空想概念具現化魔法の異世界異端記
七星北斗(化物)
1.埋葬
魔法という概念は、魔に連なるモノと、契約することで使用できる特別な力である。
朝、目を覚ますと。異世界だった。
俺の魔法は、無。何もないのだ。何の魔法も使えない。
師匠も、無の属性など知らないそうで。魔法を使用することのできない生き物自体が希少とのこと。
無属性はステータスだ。と、言いたいところだが、魔法を使えない俺に、価値などないだろう。
そもそも『存在しないもの』と契約した?俺自体が異端なのだ。
どうして契約できてしまったのかも、謎である。
山の中で、死にかけだった俺を拾ってくれた師匠こと、『四聖獣』白虎。
今でこそ四聖獣と呼ばれてはいるが、性別女性の元人間である。
師匠からの厳しい扱きで、強くなったと勘違いした俺は、調子に乗ってしまい。魔物を村に呼び寄せてしまった。
Bクラス以上の魔物の大群、師匠一人で対応できるわけもなく、村全体が窮地に立つ。
死を予見したその時、俺の契約紋が光を放ち、名をブラフマンという妖しき存在が現れる。
「力が欲しいか?望む力を与えよう。生け贄に捧げよ人間」
ブラフマンとの会話で、俺の本当の力が目覚める。
五十体以上の死体を生け贄に、使用できる魔法は、空想概念具現化魔法。
この魔法には、死体の数、質の高さが、より創造のバイタリティーを変化させる。
一度具現化させた対象に対しては、現実への制限はない。
しかし空想概念具現化魔法は、一月に一度しか使えないという限度がある。
怒りの火種が芽生えた。
俺が最初に創造する生き物は、フェニックス。お前だ。
召喚したフェニックスは、幻想を象った人型の燃えるような赤い髪をした少女だった。
「フェニックス、お前の力を俺に貸してくれ」
「了解、マスター」
フェニックスの魔法は、炎に特化している。この世界に生き物として認められ、俺と同じように成長する。
炎が生きたように動き、跡形もなく魔物を焦がしていく。フェニックスに焼かれた魔物は、焦げた匂いを残し、その姿を消す。
半数ほどに減った魔物たちは、撤退を開始する。
「残りは、どうします?マスター」
「構うな、今はそれよりも、生存者を探すことが大事だ」
「了解です」
平和で活気のあったニナの村は、もうどこにもない。
生き残ったのは、俺と師匠だけだった。
「ごめんなさい。俺が悪いんです」
「謝るな」
「でも」
「泣くな」
罪悪感や、どうしようもなさ、無力感、そういった感情が俺を襲った。
「これが世界の不条理であり、正しさだ。弱肉強食それこそが世界の理。それを正しく心に刻め、決して忘れるな」
「……お…俺、強くなれますか?」
「お前次第だ」
「俺、絶対に忘れません」
固く閉じられた唇には、血が滲んでいた。
「師匠は、これからどうするのですか?」
「ここから少し離れた所に、小さな国がある。そこを目指すつもりだ」
「ならお別れですね」
「何を言っている?お前も一緒に来るんだ」
「どうしてですか?」
「どうしてって?お前は、この世界でたった一人の弟子だからな。見捨てるわけがないだろ」
「し!……師匠ーー」
「泣くな、抱きつくんじゃない。毛並みを弄るなーー!」
「……だってー。ぐすん」
「それにワシとお前はもう、離れられないようだしな」
「それはどういう意味ですか?」
「ステータスを確認してみろ」
慌ててステータスを開くと、そこには新たな契約が結ばれていた。
「ぇっ、な……何で契約が?」
「理由はわからん。まぁ、なってしまったものはしょうがない。前向きに捉えるしかないだろ」
こういう時の師匠は、大雑把で正直助かる。迷惑かけてばかりで、駄目だな俺。いつか恩を返せるといいな。
師匠と俺との絆は、契約といった小さく、断つことのできない見えない鎖で結ばれた。
俺は、大きめな黒いマスク、黒色でサバゲーのような動きやすい上下の服に着替えた。
「よく、似合っているぞ」
「そうですかね?」
「マスター、お似合い」
「ありがと」
そうして旅支度を済ませた俺たちは、拠点となる国を目指して歩み始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます