第12話 一久のお祓い

 帰宅すると玉枝は料理を始める。九郎は本を読んで過ごす。

 玉枝は料理ができると九郎に声をかける

 「今日は、女体盛りよ。」「嘘はやめてください。」

九郎は即答する。

 夕食は、たけのこご飯と鯛のかぶと煮、みそ汁である。

 玉枝は、九郎に味を聞く

 「お味はどお。」「おいしいよ。」「おかわりあるからね。」

玉枝は、九郎がおいしそうに食べているのを見て満足げである。

 夕食後、九郎が風呂に入ると玉枝が裸で入って来る。玉枝は九郎の体を丁寧に洗う。

 玉枝が言う

 「ハイキング部面白そうね」「そうかな。」

九郎はダラダラしているだけのような気がする。

 「私、参加しようかしら。」「どうやって参加するの。人には見えないでしょ。」

 「気配を強くすれば見えるようにできるでしょ。九郎ちゃんの姉と言うことで入れてもらうのよ。」

 「お願いです。勘弁してください。」

玉枝が参加したらトラブルは避けられないと思う。それに怨霊とばれたら大変だ。

 「九郎ちゃん、冷たいわよ。」「正体ばれたらどうするんですか。」「わかったわ。」

玉枝は、九郎の言葉にハイキング部参加を諦める。

 九郎が寝ると玉枝はネグリジェ姿で添い寝する。九郎は玉枝のネグリジェ姿になかなか慣れない。

 怨霊と言っても抜群のスタイルの美女である。九郎にとって猛毒なのだ。

 朝起きると玉枝が朝食を用意している。焼いたパンにはちみつを塗ったものに目玉焼きにレタスとミニトマトが添えられている。

 九郎が着替えると玉枝は巫女姿になる。

 しかし、胸が大きいので何となく背徳感を感じさせる。

 玉枝が九郎に言う

 「似合う。」「どことなくエッチです。」

 「したくなっちゃたの。」「なりません。」

九郎は、ついつい胸に目が行ってしまう。

 「九郎ちゃん、エッチ。」

玉枝がわざとらしく胸を隠す。

 九郎と玉枝は、約束の時間に間に合うように久沓神明社へ行く。

 あやめの家の玄関のチャイムを鳴らすとあやめが出てくる。巫女姿を期待していたが普段着である。

 「社本さん、おはよう。」「おはよう、翼君。」

九郎は居間に通される。ソファに座って待っていると一久が来る。こちらは神主の姿である。

 「翼君、おはよう。」「おはようございます。」

 「今日は、女性のお祓いをするんだが、霊に憑りつかれていると言っているんだ。本当か見てほしい。」

 「分かりました。」

九郎は取りつかれた人を見たことがない。判断できる自信がない。

 玉枝が九郎の不安を感じ取ったのか九郎に言う

 「私に任せて、教えてあげるから。」

九郎はうなずく。

 時間になり、九郎は一久と拝殿に行く。

 拝殿には、20歳代半ばの女性がいる。九郎の目には黒い靄がかかり、顔がぶれて見える。

 玉枝が九郎に言う

 「悪霊に憑りつかれているわ。強い霊よ。お祓いは無理だわ。」

一久が九郎に聞く

 「どうかな。」「悪霊に憑りつかれています。お祓いは難しいと思います。」

 「そこまでわかるのか、でも引き受けたからお祓いはするよ。」

九郎が玉枝に小声で言う

 「玉枝さん、頼むよ。」「頼まれました。まかせて。」

一久がお祓いを始める。すると女性が苦しみだす。女性の背中から悪霊が顔を出し、髪を振り回す。

 とっさに九郎は言う

 「危ない。」

悪霊の髪は、一久めがけて伸びる。しかし、髪は青い炎に焼かれる。

 玉枝は悪霊の頭を掴むと女性から引きずり出す。

 女性は「ぎゃああぁぁー」と叫ぶと気を失う。

 玉枝は悪霊を燐火で焼く。悪霊は青い炎に包まれもがきながら消えていく。

 一久は青い炎が浮かぶ光景に驚きながらもお祓いを続ける。お祓いが終わり、一久が女性を揺さぶり起こす。

 彼は九郎に聞く

 「悪霊はどうなりました。」「消えました。」

九郎が答えると一久は質問する

 「あの狐火は、翼君がやったの。」「いいえ、違います。」

 「図書館でも青い炎は霊を退治したそうだね。」「はい。」

 「とにかく、今日は助かったよ。」

一久は礼を言う。

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