十三話【始まる村民会議】

その後も言われるがまま色々と試してみるが、魔法陣を出す事が出来ない惣一郎は、コール用の魔導具だけ頼み、工場を後にする。


追いかけるスワロが気を遣い慰めるが、逆に悲しくなる。


第二の中庭では傭兵予定の者達が、各々独自の訓練に汗を流していた。


キラキラと汗が光る、金髪エルフの美少年。


仲間である奴隷のジャニーに、嫌悪感を抱く惣一郎。


細身の剣でドラゴンの槍を躱し、舞う姿は絵画の様であった。


「旦那様!」


リザードマンのドラゴンが槍を立て、惣一郎に頭を下げる。


直ぐに気付くジャニーも剣を脇に戻し、一礼する様は、美しくも惣一郎には嫌味に映る。


「お疲れ様、わざわざ畏まらなくっていいぞ」


頭を上げるとまた、訓練に戻るジャニー。


寡黙ではなく、喋れないのだ。


見た目に反して低い声のジャニーを、前の主人が嫌い喉を切ったと言う。


そこに奥からジジがやって来て、惣一郎に誘拐犯が目を覚ましていると言う。


すでにギネアが尋問を始めているそうだ。




3人の獣人を捕らえた部屋に行くと、ココを攫われた怨みからか、ギネアの尋問には熱が入っていた。


蔓に縛り上げられている男達の顔はすでに、腫れ上がっていた。


「ギネア、やり過ぎだよ!」


惣一郎の登場に兎の獣人の女は、助かったと思ったのだろう。


すがる思いで惣一郎に助けを求めて来る。


コレもギネアの策なのだろうか……


「あ、ああ、素直に全部話せば、これ以上危害を加える気は……」




誘拐犯の話では、過疎化する小さな村などからの依頼で子供を集めながら旅をしている奴隷商との事。


この先の村に獣人の子を3人納めに向かっていたと言う。


だが、街で仕入れた子供はふたりしかおらず、途中偶然にも森で見かけたココを頭数に加えようと攫ったそうだ。


だが、追いかけて来るリザードマンを恐れ、逃げて来たのだが、あっさり惣一郎に追いつかれたという事らしい。


こんな世界だから成り立つ商売という事か……


「どうしますか? コイツら」


ギネアの言葉に震える兎。


悩む惣一郎は「取り敢えず保留!」っと食事を与え、拘束を解き、勾留を続ける様に伝えて部屋を出る。


不満そうなギネアだったが、渋々惣一郎の指示に従う。


中庭に出る惣一郎はスワロに「会議を開く!」っと、主だったメンバーを集める様に伝え、母屋へと向かう。


村もまだ動き出したばかりではあるが、ここらで指針を決めておこうと話し合う為に。



惣一郎は一階の、ドラミの部屋にしたが使われていない大部屋に、ベンチテーブルを並べ会議室を作ると、ゾロゾロと集まり出す村人。


メンバーは惣一郎と、


スワロ(ダークエルフの魔女)


ミネア(陣職人でメイド長のエルフ)


ローズ(副メイド長のエルフ)


ドラミ(精霊ドライアドリスと人族のハーフ)


ゴゴ(牙族の元傭兵)


ギネア(魔剣士でフリーの傭兵)


ハク(傭兵志願のツノ無し魔族の女性)


コン(現最年長のドワーフ族)


チン(現最年少のドワーフ族)


ジル(親子喧嘩中で農業経験者の人族)


シープ(サブリーダーの羊の獣人)


そして何故か誘拐犯の兎の獣人が、真っ青な顔で椅子に座らされていた。



第一回ユグポン村民会議が始まる。






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