最終話 廃ラブホテル 後編

 次の日、車で1時間ほどかかる神社に俺達は会社を休んで向かった。


 そこで神主に事情を説明し、お祓いをしてくれる事になったのだが、神主に次の様な事を言われた。


 難しい言葉を使っていたので、よく覚えてはいないのだが簡単に説明すると、神主には幽霊を祓うという事は出来ないという事だった。じゃあ誰がお祓いするんだよ!と思うかもしれないが、神主が神様に俺達の願いを話して解決してもらう、という事だそうだ。


 つまり神主は『神様の仲介者』と考えてもいいのだと思う。神社によっては対応が違う事もあるそうだが、俺達が行った神社ではこういった対応をしているらしい。


 とりあえず神主にお祓いをしてもらったが、最後に神主に心療内科のカウンセリングを勧められた。決して俺達の事を馬鹿にしてるとか、そういうわけではなかったんんだが、その時は無性に腹が立った――



 結局、神社でのお祓いも効果があるはずもなく、女は篤にずっと付き纏っている状況が続いた。日に日にやつれていく篤の為に、ネットの情報で『幽霊を祓う方法』とか検索してやってみた事もある。


 分かっていた事だけど、全く効果なんてない。


 正直、俺は篤に憑いている女の姿が見えなかったし、あの廃ラブホテルで感じた視線が気のせいだったのかもと思い始めていて、神主の言う通りに篤を心療内科に連れていこうかと思っていた時に、事態は思わぬ形で終息を迎えた。




 篤には3つ上の姉がいて、俺も何回か会った事があるのだが、この姉もなんというか心霊好きなのだ。たまに篤のアパートに来ては、心霊の話をしに来るくらい仲の良い兄弟だ。


 そんな姉が篤のアパートを訪れると、篤の様子が可笑しい事に当然気付き、何があったのかを聞いてきたので篤は事情を話した。


 すると、篤の姉に自称霊能力者の友人が居るらしく、その人に相談に行くことになった。


 事情を聞いた自称霊能力者は特にお祓いをするわけでもなく、篤に透明な3センチ程の玉を、10個巾着袋のような物に入れて渡してきて、


「今日から1週間、今渡した物を肌身離さず持っていなさい。そして、1週間後に私の所に持ってきなさい」そう言われたそうだ。


 その日から不思議な事に篤は金縛りや女が現れる事もなくなり、夜もしっかり寝れるようになった。


 1週間後、姉に付き添われて自称霊能力者の所に向かう前に、渡された中身がふと気になり中を見ると、渡された当初は透明だった玉が7つ真っ黒に染まっていたという。


7つ…想像でしかないが、1日1つづつ黒くなっていったのではないだろうか。


 その後、自称霊能力者に返した時にそれの中見を見た自称霊能力者は、渋い顔をして「まだ駄目みたいね」と言いお守りを渡してきた。


 今でも篤はそれを肌身離さず持っている。それ以降、篤の周りに女が現れる事は無くなった。


 ◇


「今でもまだお守り持ってるのか?」


「持ってるよ。1年に1回あの霊能力者に会いに行ってお守りを交換してもらってるんだけどさ、「まだ駄目ね」って言われるんだよな」


「つまりまだ近くに居るってことか?」


「怖くて聞いてない。でもさ、その霊能力者に1回「あなたは結婚できないでしょうね」って言われたんだよな…」


「確かに篤は彼女できてもすぐ振られるもんな」


「そうそう。こんなに魅力的なのにおかしいよな?」


「彼女の相手もしないで休日は動画撮影、そんなんじゃ振られてもしょうがないだろ」


「これが俺の生きがいなんだよッ!!…ちょっと話過ぎたな。そろそろ心霊検証でもするかッ!」


 この後も俺達は心霊の動画配信を続け、数年後には登録者数100万人を超える動画配信者となるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 作者ゆりぞうが体験した思い出深い話は以上となります。

 何か質問とかありましたら、答えれる事は答えますので気軽にコメントにお書き下さい。

 最後になりますが、ここまで読んで下さり本当にありがとうございました。





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