第5話

 微かだった声がハッキリ聞こえるくらいになってきた。そして、その姿も。。

 それは片腕のない女性とそれを追いかけるゴーレムの姿だった。


「そこの人達!逃げなさい!アダマンタイトゴーレムよ!!!」


(((え?)))

 僕らは一瞬の間、思考がフリーズしてしまったけど一番早く状況を理解したのは天馬さんだった。


「アダマンタイトゴーレムだと?!中級ダンジョンのボスクラスだぞ!なんでこんなところに! ハッ、ひとまず2人を離れさせないと。2人とも走るよ!」


「「はい!(おう!)」」


 咄嗟の判断で僕達は3人とも一気に走り始めるとこれからの動きを考える。3人とも一時は取り乱したものの落ち着いて考え始める。


「どうします?このまま逃げ続けますか?」

「さっきの人はボロボロだったし足を怪我しているようだった。そろそろ限界が近いだろう」


「そんなやばいのか?」

「彼女はソロでここまで来てるんだ。恐らくCかDランクの実力はあるだろうが、その彼女が一方的にやられている。アダマンタイトゴーレムとはそれだけ強力なんだ。春くんと正義くんはこのまま逃げてギルドから救援を呼んできてくれ」


 そうは言ったものの天馬さんは確かに足の速さだけだったらあのゴーレムを振り払える。でも、攻撃力はCランクの探索者の片腕を吹き飛ばすほどのパワーだ。もし擦りでもしたらひとたまりもないだろう。


「で、でも!それじゃあ天馬さんが!」

「そうだ!俺も残る!ひとりじゃ厳しいだろ!」


「大丈夫だ。これでも僕はゴーレム相手には相性がいい。倒すのは無理かもしれないけど時間を稼ぐのは出来る。それに春くんを出口まで連れていくには護衛が必要だ。正義くんにはここに残ってもらう訳には行かない。」


 それにそんなことした次は....。


「わ、わかりました。」


 僕は悔しい気持ちから唇を噛むと指示に従って出口に向かおうとした。


「なぁ、2人とも。どうやら相手はそう簡単に逃がしてくれないみたいだぜ。」


 僕達はアダマンタイトゴーレムからはある程度距離を離れていたけど、正義が立ち止まり、全員が足を止めることになった。


「そう、みたいだね。ここは覚悟を決めよう。春くん、アダマンタイトゴーレムは意地でも僕達で止める。あの女性の応急処置を頼めるかい。」


「まだゴーレムからは離れていますよ、2人とも何を言って」


 そう言いかけた瞬間僕の目には驚愕、そして恐怖が浮かんだ。逃げようと振り返ると正面の角からゆっくりと歩いてくるもう一体のアダマンゴーレムが映っていた。


「な、なんでもう一体も?!」


「天馬さん、俺はアイツを10分だけ止めれる術がある。正面の一体はそれで止める。その間に女性を追っていた一体を2人で潰そう」


「そうだね。それしかないみたいだ」


 正義は自身のスキルを使うために目を瞑り精神を高めていく。


「我は願う汝を縛りしは母なる大地の力、今その身を持ってその恐ろしさを得としれ。『壁牢へきろう』急急如律令!! 続いて我は願う!汝を縛るは呪いの力、我が心臓を対価にその姿を縛れ。『呪縛』急急如律令!!」


 正義の詠唱によって裏からきていたゴーレムは土の壁で囲まれ、黒い鎖で拘束された。


「よし!!! 天馬さんもう大丈夫だ!!そう長くは持たないが女性の方のヤツに集中するぞ!!!」


「あぁ。敵の攻撃力がわかんない以上はヒット&アウェイで行こう!春くん女性をお願いね」


 天馬たちが作戦を決まり戦い始めようと思った時、正面の動きを封じられていないアダマンタイトゴーレムが不自然な動きをしていた。腕を地面に叩きつけ始めたのだ。


ドン、ドンと4回地面を叩いた時に無機物の声を上げその変化は起きた。


「ウガァ!グァァ!!」


 僕たちとアダマンタイトゴーレムまでの間に20体以上のゴーレムが現れたのだ。


「まずいな。正義くん出現したゴーレムはすぐに倒すよ。今のままだと女性が危ない」


 追われていた女性は僕らが見えた時点で既に力尽き倒れている。そして女性はまだゴーレム達の向こうにいた。


 天馬はすぐさま走り自分のハンマーでゴーレム達を一撃で粉砕していく。正義も白虎に命令してゴーレム達を倒させていく。


「今日は本当は使うはずじゃなかったが、しゃーないか。我は願う。数多の伝承よ、我が声に答えよ。『草薙剣』急急如律令!!」


 ゴーレムとは魔力を探知し魔力の動きが激しい者を狙ってくる。後衛は魔力を多く消費して味方を援護することが多い。しかし、ゴーレムはその防御力と魔力探知からゴーレムは魔法職に嫌われていた。

 しかし、今、ゴーレム達のヘイトは天馬に集中している。その理由は正義が使用した歴物召喚れきぶつしょうかんは魔力ではなく霊力を使用して召喚する能力だ。それによってゴーレム達は正義の行動に気が付かなかったのだった。


 次々とゴーレムを倒していく二人の横を抜け春は急いで駆け寄って行って女性の手をとる。


「大丈夫ですか!」

 僕は自分にできることをやるんだと竦む足に言い聞かせる。彼女を戦闘から離れたところに運び異空間収納からポーションを出し応急処置を済ませていく。



「春!!!!!」

「ッ!春くん!!!!」


 正面からアダマンタイトゴーレムが走ってきている。そしてその体がブレて、春の目の前まで一瞬で迫ってくる。


 ヤバっ!う、体が動かない。最初の速さが全力じゃないのか!避けないと!動かないと!このままじゃ、死ぬ。そりゃ、やっぱ狙うのは1番弱いやつからかだよね....。



「『土壁』!!大丈夫か春!」


 さ、さすがに、今回ばかりは、僕死ぬと思ったよ。正義に助けられた。


 ギリギリの所で正義の土の壁に阻まれ勢いよく走ってきたアダマンタイトゴーレムは衝突して頭が少し欠ける。そこに追撃を白虎と天馬さんが追撃をかけていく。


「おいおい、なんていう硬さしているんだ。僕や正義くんの白虎の攻撃でもビクともしないなんて」


 何度か攻防が繰り返されたがびくともしなかった。


「ウガァ!グァァ!!」


 再び怒号を挙げるとアダマンタイトゴーレムまでの間に20体以上のゴーレムが現れていた。


「正義くん!攻撃!」

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