閑話 ???side Sランク探索者の実力
時は遡り、春達がアダマンタイトゴーレムに出会って5分程経ったギルドにて。一人の少女が訪れていた。こんな低級ダンジョンに来るはずのないその少女に対して周囲は驚きを隠せなかった。
「おい見ろよ。あれってもしかして」
「そうだな。なんだってあんな高ランクの探索者がこんな所にいるんだ」
「もう、騒がしいですよ。ここは居酒屋じゃないんです」
私のことで煩い探索者を見かねた受付嬢が奥の方から顔を出してきた。
「な、なんでこんなところに?!瑠璃様がこんな低級ダンジョンにいらっしゃるなんて。私は受付の奈々と申します」
「奈々さんですね。すみません、ちょっと野暮用で来ております」
はぁ、お母様に言われて名古屋低級ダンジョンに来たはいいものの、別に何をしなさいと言われている訳ではないのでやることがないですね。せっかく日本に来たのに。本当になぜこんな低級ダンジョンに来ないと行けなかったんでしょう。
お母様ももっと占いの精度を上げてくださればいいのに。
実のところ瑠璃にもここに来させられた理由がわかっていなかった。そして奈々が驚いていたことで瑠璃の存在を知らない人間もざわつき始めたのだった。
瑠璃はランクや見た目のマントが異様な空気感を出しており、特別着飾ったりはしていないが普段ダンジョンに潜っている探索者達にとっては異常に質の高いものだと分かった。
瑠璃がそんなことを考えたのも束の間、瑠璃の周囲のざわめきとは別にダンジョンの入口の方が騒がしくなり始める。1人の男性が血相を変えて入って来たようだった。
「な、奈々さん!!!緊急事態です!アダマンタイトゴーレムが10層で出ました!!負傷者が1名です!!」
「アダマンタイトゴーレム?!ボスクラスがなんで」
救援要請のために周囲を見渡す奈々さんが私の方を見るとハッとする。
「瑠璃様!緊急時につき、S級探索者のあなた様に緊急依頼を発令します!」
恐らくこのためにお母様はここに来るように言ったのでしょう。
「わかりました。至急10層に向かいます。『術式5番 瞬動』」
瞬動は超速度で動けるようにするためのものです。恐らく着くまで5分とかからないでしょう。しかし、本来アダマンタイトゴーレムは中級ボスクラスのモンスターです。B級以上が連携して倒す相手、相手次第では瞬殺でしょう。被害者のためにも急ぎましょうか。
道中のゴーレム達を瞬殺して行くと、さほど時間もかからずに目的の10層にたどり着く。
居た!!手前に2人それと女性の重傷者1人、アダマンタイトゴーレムを挟んで奥にはひと……り、え。。
奥の1人は右腕が潰れちぎれ落ちて身体がえぐれている。その人間は血まみれでもはっきりと女子とも間違えるような容姿をしていることがわかった。見間違えるはずもない白髪……。
「お兄様ぁぁぁ!!!!!!」
その青年は私の兄だった。
ボロボロになったお兄様の姿に沸々と自分への怒りが湧いてくる。なんでもっと早く来なかったのか。なんで、なんでと幾つもの気持ちが積みかなっていく。
「土人形風情がぁぁぁ!!貴様、魂すらこの世に残れると思うなぁぁぁぁ!!!!!」
アダマンタイトゴーレムはまた獲物が増えたと思ったのかゴーレム土の中から召喚する。
「舐めないでください。その程度で私を止められるわけがないのです。『術式2番 雷刀』」
愛刀に雷を纏わせる。少し力を込めすぎたせいが雷を纏わせるだけで数体が吹き飛ぶ。
「Sランク探索者 藤堂瑠璃 参る!!」
一閃。刹那の一瞬で、たったそれだけでアダマンタイトゴーレムやゴーレムを全て切り裂いた。
急いでお兄様のすぐそばまで行き優しく抱き抱える。頑張ったんですね。お兄様。
「お兄様、今直します。『術式3番 治癒』」
すると今までの傷が嘘のように治っていく。それに近くにいた正義や天馬、女性までも治っていった。
他の人が治ったのは瑠璃の気持ちが今までにないほど気持ちの起伏が激しく効果範囲が拡大してしまったからだ。
彼女は藤堂 瑠璃。攻撃や防御、支援の全てを容易にこなす『万能』の名を冠された世界で初めてのS級探索者だ。
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あとがき
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