時間がかかってしまう」
徐に腰を屈めるとジャンは手を伸ばし、ミカコの首筋に触れる。
「今すぐ、楽にしてあげましょう」
残酷な雰囲気を纏い、ジャンがミカコにトドメを刺そうとした。その時。ビンセント家の紋章入の銀色のナイフが三本、ジャンめがけ飛んできた。
「……これは一体、なんの真似です。ミセス・ワトソン」
飛んできた三本のナイフを、咄嗟にガードした左腕で受け止めたジャンが静かに尋ねる。ジャンが、眼光鋭く睨めつける階段の頂上に、悠然と佇むロザンナの姿がそこにあった。
「これは失礼。気分を悪くされたお嬢様に食事を差し入れる途中だったのですが……うっかり手が滑ってしまいました」
わざとらしく言い訳をしたロザンナに、ジャンは左腕に刺さったナイフを全て抜き、いつもの冷静さで以て指摘した。
「私にはとても、うっかり手が滑ったように見えませんがね。それに……カトラリーとは元来、食事をする際に用いられるもの……人に向けて投げるものではありませんよ」
「心得ております。緊急事態につき、やむを得ず使用したこと、お許しください」
そう言って、ロザンナは胸に片手を添えて恭しく頭を下げる。
「緊急事態……そう言えば、あなたもぐるでしたね」
徐に立ち上がり、ロザンナと対峙したジャンが冷ややかに口を開く。
「知っていたのでしょう?私の正体を……いつから、気付いていたのです?」
「あなたが
「なら何故、私に手を下さなかったのですか。あなたほどの実力者なら、悪魔の私を消すことくらい
「確かに……ですが、私の力では、根本的な解決に至りません。悪魔討伐はやはり、その専門職に就く者でなければ解決しないのです」
専門職に就く者……
ロザンナからの返答を受け、ジャンは背にする
「神仕いをこの屋敷に招き入れたのは……あなたですね」
鋭いジャンに、ロザンナは不敵な含み笑いを浮かべる。
「その通り。ヴィアトリカお嬢様のご両親が殺害されて早二年……そろそろ、あなたがお嬢様殺害に動き出すだろうと推測し、先手を打たせていただきました」
「それで臨時のメイドを募り、ミカコを屋敷に招き入れたのですね。神仕いが、女性であることを知っていて」
「ええ」
「あなたはよほど、頭の切れる
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