第10話
龍輪さんが去ってから瑠璃から提案を持ちかけられた。
「あ、そうです!私なら『設定』スキルの使い方教えて差し上げれますよ!」
「そのことなんだけど、一つ話さないといけないことがあるんだ」
「わかりました。しばしお待ちください。『術式6番 結界』」
賢い瑠璃は春の雰囲気を察したのか結界を張って、真剣な面持ちで待っている。
「実は僕の『フォロワー』は、従者になった者を強制的に従わせることができるんだ。」
「はい。」
「えっと、だから瑠璃を強制的に従わせちゃうことになるんだけど。解除した方がいいんじゃないかな。」
(どうしましょう。とっっっても嫌です。しかし、ここでお兄様の決断を否定してしてしまったらお兄様は落ち込んでしまうかもしれません。お兄様を傷つけるなどもっと嫌です。そもそもあの土人形風情に傷付けられるのですら我慢ならないのです。私が傷付けるなんて絶対に耐えれる自信がありません。なんとか優しく断る方法はないのでしょうか。そうです!私がお兄様を大好きだということをお伝えすれば良いのではないでしょうか。私ならお兄様の身体のホクロの数まで言える自信があります。お兄様はお優しい方です。少し気が引けますがお兄様に少し強引にお伝えすれば....。いやいや、だからそれはお兄様を傷付けてしまうのですってば。そうです!ペットなら、ペットならいいじゃないですか!ペットを従わせるなど世の中では常識、お兄様も罪悪感がなくなるはずですし許してくださるでしょう。やはりお兄様が私を飼っていただくのが一番なのです。)
「そうですよ。私が心も身体もお兄様の物になってしまえばなんの問題もないじゃないですか。それに———」
「ちょ?!なに考えてるの!?兄弟だからね?」
やばい瑠璃が暴走し出したんだけど?!ちょっと合わない間にどうしたらこうなったの!?ひとまず瑠璃を止めないと。
「——しかもお兄様も私を気遣ってくださっています。つまりお兄様も私のことがどうしようもなく『大好き』ということですね。ということは『両思い』、ならばなんの問題もありません。そもそも尊いお顔されているお兄様が悪いのです。お兄様は———」
「おーい、聞こえてる〜?る、瑠璃さーん。」
「——幸いお兄様はペットになったら優しくしてくださいます。あ、しかしお兄様に——」
「あれ?もしかして僕何か選択間違えた?」
僕は、目の前で冗談ばかり並べる妹を見て、どこかで教育を間違えたかもしれないとひどく思った。
「——お兄様、全く構いません。というより是非望むところです!絶対に解除しないでくださいね!」
「い、いやでも」
やはり他人、それも妹を強制的に従わせれるというのは罪悪感があるし、何より見聞も悪いだろう。
「お兄様、強いスキル使いたくないですか?」
瑠璃は僕を誘惑するような言葉を掛けた。しかし僕はじっと瑠璃の目を見て答える。
「確かに昔の僕なら力欲しさに強制的に誰かを従わせる力を無条件に受け入れたかもしれない。でも、僕は瑠璃に、誰かに嫌なことを強制することになるなら、強くならなくてもいい。」
その強い意思を持って返答する。
「お兄様はもう昔のままでは無いのですね。まぁでも、私は好きなことをされてもいいですよ!!むしろウェルカムです!さぁ欲望のままに私を襲ってください!!」
瑠璃は落ち着いた雰囲気で感想を述べるいるように聞こえるが僕を見る目はガン開きであり、後半は半ば狂乱なことを言っている。
段々とにじり寄ってくる瑠璃に若干の恐怖を覚え、後ずさってしまう。やばい、もしかするとアダマンタイトゴーレム以上の妙な威圧感を感じるような...。
「え、ちょっ、る、瑠璃?今、ぼく結構 神妙な感じで話してたと思うんだけど...。だいぶ、だいなし...。」
「いいじゃありませんか。お兄様が素敵なのは前からのことですし、では欲望を吐き出してくれますよね!」
「あれ、おかしいな。実の妹のはずなのに微塵も話が噛み合っている気がしない。」
「さぁ!!!お兄様、お覚悟を。」
「とりあえず!こっちに迫ってくるのやめなさぁぁぁい!!!」
妹に申し訳ないとも思ったが、僕は迫る瑠璃に向かって拳を振り下ろした。
仲が悪いのは嫌だけど、少し兄が好きな気持ちが強いのは問題かもしれない。
「ぎゃふぅっ!?」
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あとがき
作者「いや、このブラコン具合を『少し』で済ませるって春も十分イカれてるんじゃ....。でも私もこんな妹が欲しい!!!」
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