七話【惣一郎の悩み】

額から汗を流がし杖を握るドラミ!


その表情から只事で無い雰囲気が伝わって来る。


ルールは事前に説明しろよ!


遅れて惣一郎も盾を出し槍を数本、宙に浮かせ構える!


黒い渦の風の中、ニヤリと笑みを溢す精霊。


「そうだな…… 共に風に乗る仲間を望む!」


風に乗る仲間?


へっ? そんだけ?


ドラミの顔色は変わらない。


罠なのか?


惣一郎はネットでシャボン液を購入し、ストローを吹くと、虹色のシャボン玉がふわふわといくつも空を埋め尽くしていく。


「おっ、おおおおぉ! あはははぁ」


追いかける黒い邪悪な精霊は次第に元の姿に戻って行き、シャボン玉を追いかける。


ベンゾウも……


「やらせてやらせて!」


惣一郎の手からシャボン液を取り上げ、小さな口で力一杯吹き、シャボン玉を作る精霊。


無邪気なその姿に、皆が武器を下ろす。


「約束だし、呼べば力を貸すよ!」


自分で吹き作ったシャボン玉を追いかけ、風の中に消えて行く精霊シルフ。


「焦ったーーー!」


力が抜け、腰を落とすドラミ達。


「おい、どう言う事だよ!」


「精霊に供えるのは何でもええねん。そりゃ供えたもんで貸す力も変わるんやが、問題は精霊に望みを聞いちゃ絶対にいけないんや…… 無理難題ふっかけ魂まで毟り取るんやぞ奴らは……」


「先言えよ!」


「常識や! 知っとる思うやろ!」


「でも、精霊の難題に無事応える事が出来て、ほんと良かったですね……」


「焦ったぞ、主人よ……」


「さすが旦那様!」


ケラケラケラ。


「じゃ、お前やイワオ達にもか?」


「ウチらは精霊ゆうても末裔みたいなもんや、召喚される事もない。さっきまでの純な生粋の精霊とちゃう! あれはより神に近い存在や」


そんな末裔で務まるのか?


やや不安になる惣一郎。


ドライアドリスの無理難題を拒み続けた惣一郎は、盆に飾るお供物をイワオの前に置く。


混乱しキョロキョロするイワオだった……






風呂に浸かり、ひとり疲れをとる惣一郎。


ほとんど気疲れだが……


取り敢えずこれで、五大精霊?が揃った訳で、後は残党キシルとネネルを倒すだけだ。


さて、どうしたものか……


湯船から眺める景色は……


転移屋の三階部分…… しかも割と近い。


向こうからは見えないと言うが、落ち着かない。


長湯する気にもなれないと、顔を洗って出ようとする惣一郎。


すると、湯船に映る自分の顔が何だか……


ダブった顔に……


「悩みかえ?」


わああああああっ!


「なっ、何してんのよ!…ですか……」


「美味しい水の礼じゃ、悩み聞くぞえ」


ドラミの奴…… お湯で出るじゃん!


湯船から現れるウンディーネ。


「悩み聞くぞえ」


また罠か……


素直に悩みを言っていいのか悩む惣一郎。


下手に拒むのも怖い……


すると湯船の中、水に背後から抱きつかれる感覚が……


や、やめろ、前に手を伸ばすな……


「なるほど居場所を知りたいのかえ?」


えっ、何故それを?


「ふたりに別れを言うのが怖いのかえ?」


なっ……


「あの娘とずっと一緒に……「やめろ!!」」


勝手に心を読むな!


動揺した惣一郎に纏わりつく、水の感覚が消えて行く。


揺れる湯船にウンディーネの姿はなかった……


そして吹っ切れた様に清々しい惣一郎の顔が、水面に揺れていた……


なるほど、その手があったか……




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る