第22話 開眼せよ 後編


 そう僕が困った顔をしていると、ロンベルさんは自分の眼を指し示した。



「ああ!? 魔眼の本と魔眼のオーナーが居る事を最初から知っていただ」


「大正解!? 百二十ひゃくにじっパーセント正解じゃ、ガハハハハハ」


「やったーー、今度は正解しました。でも、何故百パーセントじゃないのですか?」


「それは男のロマンじゃから、聴くのはやぼじゃぞ。それより、メルのことは許してやってくれ。こ奴は天然の塊なんじゃ、何処か抜けておる。恐らく此処に来る前に、ちゃんとお主らに、この本屋の事も説明しとらんじゃろう」


「はい、聴いていません」


「じゃあ、そこから説明するとするかのう。わしゃはなっ、魔眼持ちの人間をサポートするためにこの古本屋を始めたんじゃ。これでも、元C級冒険者じゃ。じゃが、そこまでじゃ。それ以上は壁が分厚く、才能が無いわしゃは上に行けんかった。そこで、わしゃは冒険者稼業はすっぱり諦めて、サポートをする側に回ろうと決意したんじゃな」


「魔眼が有るのに、上には行けないのですか?」


「魔眼はなっ、パワーでの意味でのとは全然関係無いんじゃよ。コイツはなっ、あくまで叡智の為の力なだけじゃ。もし、魔眼が無いとB級以上に上がれないって条件だとしたら、世の中不公平じゃろ? 魔眼は万能では無いが、叡智に関してはチートじゃな」


「チートですか?」


「そうじゃ、魔眼を持たぬ者は決して辿り着けない秘宝のありかやアイテムの情報を専用の本や文献から手に入れる事ができる。じゃがな、そういうお宝は、B級以上の実力が無いとは入れないダンジョンに有ったりするんじゃな~~これが、ガハハハハハ 」


「それじゃあ、協力すれば」


「協力したことは一度だけある。結果は裏切られた。忘れもせん、と或るA級冒険者の奴でな、その秘宝を手にいれるところで、私は意識が途絶えた」


「それって……」


「そうじゃ、仲間と思っておった者にな、見事わしゃあ裏切られたんじゃあ、命を奪われんかったのは幸いじゃったわい」


「だから、本当は魔眼同士にしか、自分が所持者か? 所持者じゃないかは明かしません。実は、ジルス以外の仲間の冒険者にもこの事は秘密にしています」


「メルさん、息子は良いとして、何故私にも話しをしてくれたんだい?」


「ノラン様のような高貴で英雄な方であれば、危険ではないと思いましたので、それに私の勘でしかないですが、メディウスさんは魔眼をもって居ると思ったんです」



 それを聴いた父は、咳を二回ばかりしたあと、『失礼』と言って、慌ててさっき選んだ謎の本三冊を元の場所に戻しに行った。



「さてはて、ノラン殿も戻って来たことじゃし、坊やの魔眼テストの再チャレンジじゃ」



 そう言って、ウィンクをすると僕に一冊の本を差し出して来た。もし、この本を開いて通常じゃ見えない文字が見えたとしたら、そう思うとまた僕の胸の高鳴りは激しくなった。ドッド、ドッドからドクドクドクドクとなったかと思うと、実際に本を手にしたら、それはドンッドンッドンッと変わって行った。



「そっ、それじゃあ開きます」



 開いた本には今度は動物の絵が描かれていた。

 しかし、あの植物の図鑑と同じで何も変化は無かった。



「どうじゃな? 何か見えたかな?」


「いえ、何も」


「そうかそうか、では次のページを開いてみなさい」


「次のページですか?」



 僕は疑心暗鬼に駆られながら、親指と人差し指で次のページに続く紙を掴むと、震えながらゆっくりとページを捲った。



「どうじゃ!? 何か見えるか?」



 次のページにはご丁寧に先程の動物に関する説明が記述されているだけだった。絵が描かれていなく、文字が現れたので一瞬僕の魔眼が開眼したと勘違いした。一抹の期待を込めて、父様に本を渡した。



「私にはただ前のページに描かれた動物に関する説明が見えるが、メディウスには違うものが見えたのかい?」


「いえ、父上と同じです」



 そう言うのを聴いた後、メルさんは『ちょっと、いいですか』と言い父様から本を取ると、同じページを眺めた後、嘆息して、テーブルの上で頬杖をついた。



「ごめんなさい」


「何故、メルさんが謝るんですか?」


「だって、私がアナタに散々変に期待をさせておいて、結果がこれじゃあ」


「大丈夫ですよ。魔眼を持って無かったってだけですから」


「でも、アナタの一生に一度しか訪れない5歳の誕生日を私は……」


「そうですね。ちょっと、ホンのちょこっと残念な誕生日になってしまいました。でも、この本は動物の事が書かれていて、面白そうなので、記念に買おうと思っています」


「それはお前さんには売らんぞ、坊や」


「ロンベルさん、それはあんま『持っていけ、わしゃからの誕生日プレゼントじゃ』りじゃ……」


「えっ、いいんですか!? ありがとうございます!?」


「おう」



 僕が喜んだその後、僕の頭の中に何かの声が響いて来た!?




 ━━開眼しますか?



 まるであの時の水晶と同じだ。



 ━━はい または いいえ



 僕はもちろん迷わずを選択した。



 ━━開眼率 20% 55%……100%

 ━━便利眼が使用可能となりました。










 この時、僕の最初の加護便が開眼した!?








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