祭りだワッショイ!

「受付の名前ならエリーだろ」

「何で?」

「いや、何となく」

「あっそ」


 ここはとある場所にある、絆ONLINE運営チームの仕事場。サービス開始より対応に追われ続けた日々も、ようやく落ち着いて余裕が出始めたころ


「ぶふぉ! 何て引きしてやがる!!」


 とあるプレイヤーの課金ガチャの結果に、思わず叫んでしまう


「どしたー、何かあったか?」

主任チーフ、自爆と大爆発を引き当てたプレイヤーが出ました」

 その言葉に部屋中がどよめく

「マジか」

「ダメージ算出、大丈夫だよな」

「祭りだな!」

 若干1名おかしな人物がいるが、全体的に不安な空気が流れる


「うわあぁアあ!」

「おい、何て声出してんだ!」

「主任、この子……幻想種族のチケットまで引いちまった」

 おいおいおい、もはや幸運なんてもんじゃない豪運だな


「お、受付にクレーム入れた子か」

「クレームというより感想ですけどね」

「まあ、どれも最初から仕込んでいたんだ。騒いだところで今さらだな」


『あ! 見つけた、これにしよう』


「精霊か」

「精霊ですね」


「──わりと堅実的な行動してんなあ」

「他の幻想種プレイヤーが、ぶっ飛んでんじゃない?」

「だよなあ」

「おお、工作始めた」

「生産職でもやっていけそうね」


「──ほう、石ころを尖らしたか」

「上手く、戦闘にも取り入れてますね」

「マザーが誘導したみたいだけど、許容範囲かな」


『あいむういなー!』


「勝ったか」

「進化は見送るようですね」


 ─◆─◆─◆─


「あー、泣いてるよ。主任のせいですね」

「俺かよ! お、おお進化するみたいだぞ。立ち直ったか、良い子だよ」


『ふはははは! 圧倒的ではないか、我がステータスは!!』


「うっすら感じてたけど、この子って同士じゃない?」

「だよなあ、アレいっとく?」

「せーの、ジ~ク(溜めてる)」×2

「おい、やめろ」

「主任も好きなくせに」

「それ以上は言わせないぞ! それに俺は黒鉄くろがねの魂派だ」

「か~、スーパー系ですか。年齢層が高めの」

「うるさい!」

「男どもって、ホントにバカ」

「そういう君もショタ推しの……」

「何か?」ギロッ

「ひぇ、何でもありません。ん? マザーから申請が来てるな」


「──面白い!」

「いや、確かにそうだけど性質を得るという事はモンスターの能力を使えるという事ですよ」

「それは、ヤバい」

「説明文には身体より小さい物と書いてあるんだ。今の大きさなら、たいして取り込めんだろ」

「不都合が出ないように、今度の大型アプデでこそっと調整しましょう」

「特殊能力系のスライムより、ただただ大きくするヒュージ系のほうが最終的に強くなるんだよなあ」

「今のところ、ヒュージ系を育成しているテイマーはいないな」

「序盤では弱いからな」

「妖精郷のモンスターなら、取り込まれてもマスコット的な扱いにしかならんだろ。マザーの申請を……え、もう許可出したの?」


「ウサギさん、かわいい」

「モッフリャーもなかなか」

「うん? ここで、ログアウトか」


『ワールドアナウンスをお伝えします、放浪の地竜が妖精郷に現れました。エリアボスが地竜アースガルドに変わります』


「……おい」

「大丈夫です。身体より小さいものじゃないと取り込めませんから」

「そうじゃねえ! これで、あの子は妖精郷から出られなくなっただろ。アースガルドは準ラスボスだぞ」

「あ」

「あ」

「誰だよ~、強ボス放浪させようて言ったの」

「追及は後だ。どうなると思う?」

「泣くな」

「泣きますね」

「泣くんじゃないかなあ」

「だよなあって、そうじゃなくて対策だ」

「現状、トッププレイヤーでもアレは無理です」

「となると移動待ちか……放浪パターンは?」

「精霊力の強い場所に惹かれるだっけ? あ、オワタ」

「この世界の竜は、そう設定されているからね。縄張り争いまで起こるよ」

「……デバッグ班にベータテストん時のキャラ持ってるやつがいたな。そいつを出動させる」

「ええ~、それは……」

「最終手段だ、しばらくは様子を見る」


「主任……」

「何だ?」

「たった今、魔王の因子を持つプレイヤーが誕生しました。しかも幻想種です」

 は? 国内に1人出るか出ないかの確率だぞ。しかも幻想種だと


「祭りだな!」

「ワッショイ!」(ヤケ気味)


 運営チームの祭りフェスティバルは続く




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