第 話
「もうすぐ、夏だね」
「うん。…あれ?夏ってそんなイントネーションだったけ?」
「?そうだよ」
おかしいな?夏、夏、夏、?
夏、なつ、なつ、なつ。
まだおかしい。
「どうしたの?」
なつ、なつ、なつ……?懐?
その瞬間、俺は全てを思い出した。
「…!」
「どうしたの?泣いてるよ」
「懐、懐!」
「え?」
「思い出した…!」
「何を」
「ごめん。全部、本当に、ごめん」
「ねぇ、何で謝ってるの?」
「俺には、好きな人がいるんだ」
「ぇ、なん、で、」
「ごめん」
「ねぇ!嘘!」
「ごめん。俺は、普通の人じゃないんだ。」
「何!ドッキリ!?止めて!本当に!」
「優花」
「!」
「ごめん」
「あの子の事、思い出したの?」
「え?」
「頼君。お願い。このままでいよう。あの子の居場所も、あの子に記憶があるかも分からないんだよ」
「いや、そうだとしても、またやり直そう。だって今、俺は普通に青春出来てるんだから」
「…!?でも、」
「さようなら」
「!、じゃあね。また、会おう」
「ああ」
「今度は、友達として」
「そうか」
「またね」
優花はそう言うと、闇夜に消えていた。
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