十四話【思わぬ敵】
ババの地図を頼りに、深い森の中を進む惣一郎とベンゾウ。
上空を飛んでいては、深い森の中の遺跡を見落としそうなので、歩いていた。
陽の光りが届かない、薄暗い森の中。
ベンゾウが大きなダンゴムシを輪切りにし、惣一郎に話しかける。
「ご主人様、連絡あった?」
「さっき聞いたばかりだろ! 無いよ」
事あるごとに、進展が無いか気にするベンゾウ。
焦る気持ちは、分からなくもない……
「あっ! ご主人様、あれ!」
ベンゾウの指差す方に、生茂る森に包まれた人工物だろう崩れかけた柱が埋もれていた。
「この辺みたいだな……」
だが周りを見渡すが、その柱一本だけの様だ。
サーチ。
「うげっ! ダンゴムシにゲジゲジ、ムカデのオンパレードだな」
「おんぱれ? なに?」
「いや、遺跡らしい物はまだ見当たらないって話。柱があるんだ、近いはずなんだが……」
休みなく襲い掛かる蟲を倒し、進む惣一郎とベンゾウが、いい加減うんざりして来た頃、遺跡の残骸がちらほらと見えて来る。
「ご主人様!」
「ああ、誰か最近来たみたいだな」
食い荒らされ、異臭を放つ蟲の死骸に、複数の人の足跡が残っていた。
鼻を押さえ、辛そうなベンゾウに置き型の消臭剤を渡し、サーチを展開する惣一郎。
「入り口は向こうかな?」
森が少し開け、陽射しを受ける遺跡の入り口が、歴史を思わせる。
崩れないといいが……
そのすでに崩れた柱が折り重なる隙間から、地下へと続く階段が見えた。
惣一郎のサーチには、この下に人の気配を感じている。
スワロではなさそうだが。
苔が生え、滑りやすい湿った石段を降りて行く。
深い割に何処からか陽の光が届いており、薄暗いが見えなくもない、地下へと続く階段。
しばらく進むと、広いドーム型の空間に出る。
石で作られた祭壇の様な物が、長い歴史を思わせる。
「ほぉ、随分と早かったではないか、勇者よ」
祭壇に立つダークエルフ。
魔女崇拝の者だろうか?
銀髪だが、スワロに似ている綺麗な女性だった。
「待ち合わせしたつもりはないが……」
早々と小刀を構えるベンゾウを、理喪棍を横に抑えながら、惣一郎が答える。
「ほぉ、その娘も良い器をしておる」
「器? あんた誰だ? まさかあんたが魔女時代の生き残りの蟲じゃないだろうな」
「あぁ、あの蟲か。あれならすでにここには居らぬ。我々の目的の為に利用させてもらった」
なるほど、この辺りを縄張りにしてた蟲が居なくなったから、他の蟲がテリトリーを広げてババの村を襲ったのか……
「じゃあんたが、スワロを攫った魔女崇拝の連中の1人って事でいいのかな?」
「フフフ、ハッハハ! 確かに、そのひとりに違いは無いぞ!」
「やたら大物感出してるけど、覚悟しろよ。大事な仲間を攫っておいて」
「ハハハ、まぁ、待て! 今度の勇者はどんな奴かと来てみれば、面白そうな奴じゃ! 殺す前に少し話をしてやろう」
フッーーーー!
「待てベンゾウ!」
引き出せるだけ情報を集めるんだ……
「今度の勇者って、どういうことなのか引っかかるな〜」
「妾の邪魔をする奴じゃ、どれだけ時間が流れようと怒りが収まらぬ…… お主も呼ばれたのじゃろ! 蟲を倒せと」
「まるで自分がその魔女みたいな言い方だな」
「どうとでも思うが良い! やっと力を持った憑代となる器を見つけたというのに、貴様との契約が邪魔しておるおかげで上手くいかんのじゃ忌々しい! 先に貴様を殺しておこうと思い、ここにもひとり待たせておいたのじゃが……」
スワロとの奴隷契約の事か!
「ここにも? 他でも俺を待ってる奴がいるのか? それに俺を殺せばスワロも死んじゃうぞ」
「ハハハ、転移で呼べぬのにか? 笑わせおる」
あら、ツリーハウスの中じゃそれも無効なのね。
「笑わせたんだ、お礼に目的ぐらい教えろよ、スワロを攫ってどうする気だ」
「他の者が魔女が現れたと騒ぎよるのでな、見てみれば、妾の失った力を取り戻すに相応しい、最高の器じゃないか!」
失った力?
「スワロは無事なんだな」
「安心せぇ、妾の大事な体じゃ! 何も知らぬ妾の仲間に大切に扱われておる。貴様が死ぬまではな!」
女の殺気が惣一郎の肌を刺す!
「じゃ始めるか? どうせ居場所は言わないんだろ」
言い終える瞬間!
ベンゾウが閃光を残し消えると、そのベンゾウの小刀を首元で掴むダークエルフが、目を見開く!
その目は赤く、白目の部分に緑のリング状の物が脈打つ様に目の中で大きさを変えている。
左右バラバラの動きで気持ち悪!
脇腹を突き破り、新たに2本の腕を出すダークエルフ。
なっ! 蟲だったのか!
小刀を手放し、距離を取るベンゾウ!
その手には手放した小刀が戻っていた。
実体のない國家と國千代!
槍を宙に浮かし、円盤と盾を出す惣一郎!
大物感を出す雑魚かと思ったが、まさかの大物。
惣一郎も最初から全力だ!
にしてもあの目、どこかで……
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