第20話

「完璧じゃないですか」


もう長いこと、何かの犯人、というものを見聞きしません。しかし。


 魔女は視線を道端へ。そして絨毯、空へ。


魔術界の方の魔術はぜったいで。警察もまた必要とはいえ平和なこの時代。わたくしめのような仕事の者は、皆どこか、居場所を無くしております。


 そっか。

 この世界、国、夢のことはわからないけれど、引っ越し屋さんとか、レンタル家電とか、街のパトロール隊のご近所さんとか。人々には役割がある。

 林檎は一つだけ貰うことにした。よく磨かれていてピカピカだが、スーパーの林檎は磨かれていないし、余計に怪しい。

 魔女の林檎。


これだけのもの、術式を用いて皮を剥くのも、もう憂鬱です。おまけに、


 絨毯の上の家具が揺れて擦れそうになる。


……今のように荷物の、お客様のものに傷をつけないようにせねば。


 魔女さん、お疲れ様だね、お疲れ様。

 私は別れを告げて、アパートのドアを開けるが。

 向こう側の街並みの景色が見えるだけだった。

 まだあるのか!ここでもか!

 向こう側は私を笑うように、ただアパートのドアと四角い枠で区切られている。

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