十一話【新たな指針】

食堂に溢れかえるルドの村人達。


今まで食べた事のない料理に、二度三度と並ぶ者までいた。


セリーナを始めとするメイド達が汗を掻きながら、慣れた手つきでカレーを皿に盛る。


「ローズさん、ご飯が足らなくなって来ました」


「了解! マーガレット! 野菜を切り終えたらお米を研いでちょうだい!」


賑わう食堂にやって来るギネアが、遠慮して戻ろうとする。


そこにミネアが現れ呼び止める。


「惣一郎様がお呼びです。騎士団全員は会議室へお越しください」


「俺もか?」


「ええ、貴方も騎士でしょ」


ギネアに笑顔を向けるミネア。


照れる素ぶりを見せるギネアを伴い、会議室へ向かう。






会議室には主要メンバーと騎士団全員が揃っていた。


「みんな朝早くに済まない。食堂はルドの村の人達で混んでるだろうし、ここで朝食を摂りながら会議をする」


テーブルに置かれたおにぎりと味噌汁を手に取り、少し広くなった会議室で立ったまま会議が始まる。




「大陸に向かう予定だったが、魔女にバレている可能性がある事がわかった」


「確かに近付いたのがバレれば、簡単に逃げられてしまうか……」


「ああ、そこで俺とベンゾウ、ドラミの3人は、目立つ様に遠くに離れ、蟲を倒して回る」


決して鳥人と関わりたくない訳ではない。


「つまり、別働隊が大陸に向かい、惣一郎様が囮になると言う事ですか?」


「せや、それなら奴らも気付かへんやろ。なんせツリーハウスが他と繋がってるなんて思いもしないやろからな」


「まっ、そう言う事だが、大陸に向かうメンバーも慎重に事を進めたい」


「隠密行動ですか……」


「ああ、ギネア。ブラギノールさんとふたり、鳥人の力を借りて大陸に向かって欲しい。頼めるか?」


鱗族でも分かる驚いた表情のギネアが、姿勢を正し「お任せ下さい」っと力強く答える。


「我々は?」


ゴゴ達もおにぎりを片手に、目を輝かせる。


「情報収集をしている事もバレてるかも知れない。それが急に鳴りを潜めると、勘付かれる可能性もあるから、今まで通り手分けして情報を集めてくれ!」


「分かりました」


「みんな、首には注意しろよ! 見張られてると思って行動するんだ」


「「「「 はい! 」」」」


食事もそこそこに、動き出す騎士達。


惣一郎はブラギノールさんに全てを話し、協力を求めるが、ブラギノールさんの返事は食い気味に「もちろんです!」っと、聞くまでもなかった。


惣一郎は転移屋からユグポンを持ち、南へ向かう為、まず村を襲った蟲を倒しに向かう。


ギネアは仲間になったブラギノールと別の種を持ち、北にある[イチ]と言う町まで徒歩で向かい、さらに北を目指す。


ゴゴ達は3チームに分かれ、ジジが最後に種を置いた[コイドランド]と言う村から目立たない様に変装し分かれ、魔女崇拝者についての情報を集める。


ミネア達村に残った者達は、ルドの村人の住居や食事、今後の事を村の代表らと話し合う。


「村は、村には帰れないのですか?」


「今、惣一郎様が村を襲った蟲を退治に向かいました。転移屋が無事だといいのですが……」






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