二十四話【生存者?】

来た道を急いで戻る惣一郎が、階段の途中で急に止まり振り返る!


!!!!


「どうした旦那様!」


「いや…… あれ? 生き返った?」


惣一郎のサーチにさっきまでいた部屋から、反応を感じた。


先に進むベンゾウとツナマヨが気付き、振り返る。


「ベンゾウ! みんなと先に行ってくれ! 俺はちょっと戻って確認してくるわ」


「ご主人様ひとりじゃ行かせられないよ!」


「私が付き添う!」


スワロが小走りで階段を戻ってくる。


隣の弁慶も「アタイも行くぞ!」っと、戦斧を肩に乗せ下を見るが惣一郎が、


「いや外の敵が多いし、ミコと戦ってる奴が気になる。弁慶頼む!」


っと、弁慶の胸をポンっと叩く。


「スワロの魔法も必要だ。ここは俺だけで大丈夫! だがドラミの壁は超えるな。強制転移されない範囲を超えるからな」


不安が残る表情で弁慶とスワロは「わかった!」っとベンゾウ達を追いかけ、階段を昇って行く。


逆に降りて行く惣一郎。


どう言う事なんだ?


ひとり戻る惣一郎。


さっきまでいた部屋に戻ると戦闘で割れたのだろう、部屋の隅にあった瓶から水が壁伝いに奥へと流れていた。


教皇達の死骸もそのままだ。


反応はその先に、徐々に力強く感じる。


奥のドアの下へと伸びる細い水の線をたどり、扉を引くと、紐で縛られた傷だらけのキッドが薄目を開け、こちらを見ていた。


「キッド! 生きてるのか?」


「そ…惣一郎……の旦那……」


さっきまで反応は無かった。


惣一郎はアジトをくまなくサーチで調べ、さっきの7人以外生きてる反応が無い事から、キッドはここには居ないと思っていた。


無事にスワロから追手の注意を逸らし、逃げたのだと……


それなのに教皇達を倒し、生存者が居ない事を確認して戻ったのに、すぐ側で急に感じた反応に混乱していた。


「お前、捕まってたのか?」


惣一郎はロープを解き、虫の息のキッドに回復薬を飲ませようと取り出す。


「いらん……」


力無く手をあげ、回復を拒むキッド。


「スワロを攫ったのは許せんが、事情があったのは聞いた。取り敢えずここを出るぞ!」


「なぜ助ける…… 事情を誰に聞いた……」


見る見る回復していくキッドに、驚く惣一郎。


「お前がスワロを逃したんだろ? スワロから事情を聞いたんだが……」


上体を起こし壁にもたれるキッドがほくそ笑む。


「逃した? それは俺じゃ無い…… そのつもりだったが奴らにバレて、俺は捕らえられていた」


「スワロはお前が逃してくれたと……」


「フッ、教皇の手の者だろう…… 化けれる奴がいるそうだしな……」


壁に化けてたアイツか!


「どういう事だ…… なぜ教皇の手の者がスワロを逃した?」


「器は彼女じゃ無い…… アンタだ旦那」


はい?


ダメだ分からない事だらけだ。


「待て待て、お前はグルミターナに復讐しようとスワロを利用して潜り込んだんだよな?」


目を閉じ、呼吸を整えるキッドが気怠そうに答える。


「ああ、御神体を喰ってまでな!」


両手で血だらけのシャツを広げ、胸を出すキッド。


腹部から下が赤い半透明の肌で、中の水分が泡を上げていた!


言葉を失い驚く惣一郎。


「おかげで死ねない体になった…… 死んでも水で生き返るバケモンさ……」


ネムリユスリカ!


ユスリカの幼虫で干涸びて死んでも、水分で生き返る不死身の昆虫。


「お前……」









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