第13話 岡引一心に新たな疑問
丘頭警部がひょっこり事務所に顔を出した。偶々新米の田川刑事が過去の事件データベースを「舛上」で検索していたら、20年前舛上椋が生まれた産院の看護師鳥井唯が未解決の強盗強姦殺人事件の被害者だった、と報告があったとのことだ。その事件の調書データを一心に持って来てくれたのだった。
「今回の事件とは関りは無いようだけど、一応ね。でさ、二人の赤ん坊とカルテの写真を被害者が隠し持っていて、当時の捜査員らもひっかかりは有ったようなんだけど、殺害される13年も前の赤ん坊の写真を何故後生大事に持っていたのか分からず仕舞いよ。事件が強盗強姦殺人事件だから捜査員も関係ないと思って真剣に調べなかったのかもしれないわね」
「ほ~、で、赤ん坊のひとりは舛上椋でもう一人の赤ん坊は誰だったんだ?」
「調書にもあるけど、っていう男の子、その両方の親とも産んだときに殺された鳥井唯が看護師として担当していたと捜査員から聞かされて驚いたようだけど、関りは全く無かったと証言しているわ。佐音のご主人は下平満樹というろくでもない男で、奥さんが子供を産むと言ったら離婚して家を出て行ってしまったらしいの。某かのお金は置いて行ったらしいけど」
「佐音の親父の名前がどうして下平なんだ?」
「子供が産まれてから13年間に借金取りに追われて、女の籍に入って、また借金作って逃げて、別の女の籍に入って……何回かそれを繰り返したらしいわ。それで警察が事情を訊いたときは下平って名前になっていたってことのようよ」
「ふ~ん、何か羨ましいような、情けないようなだな」
「えっ? なんで羨ましい?」
「だってよ、それだけ女に持てるってことだろ!」
「ははっ、ばっかみたい。静は自宅?」丘頭警部はちょっとむっとした顔をして一心を睨んでいる。
「い、いや、買い物に出てる」
「そう、あなたの本性を静に教えてあげないとね!」丘頭警部は一心の不用意な一言から、一心の本性を暴こうと一心に慧眼を向けにこりとする。
「お、俺、その佐音っていう母さんに会ってみたいなぁ」一心は慌てて咳払いをして取り繕う。
「え~、今回の事件とは関係ないわよ。それとも何か気になるの?」
「と、特にそういう訳じゃないが……」
「はは~ん、一心! あんた、さっきの話静に聞かれたくないから、話題を変えようと苦し紛れに言ったんじゃないの? あんた、都合悪くなると、どもるのよねぇ、ふふふっ」
「そ、そんなことない」
「ほ~ら、どもった、はははっ。良いわよ、言わないからさ。で、その佐音綱紀の母親に会いたいなら、悪いけど自分で探してくれない? うちら事情聴取する人多すぎて天手古舞なのよ」
「お、おう……一助にでも探させるわ」
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