奴隷堕ちした元ツンデレ貴族令嬢の幼馴染が売られてた~今度は全人生をかけても俺が幸せにします~

森 拓也

第1話 プロローグ

 ◇初投稿です。しばらく連続投稿します。


 俺はセンターギルドの受付にいる

 

 依頼のあった郵便物を受付嬢に渡す


「お疲れ様です。ギドラの支部長さんからですね、リヒトさんありがとうございました!」


「どういたしまして」


 ギルドを出ると広場から声が聞えてくる


「続いての商品は!西大陸のバンク帝国からの輸入品!元貴族令嬢だぁぁー!」


 奴隷堕ちした貴族がオークションに出されるのはかなり珍しい

 一体どんな悪事を働いたのか……


 興味を持った俺の足は広場に向かう


「二年前に!婚約者だったアトラ公爵の兄を殺したぁ~、殺人貴族のぉぉ~~」


 婚約者の兄殺し、とんでもない女もいるんだな


「ソーレだぁぁ!!」


 ん?ソーレ?

 疑問に思っていると檻おりにかぶさっていた布が黒服によって豪快にめくられる


 すると――


「人殺しーー!」


「帝国のクズがぁーー!」


 観衆がこれでもかと罵声を浴びせる――が、そんな声が聞えないほどに俺は動揺していた


 ステージの上にいる金髪で、碧眼で、華奢な体で、ボロボロの服を着て、左目が髪で覆われている少女は――


 ――ソーレだ


 八年ぶりに見たが、その少女は間違いなく俺の知っているソーレだった


 何で……だ?貴族として、貴族と、幸せな結婚をしているはずじゃ


「左目は欠損!それ以外に目立った傷はない!ランクはDだぁぁーー!」


 まともに頭が動かない中、競売人の威勢のいい声が耳に響く


 ますます意味が分からない、左目が欠損?ランクがD?


「規定により!スタート価格は1000万モルからだ!さあ!」


「1550万だ!」


「1700万出すぞ!」


 都市には貴族が多い、金を持っている奴は大勢いる


「2500万だ!」


「状態は悪いが貴族だ!さあ!もっと!もっと!」


「3700万!」


「4100万!」


 競売人がまくし立てる度に金額はどんどん上がっていく


「……1億」


 場が静まり返り今まで一度も口を開かな買った老人が腰を上げる


「1億出そう」


「おぉぉーーっと!ランクDの一億越えは前代未聞!これはもう決まりかぁぁーー!」


 競売人がまくし立ててもこの値段になればもう手を挙げるものはいなかった


 1億、1億、くそっ、俺は、どうすれば……


「それでは他に希望額がある方は!」


 どうすればいいんだっ、このままじゃ、ソーレは!


 その時――、混乱した俺の瞳に映った彼女は酷く怯え、震えていた……


 よく考えろ、俺!このまま何もしなければどうなるのか、今すべき事は悩むことじゃないっ、迷うな!


「では!1億で落札決定といたしま――


 かけ声とともに落札決定の木づちが振り下ろされる瞬間


「一億五千万出す!」


 俺の声があたりに響く

 ドクン!と心臓が跳ね上がる

 手の震えが止まらない


「おぉーっと!まだ上がるぅ!」


 競売人がより一層声を張る


 腰を上げた老人がこちらに近づいて来る


「他に希望額のある方は!一億五千万以上はいないのかぁ~!」


 競売人がまくし立てる中老人が俺の正面に立つ


「それでは!」


「待て」


「……」


 老人の一言で競売人は押し黙るが、観客は未だざわついている

 変装しているようだがこの振る舞いは間違いない……高位の権力者、だな

 ゴクン、と唾を飲み込んだ俺も面と向かって立つ


「見たところ冒険者のようだが……一億五千万、本当に出せるのか?」


 鋭い眼光が突き刺さり地獄のような底冷えの圧力をかけられる

 手の震えが体中に広がっていく

 この気迫、やはりただ者じゃない……


「……確かに今の俺にはそんな大金はありません」


「ふざけてんのか?」


 更に増した気迫に屈しそうになる……でも、、引けない!


「債権書に調印します!」


 俺は震えをかき消して声を上げた

 予想とは違う返答だったのか老人は少し意外そうな顔をしている


「正気かぁ?……その書類に調印して返済できなかった場合、お前を待っている未来は奴隷に堕ちること以上の地獄だぞ……それを覚悟の上での発言か?」


 そんなことは百も承知の上だ!

 覚悟ならもう……決めている!!


「それでも、俺は絶対にソーレを諦めません!」


「そう言えば俺が引くと思っている……その目が気に入らねぇな」


 老人は目を細める


「なら、あなたも調印しなければいけない額まで俺と競り合いますか?」


「ランクDの粗悪品にそこまで執着するとは……もういい、話は済んだ」


 流し目に競売人を見た老人は人混みの中に消えていった


「では!一億五千万モルで落札決定だぁぁーー!!!」


 勢いよく振り落とされた木づちとともにオークションは終わりを告げた








 ◆◆


 同時刻――とある屋敷


 椅子に座っている初老の男に執事が紅茶を渡す


「結局……あの事件は奴が仕組んだことだったか」


「ええ、そのようでしたね」


「ソーレの所在はつかめているか?」


「今は東の王国にいるようです。情報によると左目を欠損しているようですが……いかがいたしますか」


「その程度なら高度な回復魔法を使えば治せる……今すぐソーレを連れ戻せ」


「かしこまりました……」


 命令を受けた執事は部屋を後にする

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